この記事で分かること
- 月次試算表や予実管理では、どこを見ればよいのか
- 資金繰り表を経営判断や銀行対応にどう使うのか
- 経理担当者と経営者の間に生じやすい意識の違い
- 経営に使える数字が出てくる社内体制の作り方
はじめに
毎月、試算表が出ている。
予算と実績の比較表もある。
資金繰り表も作っている。
それでも、
「なぜ今月は利益率が下がったのか」
「このままいくと今期の利益はいくらになるのか」
「半年後の資金は大丈夫なのか」
と聞かれると、すぐには分からない。
そんな会社もあるのではないでしょうか。
財務管理というと、「何の資料を作るか」に目が向きがちです。
しかし、資料がそろっていても、
経営者が知りたいことにつながっていなければ、十分に生かし切れていません。
では、毎月の数字をどう使えばよいのでしょうか。
管理資料は増やせばよいわけではない
中小企業では、まず月次の数字を早く出せるようにすることが課題となる会社もあります。
一方、翌月には試算表や資金繰り実績がきちんと出てくる会社もあります。
数字が早く出るようになったら、次はその使い方です。
管理体制やシステムが充実していても、部門別損益、予算実績比較、KPI、各種分析資料などが増えるうちに、
「毎月作ることになっているから作る」
という状態になることがあります。
高機能なシステムを導入し、多くの帳票を作れば管理レベルが上がるとは限りません。
先に考えたいのは、
「経営者が何を知りたいのか」
です。
試算表では「増えた・減った」の理由を見る
例えば、試算表を前年同月と比較して、
売上 +100万円
粗利益 ▲20万円
だったとします。
「売上は増えたから良かった」
で終わると、粗利益が減った理由は分かりません。
仕入価格が上がったのか。
値引きが増えたのか。
利益率の低い商品の売上が増えたのか。
外注費が想定以上にかかったのか。
見るべきなのは、増減額そのものより増減した理由です。
毎月すべての数字を細かく調べる必要はありません。
前年や前月と比べて大きく動いたところを見つけ、必要なところだけ掘り下げる。
これなら経営者にも経理担当者にも大きな負担にはなりません。
予実管理も「当たった・外れた」を見るものではない
予算売上1,000万円に対して実績900万円。
差異は▲100万円。
ここまでなら、表計算ソフトが計算してくれます。
知りたいのは、
「なぜ100万円足りなかったのか」
です。
予定していた案件が翌月にずれただけなのか。
販売数量が減ったのか。
単価が下がったのか。
特定の得意先からの受注が減ったのか。
同じ▲100万円でも、理由によって対応は変わります。
一時的な理由なら翌月には戻るかもしれません。
一方、受注減少が続いているのであれば、
年度当初の予算をそのまま見ているのではなく、今期の着地も見直した方がよいでしょう。
予実管理は、
「予算より良かった・悪かった」「予算の精度が高かった・低かった」を確認するためだけのものではありません。
差異の理由を知り、その影響がこれからも続くのかを見る。
そこまで分かって、初めて次の判断がしやすくなります。
資金繰り表では「一番お金が少なくなる月」を見る
現在の預金残高が1,500万円でも、
8月末 1,500万円
9月末 1,200万円
10月末 900万円
11月末 500万円
という見込みなら、見ておきたいのは11月です。
なぜ500万円まで減るのか。
納税や賞与が重なるのか。
大きな仕入代金の支払いがあるのか。
売掛金の入金が後になるのか。
借入返済が重いのか。
理由が分かれば、必要に応じて早めに銀行へ相談することもできます。
銀行から業績や資金繰りについて聞かれた際にも、普段からこうした数字を見ていれば、自社の状況を説明しやすくなります。
経理担当者と経営者では、数字を見る目的が違う
社内の財務管理を考えるうえで、もう一つ知っておきたいことがあります。
経理担当者にとって、まず求められるのは正しい数字を期限までに作ることです。
特に経験の浅い担当者であれば、
仕訳、月次締め、資料作成といった毎月のルーチンを覚え、
間違いなくこなすだけでも簡単ではありません。
一方、経営者は、その数字を使って経営を考える立場です。
経営者が、
「粗利益率が下がった理由を知りたい」
「予算未達の理由を得意先別に確認したい」
「半年先までの資金残高を見たい」
と思っていても、それを経理側に伝えなければ、必要な材料は自然には出てきません。
「うちの経理担当、能力低いんだよね」ー
いえいえ、これは経理担当者の能力の問題ではありません。
作る側と使う側では、数字を見る目的が違うからです。
経営側から「知りたいこと」を下ろす
社内の経理体制を整えるというと、会計ソフトを導入したり、月次決算を早めたりすることをイメージするかもしれません。
それだけではなく、
経営者が知りたいこと
↓
経理担当者に伝える
↓
必要な数字を深掘りする
↓
経営者へ返す
↓
経営判断に使う
という流れを作ることも、経理体制構築の一つです。
最初から経理担当者に高度な分析を求める必要はありません。
経営側から、
「今月はこの差の理由を調べてほしい」
「次回からこの数字も一緒に出してほしい」
と少しずつニーズを伝えていく。
その繰り返しで、自社に必要な管理資料も絞られていきます。
自社だけで仕組みにするのが難しい場合は
「何を経理に求めればよいのか、自分でも分からない」
という経営者もいるでしょう。
その場合は、財務コンサルなど外部の専門家と一緒に、
何を把握したいのかを整理する。
必要な数字や資料を絞る。
毎月無理なく出せる形にする。
実際の数字を見ながら、資金繰りや銀行対応への使い方を確認する。
という方法もあります。
目的は、外部の専門家に資料を作り続けてもらうことではありません。
最終的には、経営者と経理担当者の間で必要な数字が行き来し、
会社自身で数字を経営に使える状態を作ることです。
まとめ
試算表も資金繰り表もすでにあるのであれば、まず新しい資料を増やす必要はないかもしれません。
試算表なら、大きく動いた数字の理由。
予実管理なら、差異が生じた理由と今後への影響。
資金繰り表なら、この先最も資金が少なくなる時期と、その理由。
まず、このあたりから確認してみてはいかがでしょうか。
そして経営者が「もっと知りたい」と思ったことを経理担当者へ返していく。
そのやり取りができるようになると、毎月作っている数字が、少しずつ経営に使える情報へ変わっていきます。
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「経理担当者に何を求めればよいか整理したい」
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