小規模企業共済制度とは
労基法には退職金の規定はないため、企業に退職金の支払い義務はありませんが、多くの会社では退職金制度があります。
中小企業経営者や個人事業主からすれば、「サラリーマンは退職金が貰えるから良いよね」と思われるのではないでしょうか。
でも実は、中小企業経営者や個人事業主にも「退職金制度」はあります。
小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、令和6年3月末現在、全国で約166万人が在籍しています。
掛金は全額を所得控除できるので、節税効果が高いです。
ちなみに、中小企業の従業員向けの退職金準備制度として中小企業退職金共済という制度もあります。
加入資格
個人事業の事業主とその共同経営者の方、また、小規模企業を経営している会社等の役員の方が加入できます。
〇建設・製造・不動産・農業・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)など
→常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業または会社等の役員
〇商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)
→常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業または会社等の役員
〇上記に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者
→個人事業主1人につき2人まで
掛金
月額1,000円から70,000円まで、500円刻みで自由に設定が可能です。
掛金の増額・減額は理由を問わず500円刻みで行うことが出来ます。
掛金の納付方法は、ご本人の個人名義の預金口座からの口座振替となります。
毎月納付する「月払い」のほか、あらかじめ届け出た月(年1回)に12か月分の掛金を納付する「年払い」、またはあらかじめ届け出た月(年2回)に6か月分の掛金を納付する「半年払い」から選択できます。
掛金は一括前払いも可能で、前納すると前納減額金※を受け取ることが出来ます。
※前納月数1か月あたり1,000分の0.9に相当する額。ただし、前納月数が12か月を超える掛金の前納月数は12か月として計算されます。
共済金等の受取り
共済金等の支給事由は以下のとおりです。
【A共済事由】個人事業の廃止や死亡、個人事業の配偶者または子に事業の全部を譲渡、会社等の解散など
【B共済事由】65歳以上で180月以上掛金を納付したことによる老齢給付、会社等の役員の死亡
【準共済事由】法人成りし、その会社の役員に就任しなかった場合や、役員に就任したが小規模企業者でなくなった場合、会社等の役員の退任(疾病・負傷・65歳以上・死亡・解散を除く)
【解約事由】任意解約、12か月以上の掛金滞納による中小機構による共済契約の解除等
以上の共済事由により、共済金の額の大小関係は、
【A共済事由】>【B共済事由】>【準共済事由】>【解約事由】
となります。
【A共済事由】と【B共済事由】は掛金納付月数が6か月以上、
【準共済事由】と【解約事由】は掛金納付月数が12か月以上の場合に支給されます。
掛金納付月数が240月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛け金合計額を下回ります。
受取方法は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」があります。
「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」を希望する場合は、以下の要件の全てを満たす必要があります。
・共済金Aまたは共済金Bであること
・請求事由が共済契約者の死亡でないこと
・請求事由が発生した日に60歳以上であること
・共済金の額が次のとおりであること
✓分割受取りの場合 : 300万円以上
✓一括受取りと分割受取りの併用の場合: 330万円以上
(一括で受け取る金額が30万円以上、分割で受け取る金額が300万円以上)
「分割」の場合は10年または15年で受け取ります。
分割共済金は、年6回、奇数月(1・3・5・7・9・11月)に支給されます。
ちなみに公的年金(国民年金・厚生年金)の支給は年6回、偶数月(2・4・6・8・10・12月)です。
税制上のメリット
小規模企業共済制度は、掛金の支払時にも共済金等の受取時にも、税制上のメリットがあります。
掛金支払時
掛金の支払い時は、月分割、一括、前納に関わらず、「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となります。
所得税額は、「課税所得金額×税率ー控除額」で計算されますので、控除額が大きければ、税額を少なく抑えることが出来ます。
共済金等の受取時
サラリーマンや公務員の退職金は所得税法上、一括受領する場合は退職所得として、年金(分割)で受け取る場合は雑所得として扱われます。
退職所得は、(収入金額ー退職所得控除額)×1/2で計算されています。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
退職所得は今後の老後生活を支える大切なものであり、退職金に過度な税金を課してしまわないよう、所得の額が少なくなるよう式が組まれています。
小規模企業共済金についても、一括受取りの場合は退職所得扱いになります。
また、分割で受け取る場合の雑所得も、公的年金等の収入金額から「公的年金等控除額」という所得控除が定められており、所得の額が少なくなるよう式が組まれています。
小規模企業共済金についても、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットを同じように受けられます。
貸付制度
共済契約者貸付には、簡易迅速に貸付けが受けられる「一般貸付」と、特別な事情がある場合に貸付けが受けられる「特別貸付」があります。
「一般貸付」は、納付済掛金の合計額の7割から9割の範囲内と2,000万円のいずれか少ない額の範囲内で、他の種類の貸付を合わせて2,000万円が上限です。期間は額によって異なりますが、最長60月とされ、担保や保証人は不要です。
「特別貸付」には、経済環境の変化等に起因した一時的な売上減少により、資金繰りに著しく支障をきたしており、経営の安定を図るための事業資金を低金利で借入れ出来る「緊急経営安定貸付け」や、
疾病・負傷による入院や災害救助法の適用された災害等により被害を受けたため、経営の安定化に支障が生じた際の事業資金を低金利で借入れ出来る「傷病災害時貸付け」
などがあります。
中小機構における運用状況
中小機構では、長期的な観点から、安全かつ効率的な運用を行っています。
満期保有目的の国内債券(簿価)を含む自家運用資産の構成割合を約8割とし、約2割を運用機関に委託しています。
低リスク資産を中心に堅実な運用をしているので、現状、受取りが滞るリスクは低いと言えます。


中小機構ホームページより引用
まとめ
小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための退職金制度であり、廃業や退職時の生活資金として積立てが出来る制度です。
月々の掛金拠出が難しいとしても、まずは少額掛金から始めてみて、あとで増額することも可能です。
税制面での優遇も受けられる上、貸付制度も充実しているため、是非とも活用をご検討いただきたい制度です。
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