自社の決算書を読む
会計事務所に決算書を作ってもらったとしても、どう見たらよいか分からない社長は多いと思います。もしくは数字が苦手で見たくもないという方も多いのではないでしょうか。
単に損益計算書の売上高と当期純利益だけを見て、「売上が増えている」「利益が増えている」などという見方しかしていないとすると勿体ないので、ぜひ本稿で紹介する見方を参考に、経営に役立てて頂きたいと思います。
貸借対照表は最重要
経営者にとっては、売上規模や利益が出ているかを先に気にしますが、銀行にとっては、単年度の経営成績である損益計算書よりも、これまでの経営の蓄積である貸借対照表がより重要です。
貸借対照表は、会社が今後事業を継続していくだけの資産があるのか、負債の返済余力はあるのか、これまでの利益の蓄積がどの程度なのかなど、銀行にとっての「安全性」を確認することが出来る最も重要な財務諸表です。
以下ではまず貸借対照表のポイントをお伝えし、続けて損益計算書のポイントについてもお伝えします。
純資産合計・利益剰余金・現預金はどうか
貸借対照表(Balance Sheet)は、期末日での会社の財政状況を表す財務諸表で、資金をどこから調達してきて、何に使った(運用している)かを表します。
「資産」は何に使ったか、「負債」と「純資産」はどこから調達してきたかを表しています。
「純資産」は「自己資本」と同じ意味で、企業にとって返済義務のない財産のことです。
これに対し「負債」は「他人資本」とも呼ばれ、返済義務や支払義務があるものなどを整理します。
よって、純資産の大きさや、負債を含めた全体に対する割合などを見て、企業の財政状態が健全かを確認します。
貸借対照表の左側もしくは1枚目(借方)と、右側もしくは2枚目(貸方)の合計額は必ず一致するようにしますので、
資産合計ー負債合計=純資産合計
となり、負債が大き過ぎれば、純資産がマイナスになる場合もあります。これを債務超過と言います。
「利益剰余金」は、設立からこれまでの利益の蓄積です。着実に業績を上げてきたかどうかが分かります。
「現金」「預金」は貸借対照表では最も重要です。少ないと資金繰りが不安なので、業種にもよりますが、月商の3か月分は持っておくのが理想的です。

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借入金の総額と借入月商倍率はどうか
借入月商倍率は、借入金が月商の何倍(何か月分)なのかを示す指標です。借入が過剰に膨らんでいないか、借入れの余力はあとどの程度あるのかを把握するために使います。
借入月商倍率=借入金÷平均月商(年商の12分の1)
目安としては、3か月以下であれば〇、3~6か月であれば△、6か月以上であれば✕
です。

上記の場合、
月商=380,994,583÷12=31,749,548円
借入月商倍率=27,646,800÷31,749,548=0.87か月
3か月以内なので〇、仮に3か月分まで借入れることが出来るとして、9,500万円まで借りられるとすれば、今2,700万円なので、あと6,800万円ぐらいは借入れられる可能性があるということです。
3期分のキャッシュの推移はどうか
貸借対照表の「現金」+「預金」がここで言うキャッシュ(手元資金)です。直近3か年分の貸借対照表を並べて、徐々に減ってきている場合は要注意です。このまま減ったらあと何年ぐらい「持つ」のかを測ることが出来ます。
簡易キャッシュフローと借入金返済額の関係はどうか
資金繰り表において、借入金の返済が経常収支のプラスの範囲内かどうかは重要です。経常収支は、企業の本業である商品・サービスの日々の影響活動で発生する収支を整理します。
資金繰り表がない場合、経常収支に近い値として、簡易キャッシュフローを用います。
借入金返済額は、貸借対照表の借入金の増減および決算書の「勘定科目内訳明細書」から確認します。
簡易キャッシュフロー(=経常利益+減価償却費ー法人税等)ー返済額 = 簡易な予測キャッシュ増減(+or▲)
売上高と営業利益、簡易キャッシュフローはどうか
損益計算書(Profit & Loss Statement)とは、一定期間の会社の経営成績を表す財務諸表で、ざっくりと言えば、売上などの収益から経費を引いて利益を計算する表です。
会社の規模感を見る際、売上規模と、本業の利益である営業利益の規模感やバランスを確認します。売上高に対し、営業利益が小さすぎる場合は、原価率が高すぎるということです。3期分を並べて、増減の推移も確認します。
売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100%
業種にもよりますが、一般的には10~20%あれば良好です。
簡易キャッシュフローについては前述のとおりです。
役員報酬はどうか
役員報酬が多すぎて赤字決算になっている場合、銀行の自己査定における債務者区分を上げるためには、役員報酬を下げることを検討すべきです。
逆に少なすぎる、あるいはゼロである場合、赤字補填のために役員報酬を削り、無理に黒字化しているように見えます。
役員報酬を3期分を並べてみれば、決算の状態が見えてきます。
まとめ
決算書をざっくり見るとすれば、貸借対照表の現預金、純資産(自己資本)と、損益計算書の売上高、営業利益がポイントです。
手元現預金が十分あるのか、純資産は債務超過になっていないか、売上高の規模感や、売上高営業利益率はきちんと出ているか、といった見方がさっと出来ると、かなり数字に強いという印象です。
そのうえで、借入金の規模感や、簡易キャッシュフローと毎年の返済額を見比べ、予測キャッシュ増減を把握します。
ここまで見ることが出来れば、自社の決算書が大きく理解出来ているレベルと言えるでしょう。
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