資金繰り表の構造
資金繰り表は「経常収支」「設備収支」「財務収支」の3つの収支と繰越残高により構成されています。
①月初繰越残高
現金と預金の前月(前期)の残高を合計で計上します。
②経常収支
経常収入と経常支出で構成されます。収入はプラス、支出はマイナスで表示します。
経常収入は「現金売上」「売掛金回収」「受取手形回収」「前受金の入金」などの他、「受取利息・配当金の入金」「家賃収入」などもあります。
経常支出は「外注費」「給料手当」「旅費交通費」「水道光熱費」などのキャッシュの流出を伴う経費を計上します。細かいですが、消費税込みとなることは要注意です。「減価償却費」はキャッシュを伴わない経費のため、ここには入れません。
③設備収支
設備収入と設備支出で構成されます。収入はプラス、支出はマイナスで表示します。
設備収入は「設備売却」など固定資産の換金によるキャッシュの流入を、設備支出は「設備購入」など不動産や固定資産を購入した際のキャッシュの流出を計上します。
④財務収支
財務収入と財務支出で構成されます。収入はプラス、支出はマイナスで表示します。
財務収入は「借入金収入」(融資受入れによるキャッシュの流入)を計上します。金融機関毎に整理すると分かりやすいです。このほか「補助金の入金」などの臨時の入金は、経常収入とは分けて財務収入に整理した方がよいでしょう。
財務支出は「借入金返済」(融資の返済によるキャッシュの流出)を計上します。これも金融機関毎に整理すると分かりやすいです。
⑤翌月繰越金
現金と預金の当月の残高を合計で計上します。上記①~④の総和を表します。「資金繰り実績表」においては、キャッシュの増減が漏れなく織り込まれていれば、理論上、手元の現金と通帳の残高の合計額と一致します。

資金繰り表で財務がヤバいかすぐ分かる
資金繰り表は銀行に出すためだけに作るのではありません。改善点を見極め、経営上必要な対策を講じるためにも、以下の点を意識して、資金繰り表を確認しましょう。
①経常収支はプラスかマイナスか
経常収支は本業の収支の結果です。経常収支がマイナスであれば、やがて手元キャッシュを表す繰越金が減ることになり、恒常的にこの状態が続くと、資金ショートに至ります。
経常収支が少なすぎるかマイナスである場合、売上収入が少なすぎるか、仕入原価や販管費等の支出が多すぎるかなどを検討します。

仕入単価や人件費の高騰は、適正に売上単価に反映しなければ、企業側の負担となります。一方、売上単価を上げることで売上数量や客数が減るリスクもあるため、付加価値を高めて単価を上げるなどの工夫も必要でしょう。
仕入については、必要以上に仕入れてしまうと、仕入支出にそのまま反映されてしまいます。この点は損益計算書における売上原価(=月初棚卸高+仕入ー月末棚卸高)の考え方とは異なり、リアルにキャッシュアウトで計上するので、過剰な仕入れには注意です。
入出金サイト(期間)の概念も重要です。
売上収入は、掛売上や手形売上など、あとで入金するものは、入金時に売上収入に計上されることになるため、出来るだけ早く回収することが資金繰り上は重要です。
また、仕入支出についても、掛仕入や手形仕入など、出金が後日でよいものは、出金時に仕入支出に計上されるため、こちらは出来るだけキャッシュを保持する期間を取るため、支払いを遅くすれば、資金繰りは安定に向かいます。→ CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)
②借入金の返済が経常収支のプラスの範囲内か
長期融資や、つなぎ資金、納税資金などの短期融資は、基本的にはキャッシュフロー(経常利益+減価償却費ー法人税等)が返済財源です。→融資の形態
経常収支はまさにこのキャッシュフローを表しており、①でプラスであることに加え、融資の返済額が経常収支のプラス枠内に収まっている必要があります。
もし返済の方が多ければ、本業で得たキャッシュを全て返済に食われてしまうことになり、やがて資金ショートに至ります。
経常収支がプラスの場合、決算書(損益計算書)が黒字であることが多いため、社長は儲かっていると受け止めていますが、返済の方が多いと手元にキャッシュが残らず、むしろ減って行くのです。

③翌月繰越金が目減りしていないか
①②の要因で手元キャッシュ(翌月繰越金)が目減りしている場合、資金繰り改善を検討しなければなりません。
なお、資金繰り予定表では、ここがマイナスになっていると資金ショートの状態なので、新規融資の申し込みをするなど、予め対策を講じておく必要があります。
また、目指すキャッシュ残高を達成出来ていなければ、計画の練り直しを行います。

改善は以下の順に検討します。
財務収支改善(新規借入→借換え→リスケジュール)
↓
設備収支改善(不動産、設備・倉庫・店舗等の売却による換金)
↓
経常収支改善(固定費・原価の減、売上増)
④経常収支、設備収支、財務収支がどのようなバランスになっているのか
3つの収支のプラス・マイナスの状況を確認することで、会社財務の大きな動きが分かります。

上記の例では、
経常収支「+」設備収支「ー」財務収支「+」なので、
「本業で稼げている。設備投資を行っている。借入れによる入金がある。」という状況です。
⑤各収支の内容は妥当か
各表示科目の大小や増減推移を確認します。表示科目は自由に設定出来るので、動きを知りたい科目は細分化して表示します。経常収支における売上収入や仕入支出は取引先ごとに、財務収支における借入金の入金・返済は金融機関ごとに表示させれば、より実態把握に役立ちます。

まとめ
資金繰り表は、キャッシュを見える化して経営を安定させるために必須のものです。
とくに資金繰り予定表により様々なシミュレーションをすることは、転ばぬ先の杖となります。
しかしせっかく作った資金繰り表の見方を知らなければ、どう活用したらよいか分かりません。どうなったらヤバい状態なのか、知識として知っておきましょう。
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