中小企業退職金共済とは
中小企業退職金共済(中退共)は、中小企業の相互共済と国の援助で確立された退職金準備制度で、中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図り、企業の振興と発展に寄与することを目的として、昭和34年に「中小企業退職金共済法」に基づき設けられた制度です。
中退共制度の運営は、厚生労働省所管の独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部が行っています。
小規模企業共済が小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための退職金制度であるのに対し、中小企業退職金共済は中小企業の従業員のための退職金制度です。
加入対象企業
中小企業の相互共済のための制度であるため、一定規模以下の企業が対象です。
| 一般業種 | 従業員数300人以下または資本金等3億円以下 |
| 卸売業 | 従業員数100人以下または資本金等1億円以下 |
| サービス業 | 従業員数100人以下または資本金等5,000万円以下 |
| 小売業 | 従業員数50人以下または資本金等5,000万円以下 |
加入する企業は、全従業員を加入対象にしなければなりませんが、「入社後3年目の従業員は加入」といった一律のルールであれば可です。
なお、役員や個人事業主は加入出来ません。
掛金
従業員ごとに、月額5,000円から3万円までの16種類から選択します。事業主はこの中から従業員ごとに任意に選択できます。
5,000円/6,000円/7,000円/8,000円/9,000円/10,000円/12,000円/14,000円/16,000円/18,000円/20,000円/22,000円/24,000円/26,000円/28,000円/30,000円
短時間労働者(パートタイマー等※)は、上記の掛金月額のほか特例として次の掛金月額でも加入できます。
2,000円/3,000円/4,000円
※ 1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用される通常の従業員より短く、かつ30時間未満である従業員
事業主側としては全額損金(必要経費)に計上出来るので、節税効果がありますが、全額事業主負担となります。(従業員に負担させることは出来ません。)仕訳の科目は「保険料」などで整理します。
従業員の退職時に一括損金(必要経費)に計上するのではなく、毎月の掛金拠出時に計上出来るので、損金(必要経費)を分散して前倒し計上出来るメリットがあります。
国の助成
事業主側のメリットとして、国の助成を受けられます。
新規加入の場合、加入後4か月目から1年間、掛金月額の2分の1(従業員毎に上限5,000円)を国が助成します。
また、掛金を増額する場合も国が助成してくれます。
掛金月額が18,000円以下(2万円未満)の従業員の掛金増額の場合、増額月から1年間、掛金増額分の3分の1を国が助成します。
掛金減額はハードルが高い
掛金月額の変更は、掛金月額の種類の範囲内でいつでも行うことが出来ますが、掛金月額を途中で減額する場合は、従業員の同意が必要です。
従業員の同意が得られないときは、現在の掛金月額を継続することが著しく困難である旨の厚生労働大臣の認定書が必要となります。
なお、従業員を懲戒解雇したような場合には、厚生労働大臣の認定を受けたうえで、退職金を減額することができます。
退職金は直接従業員に支払われる
退職金請求から支払いまでの流れは以下のとおりです。
1.事業主は「被共済者退職届」を機構・中退共本部に送付
2.事業主は「退職金(解約手当金)請求書」の共済契約者(事業主)記入欄に記入のうえ、「退職金共済手帳(3枚)」を従業員(死亡の場合は遺族)に渡し、必要書類を添付して退職金を請求するよう指導
3.退職者は「退職金(解約手当金)請求書」に必要事項を記入のうえ、受取金融機関の口座確認印を受けるか、または普通預金通帳のコピーを添付
4.退職者は「退職金(解約手当金)請求書」を必要添付書類とともに、機構・中退共本部へ送付
5.機構・中退共本部より請求人宛てに「退職金等振込通知書」を送付、事業主にも「退職金等支払のお知らせ」により、請求人に支払う退職金等の支払金額・振込予定日を通知
6.機構・中退共本部は、退職金を請求人の預金口座に振り込み

独立行政法人勤労者退職金共済機構ホームページより抜粋
「6」に記載のとおり、退職金は事業主を通じて支払われるのではなく、機構・中退共本部から請求者の口座に直接振り込まれます。
したがって、従業員が会社に迷惑を掛けたり、円満な形での退職でないとしても、懲戒解雇したような場合を除き、仕組み上、退職金は満額支払われます。
退職金の支給方法
退職金は「基本退職金」と「付加退職金」の合計が、機構・中退共本部から従業員に直接支払われます。
基本退職金:掛金月額と掛金納付月数に応じて固定的に設定
付加退職金:運用収入の状況等に応じて決定(43月以上の加入が必要)
掛金月数が12月未満の場合は、退職金は本人にも事業主にも返還されません。
12月以上23月未満の場合は、掛金総額を下回ります。つまり2年に満たない場合は元が取れません。
24月以上42月未満の場合は、掛金相当額が支払われます。
43月以上の場合には、運用収入の状況等により、付加退職金が支給されます。
支給は「一時金払い」「分割払い」「併用方式」がありますが、60歳未満の退職者は「分割払い」を選択出来ません。
「分割払い」は年4回(2・5・8・11月)に支給されます。
ちなみに公的年金(国民年金・厚生年金)の支給は年6回、偶数月(2・4・6・8・10・12月)です。
まとめ
中小企業の従業員のための退職金制度である中小企業退職金共済(中退共)を解説いたしました。
中小企業にとっては、退職金を自前で準備することが難しい場合もあると思います。このような場合に向けた制度が中退共です。
従業員にとっては大変お得な制度ですが、事業主側にとっては、掛金が全額事業主負担であることや、途中で減額するにはハードルが高いなど、デメリットも少なくありません。
掛金は全額経費計上出来ることや、一定の条件下で掛金について期限付きで国の助成が受けられるというメリットもありますが、上記デメリットも考慮した上で、加入すべきかどうかを慎重に検討すべきです。
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