直感だけで判断して大丈夫か
飲食店を5年間営んでいるYさんは、経営が安定してきたことから、2店舗目の出店を検討しています。
既存店である1号店は、常連のリピート客も多く、良心的な価格設定がうけており、「これなら行けるだろう」と直感的に感じています。
2号店は少しコンセプトを変えて、高めの食材と手間暇をかけたサービス、店舗設備もグレードを上げるつもりでいます。
時代に合わせたハイグレード志向で、今までの客層とは違う新たな客層を掴めるのではないかと、ワクワクした気持ちでいます。
数値で分析してみると
1号店の決算書からキャッシュフローを分析すると、Yさんの直感のとおり、営業利益はプラス80,借入金返済を入れてもキャッシュフローはプラス80と、十分にプラスを確保できていました。(注.ここでは法人税等は便宜上無視します。)
Yさんのように、プラスのキャッシュフロー実績が出て足元が固まってから、次の店舗を検討するというのが大原則です。
1号店がまだ十分にキャッシュフローを得られておらず、勢いで2号店をオープンするのでは、さらに資金繰りが困難になるからです。
| 項目 | 1号店 |
|---|---|
| 売上高 ① | 300 |
| 売上原価 ② | 100 |
| 粗利 ③=①ー② | 200 |
| 販管費 ④ | 120 |
| (人件費)⑤ | (60) |
| (減価償却費)⑥ | (20) |
| (賃借料) | (30) |
| (その他) | (10) |
| 営業利益⑦ | 80 |
| 利益+減価償却費 ⑧=⑦+⑥ | 100 |
| 借入金返済 ⑨ | 20 |
| キャッシュフロー ⑩=⑧ー⑨ | 80 |
| FL比率(%) (②+⑤)/① | 53% |
そのような中、2号店の損益計画を立ててみると、2号店は設備投資に伴う減価償却費が大きく、営業損益はマイナスになってしまいました。
加えて、借入金の返済が200と大きく、2号店単独ではキャッシュフローはマイナス40です。
1号店のキャッシュフローのプラスが大きいので、合計では何とかプラスのキャッシュフローを維持出来ていますが、1号店のキャッシュを2号店が食っている状況です。
手元キャッシュを各店とも月商の3~4か月は持ちたいところなので、このままでは資金繰りに懸念が生じます。
(⇒横スクロール)
| 項目 | 1号店 | 2号店 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 売上高 ① | 300 | 500 | 800 |
| 売上原価 ② | 100 | 150 | 250 |
| 粗利 ③=①ー② | 200 | 350 | 550 |
| 販管費 ④ | 120 | 410 | 530 |
| (人件費)⑤ | (60) | (100) | (160) |
| (減価償却費)⑥ | (20) | (220) | (240) |
| (賃借料) | (30) | (80) | (110) |
| (その他) | (10) | (10) | (20) |
| 営業利益⑦ | 80 | ▲60 | 20 |
| 利益+減価償却費 ⑧=⑦+⑥ | 100 | 160 | 260 |
| 借入金返済 ⑨ | 20 | 200 | 240 |
| キャッシュフロー ⑩=⑧ー⑨ | 80 | ▲40 | 40 |
| FL比率(%) (②+⑤)/① | 53% | 50% | ー |
出店後に撤退を検討しても
このままでは手許キャッシュが減ってしまうと気付いたYさんは、2号店の撤退を検討します。
撤退を決めたとしても、2号店のスタッフ全員を会社都合ですぐにクビには出来ませんので、仮に半分残るとします。また、設備資金としてすでに借入れをしているので、設備を処分したとしても、借金返済は残ります。
2号店を撤退した場合、2号店の売上から得られるキャッシュインがゼロになってしまうため、不採算であったとしても、一度出店してしまうと、簡単には撤退出来ないことが分かります。
(⇒横スクロール)
| 項目 | 1号店 | 2号店 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 売上高 ① | 300 | 0 | 300 |
| 売上原価 ② | 100 | 0 | 100 |
| 粗利 ③=①ー② | 200 | 0 | 200 |
| 販管費 ④ | 120 | 50 | 170 |
| (人件費)⑤ | (60) | (50) | (110) |
| (減価償却費)⑥ | (20) | (0) | (20) |
| (賃借料) | (30) | (0) | (30) |
| (その他) | (10) | (0) | (10) |
| 営業利益⑦ | 80 | ▲50 | 30 |
| 利益+減価償却費 ⑧=⑦+⑥ | 100 | ▲50 | 50 |
| 借入金返済 ⑨ | 20 | 200 | 220 |
| キャッシュフロー ⑩=⑧ー⑨ | 80 | ▲250 | ▲170 |
| FL比率(%) (②+⑤)/① | 53% | ー | ー |
まとめ
新たな出店は夢があってワクワクします。1号店がうまくいっていれば、直感的に「次もきっとうまくいく」と思っていしまいますが、借入金返済も含めて、資金繰り予定表で入念に検討してから判断した方が良さそうです。
借入れが身の丈に合っているのか、毎月の返済額に無理はないのかなど、定量的な検討をしてから、出店可否の判断をしましょう。
そして出店後に万一、予定通りにいかなかった場合、銀行に返済ペースの減免を依頼するなどリスケ交渉も検討する必要があります。
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