金利が上昇するメカニズム
金利は、お金を貸す側(銀行や投資家など)と借りる側(企業など)の受給バランスによって変動します。
企業が投資活動に積極的になれば、市中にあるお金の量が少なくなり、高い金利でもお金を借りようとします。すなわち金利が高くても借りることになり、その結果、金利が上昇します。
逆に企業が投資活動に消極的であれば、市中にお金が余っている状態となり、金利が低くなければお金を借りません。その結果、金利は低下します。
昨今は物価上昇に伴い、企業はより多くのお金を必要としています。その結果、銀行からお金が減り、銀行が貸し出すお金の希少性が高まります。
お金のニーズが高まれば、銀行はより高い金利でも借りてくれる企業に融資をしようとします。物価が上昇している今は、金利が上昇する地合いにあるのです。
銀行が高い金利を付けたくなる理由
基本的な銀行の収益構造は、預金者から預かったお金を融資を希望する先に貸出し、元本を回収するとともに、利息を受け取るというものです。
住宅ローンやマイカーローンなど一定の商品となっている融資については、予め金利が決められていて、借り手が納得した上で借入れを申し込みます。
一方、企業が融資を受ける際の金利は、銀行が融資先の決算書などから都度判断して提示します。
融資における最大のリスクは、融資先企業が倒産して、貸し出した資金が回収出来ないことです。リスクを量る尺度は、自己査定における格付けです。
財務内容が良い会社は格付けが高く、逆に財務内容が悪ければ格付け評価は低くなります。格付け評価は、財務指標を使って定量評価する一次評価で概ね決まります。
貸倒れリスクの観点
格付け評価が悪い会社は貸倒れリスクが高く、銀行自身の決算処理として貸倒引当金を計上しなければなりません。逆に評価が良い会社は貸倒れリスクが低いため、貸倒引当金をあまり積む必要はありません。
債務者区分で「正常先」として評価している融資先が合計3兆円あるとして、その9割である2兆7千万円のうち0.1~0.3%は不良債権として引き当てることになっています。
これが「要注意先」になると、貸倒れリスクが高いと見做され、7~10%を引き当て、「破綻懸念先」になると、無担保融資の部分に対して70%以上引き当てる必要があります。
銀行自身の財務諸表において引当金を積む場合、「貸倒引当金繰入」という費用の科目がセットで仕訳されます。そうなると、これを上回る収益を稼がなければ、銀行の経営は成り立ちません。
そのため、銀行にとっての収益である「利息収入」を「貸倒引当金繰入」よりも多く得なければならず、金利を上げて「利息収入」を増やす必要があります。
格付け評価が良化すれば、その融資先に対する貸倒引当金を減らせるため、金利を下げることが出来るという仕組みになります。
基準金利からのバッファの観点
銀行には基準となる金利があり、格付け評価が高い融資先は「基準金利から1%引いてもよい」というラインを決めています。格付けが1ランク上がれば「2%引いてよい」というように、引いてよいバッファが大きくなります。
ランクが下がれば逆に基準金利からのディスカウント幅は縮小し、結果、金利が上がることになります。
金利が全体的に上がるということは、基準金利が上がることを意味します。
金利が上がらないようにするためには
①格付け評価上げを目指す
一次評価においては、様々な財務指標により定量評価が行われますが、とくに「自己資本」と「経常利益」が多くの指標に使われることを意識して財務改善に取り組み、ランクアップとなれば、融資金利でより良い条件を提示される可能性が高まります。
②複数の金融機関と付き合う
メインバンク1行からしか融資を受けていない場合、他行の融資金利との比較が出来ません。そのため、銀行から提示された融資条件をそのまま受け入れているというのが多くの実態かも知れません。
複数の金融機関と付き合うのが最適な金融機関の選び方と言えます。年商3億円未満の企業であれば、信用金庫、信用組合、日本政策金融公庫(国民生活事業)が最適で、取引銀行数は2~3行程度が管理上丁度よいです。
メインバンクは、長く付き合ってきた融資先に不測の事態が生じた場合、経営上の危機から守らなければならない立場です。そのため、金利はサブバンクよりも一般的に若干高めになっていることが多いです。
1行だけだと競争原理が働かず、金利は高止まりしてしまうため、サブバンクのウエイトを若干増やすなどして、「シェアを取られたくない」という意識を生じさせることが効果的です。
また、債務者区分が「正常先」である場合、銀行側から仮に「金利据え置き」を提示されたとしたら、「代わりに融資額を増やしてもらいたい」という交渉をしてみるのも良いかと思います。
③銀行との関係性を強固なものにしておく
日頃から銀行との信頼関係を築いておくことは重要です。表敬訪問はマメに行うことが望ましく、3か月に1度は行いたいところです。
「融資の可能性はその企業への情報量に比例する」と言われているように、定期報告により、財務を透明化しておくことです。財務内容が不透明であれば、銀行は不測の事態を考え、金利を高くするでしょう。
なお、融資申込みの際の資金使途は重要です。設備資金は使途が明確であるのに比べ、運転資金は使途が広く、何に使われているのか分からないこともあり、金利は高くなりがちです。
信頼関係が築けていれば、一律に金利を上げるような場面でも、個別事情を考慮して金利を据え置いてくれる余地が出てきます。
まとめ
お金を借りるときには、なるべく金利を下げたいと思わない経営者はいないと思います。
金利がどのように決まるのかというメカニズムを理解し、金利を上げられないよう、日頃から銀行との良好な関係を築く努力が重要です。
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