誰にも言えない社長の悩み
社長の「お金が足りない」「借入金の返済が出来ない」という悩みは、従業員にはなかなか相談出来ません。なぜなら、給料を払う側の社長と、給料をもらう側の従業員は根本的に立場が違うからです。
会社にお金がないとしても、従業員は給料をもらう権利があります。もし「お金がなくて給料が払えない」ということが分かれば、身内出ない限り、従業員はすぐさま転職してしまうでしょう。
銀行からお金を借りれば大丈夫だとしても、お金の問題は経営の根幹にかかわる非常にデリケートな悩みです。家族に相談出来たとしても、かえって不安にさせてしまうだけです。
人知れず、孤独に悩む社長が多いのが実態です。
「指導型」財務コンサルタント
お金に関する悩みを自分で解決出来なければ、財務コンサルタントなど外部の専門家に相談するのは有力な手段の一つです。
ただし、同じ財務コンサルタントでも様々なタイプがいます。
イメージしやすいのは、高度で専門的な経営指標を並べて、「自己資本比率〇%を達成することで財務基盤を強くすることが出来ます」と「指導」するタイプ。
確かに仰せの通りなのかも知れませんが、社長の悩みに寄り添っておらず、悩みに対する答えになっていません。正論で説教されているような気分にさせてしまっては社長には届きませんし、専門的で難解な財務指標やテクニックはまったく刺さりません。
社長はその業界に関してはまさにプロです。
財務コンサルタントが数字の上げ下げだけでアドバイスされたところで、社長は実現可能性を肌感で分かるため、「業界のことを何も知らないくせに、何を言っているんだ」と反発心を持ちたくなるでしょう。
「〇〇費を〇%削減すべきです」などと言われても、「出来ません」という反応になるのは仕方ありません。
せっかく財務の専門家の有益なアドバイスが含まれていたとしても、取り入れられることはありません。
「伴走型」財務コンサルタント
社長の「誰にも言えないお金の悩み」にとことん付き合ってくれる専門家こそが、理想的な財務コンサルタントです。経営の主役はコンサルタントではなく社長です。
社長は熱い想いを持って事業を始めたはずです。主役は社長で、コンサルはそれをサポートする役割です。
お金に関する社長の悩みは様々です。
・売上や利益はあるのに、会社にお金が残らない
・銀行から融資を受けたいが、断られてしまうか不安だ
・支払い時期が近づくと、資金がショートしないかハラハラする
・設備投資をしたいが、返済していけるか心配だ
・入出金の状況が見えていないので、いつも心配だ など
「伴走型」のコンサルタントは、社長を走らせる「監督」ではなく、一緒に走ってくれる「サポートランナー」です。走る方向やペースは社長自身が決めます。コンサルタントは一緒に走りながら、給水やエナジードリンク(それらは伴走者であるコンサルタントが用意)を渡します。
社長が実現したい未来を考え、財務コンサルは資金繰り予定表を使って一緒に議論するという姿が理想的です。
例えば、資金繰り表で、経常収支よりも借入金の返済が大きく、キャッシュがどんどん減っている会社の場合、
・新規借入れを〇〇万円すればどうなるか
・借換えをして返済期間を長くすることで、毎月の返済額を半分に減らしたらどうなるか
・リスケジュールをして元本の返済を延ばしてもらったらどうなるか
・固定費を減らしたらどうなるか
・売上単価を上げて売上を増やせたらどうなるか
などを、社長の目の前で資金繰り予定表を使って数値を動かしてシミュレーションしてみる。
王道のアイディアは財務コンサルが提示し、具体的にどの選択肢を取るのか、いくら実現できそうなのか、交渉はどうやってするのか、などは社長と一緒に考えられれば、社長もモチベーションを持つことが出来ます。
財務コンサルは、社長のやりたいことの実現のお手伝いだけではなく、危険な状況を気付かせてくれる役割も持っています。
経営をしていると、「これまでうまく乗り切ってこれたのだから大丈夫」と根拠もない安心感を持ってしまうことがあります。財務コンサルは一緒に伴走しながら、危険を察知してアラートを鳴らす役割も持っています。
新たな気付きや危機感を持ってもらえることが、転ばぬ先の杖となるのです。
新しい店舗を出す場合、「出店すれば何とかなるだろう」と安易に考えてしまいがちですが、軌道に乗るまでは既存店の資金を食う形になります。その結果、全体の資金繰りが厳しくなるおそれがあります。
新規店の設備資金だけ借りればよいと安易に判断して進めてしまうと、あとで資金ショートが見えてきてからでは、対応が遅れるばかりか、ヤバくなってからでは銀行も融資を出しにくくなります。
出店する時は社長は悩んでいないかもしれませんが、「伴走」している財務コンサルが気付いて、前もってアラートを鳴らしてくれれば、手遅れにならずに済みます。
まとめ
社長の「お金が足りない」「借入金の返済が出来ない」という悩みにとことん向き合って、壁打ちの相手になってくれるのが「伴走型」の財務コンサルタントです。
主役はあくまで社長であり、財務コンサルタントが用意した資金繰り予定表を見ながら一緒に打ち手を考え、実際の経営判断は社長が行う。相談役として財務コンサルタントの活用を検討してはいかがでしょうか。
