運転資金とは
融資資金は、目的に応じて「設備投資」と「運転資金」に分類されますが、ここでは運転資金について詳しく解説いたします。
運転資金は、企業が日々のビジネスを運営していくのに必要な資金のことであり、売上高と密接な関係があります。
売上を上げるために必要な費用は、大きく「変動費」と「固定費」に分けられます。
「変動費」は売上と連動して日々変動する費用で、材料費や仕入費用、販売関連の消耗品や運賃などが該当します。
一方「固定費」は売上と連動しない固定的な費用で、人件費や物件賃貸料などが該当します。
運転資金の種類
運転資金は、使用目的によって細かく分かれますが、主には以下のような種類に分類されます。運転資金と言えば短期継続融資で融通する「経常運転資金」を真っ先に想起しますが、これは狭い意味での「運転資金」を指すものであると考えられ、広い意味での「運転資金」はそれ以外にも様々なものがあります。
②増加運転資金
③季節運転資金
④減少運転資金
⑤赤字補填資金
各運転資金の説明
①経常運転資金
通常の事業サイクルの中で常時必要となる資金のことで、売上債権（売掛金、受取手形等）に棚卸資産（商品在庫）を加えて、仕入債務（買掛金、支払手形等）を引くことで求められます。
経常運転資金＝売上債権＋棚卸資産ー仕入債務
売上債権＋棚卸資産 ⇒ いずれ入金を予定するものの、キャッシュとして回収するまでお金が入らない
仕入債務 ⇒ 近いうちにキャッシュとして支払う必要がある
仮に、商品を仕入れてから売れるまでが１か月、売れてから入金するまでが１か月だとすると、仕入れてから入金するまでは２か月かかることになります。一方、仕入れてから１か月後に支払いだとすると、入金よりも支払いの方が１か月早く来ることになります。
この期間の資金不足を補うものが「経常運転資金」です。
②増加運転資金
売上が伸びていることに伴い、仕入代金や人件費、諸経費、外注費などの増を補うための必要資金（売掛金を回収するまで増加した費用を補うために必要な資金、いわば「つなぎ資金」）です。企業の成長に必要な、いわゆる前向きな資金であると言えます。
「つなぎ融資」としては、補助金着金までの間、補助事業遂行のために必要資金の融資を受けるといったケースもあります。返済財源の確度がある程度高いため、金融機関としても取り組みやすい融資です。
一方、売上の入金サイト（回収までの期間）が伸びた場合や、仕入れの支払いサイト（支払いまでの期間）が短縮化した、在庫の滞留（売れない）など、後ろ向きな場合も含まれます。この場合、金融機関は融資に慎重になるため、面談対策をしっかり行う必要があります。
③季節運転資金
季節によって売上に波がある業態、例えばウインタースポーツ用品を扱っている会社、クリスマス商品を主力として扱う店舗、季節を先取りして仕入れを行う洋品店などにおいて、繁忙期に入る前に、仕入れ量や生産量を増やすために必要な資金のことを言います。
売上金の回収までの間、短期融資で調達します。ただし、見込んでいた売上が上がらない場合、返済資金が得られなくなるため、金融機関に対しては精度の高い計画を訴求する必要があります。
この中には「賞与運転資金」や「納税資金」なども含まれます。いずれも６か月程度の短期分割弁済で借入れます。「納税資金」は法人税の中間納付などのため通常は６か月で完済します。
ただし消費税の納税資金としては借りることが出来ません。消費税の納税は、仮受消費税としてお客様から預かっているお金を収めることになるため、残っていないから融資を受けるというのは理由にならないからです。
④減少運転資金
売上業績が減った状態で過去の仕入代金（買掛金）や給与などの支払いが困難な場合に必要となる資金であり、後ろ向きと言えます。企業としては困った場面ですが、金融機関としては貸したお金が返ってくるのか、非常に不安視するため、「経営改善計画」（売上増や経費削減の具体策）を用意し、しっかり訴求しなければ難しいと言えます。
⑤赤字補填資金
④よりもさらに逼迫した状況です。同じく、赤字の穴埋めのための資金であるため、返済の見込みが低いと受け止められ、融資のハードルは高いと言えます。④と同様、「経営改善計画」（売上増や経費削減の具体策）を用意し、必要性や今後の成長性を説明していくことが重要です。
「赤字で苦しいから」という理由だけでは「貸せない」ということになります。
とは言え、実際には赤字補填融資を受けている会社も多くあります。日頃からの金融機関との付き合いの中で「この企業はやがて復活するだろう」と思わせるようなアピールを常にしていくことも必要でしょう。
まとめ
融資資金は目的に応じて「設備資金」と「運転資金」に分類されます。「設備資金」は特定の設備の購入が目的であり、それ以外は広い意味での「運転資金」に整理されます。
銀行はその企業の身の丈に合った「運転資金」しか融資しません。借入枠が厳密にあるわけではないですが、金融機関がある企業に「運転資金」で貸すことが出来る枠はだいたい決まっています。
「経常運転資金」（短期継続融資）以外は、基本的には一時的な補填のような使い方になりますが、運転資金には上記のような種類があることを、知識として知っておきましょう。
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