「会社を辞めて独立したいけど、失業手当ってもらえるの?」「65歳過ぎてから再就職した場合、若い人と同じだけ給付されるの?」
そんな疑問をお持ちの方へ。
雇用保険の給付額や制度は、年齢・退職理由・退職後の進路によって大きく変わります。
今回は、60歳未満と65歳以上で退職した人が、個人事業主になる場合・再就職を目指す場合を比較しながら、雇用保険の給付額や制度の違いを分かりやすく解説します。
雇用保険の基本条件を押さえよう
まず前提として、雇用保険の「基本手当(いわゆる失業手当)」は、次の条件をすべて満たした人に支給されます。
- 退職前の2年間に、12か月以上の雇用保険加入(被保険者期間)がある
- ハローワークに「求職の申し込み」をしている
- すぐに就職できる状態にある(健康状態、育児、開業準備中でない等)
つまり、「会社を辞めてすぐに個人事業主として独立する人」は、「求職中」と見なされず失業給付の対象外になることがあります。
【60歳未満】退職後の進路による違い
(1)すぐに独立するケース
たとえば55歳で会社を辞め、すぐに個人事業主として開業する場合。
このケースでは、ハローワークに求職申し込みをせず、開業届などを提出すれば、「求職中ではない」と判断され、基本手当は受け取れません。
また、給付中に営業活動や開業準備(HP開設、名刺配布、取引開始など)をしていることが分かれば、支給がストップする可能性もあります。
(2)再就職を目指して求職するケース
一方、「再就職を希望している」としてハローワークに申し込めば、「基本手当(失業手当)」が支給されます。
支給日数は、雇用保険の加入年数によって次のように決まります(自己都合退職・定年退職などの一般受給資格者の場合)。
| 雇用保険の被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 1年以上~10年未満 | 90日 |
| 10年以上~20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
なお、自己都合退職の場合は「7日間の待期期間」に加え、原則3ヶ月間の給付制限があります。
つまり、退職後3ヶ月間は給付が始まらないため、生活資金の準備が必要です。
▼ 例:自己都合退職で月収25万円、勤続10年の場合
- 平均賃金日額:約8,000円
- 基本手当日額:約5,500円(支給率 約70%)
- 支給期間:90日
- 総額:約50万円(給付開始は退職から3ヶ月後)
【65歳以上】退職後の進路による違い
65歳を超えて退職した場合、通常の「基本手当」は対象外となり、代わりに「高年齢求職者給付金」が支給されます。
(1)65歳以上で個人事業主になる場合
この場合も、「求職中」とは見なされないため、原則として給付は受けられません。
制度の対象外となるため、退職後すぐに独立する場合は、雇用保険の給付には期待できません。
(2)65歳以上で再就職を目指す場合
65歳以上で退職後、ハローワークに求職申し込みを行うと、「高年齢求職者給付金」の対象となります。
この制度は、6か月以上雇用保険に加入していた65歳以上の人が、退職後に再就職を希望する場合に、一時金として最大50日分支給される制度です。
| 雇用保険の被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 6か月~1年未満 | 30日分 |
| 1年以上 | 50日分 |
▼ 例:日額6,000円、被保険者期間1年以上の場合
- 支給日数:50日
- 支給額:6,000円 × 約70% × 50日 = 約21万円
支給は原則一括払い。再就職が決まらなくても、支給日数に応じた給付を受け取れます。
「独立したいけど給付も欲しい」場合はどうする?
「すぐに独立するわけではないが、いずれ開業を考えている」という場合、まずはハローワークで求職の意思を示し、失業給付を受けた後に開業するという選択肢もあります。
さらに、失業手当の受給中に就職や開業をすると「再就職手当」が受けられる可能性も。
再就職手当の条件(一部抜粋):
- 支給残日数が3分の1以上ある
- 1年を超えて継続する見込みのある仕事・事業に就く
- 給付制限期間中の再就職でも条件を満たせば支給対象
残りの支給日数の60%(または70%)相当額が一括で支給されます。
まとめ:年齢と進路によって、受けられる給付は大きく違う
| 年齢 | 退職後の進路 | 給付の種類 | 支給の有無 | 支給額の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ~59歳 | 再就職希望 | 基本手当 | ○ | 90~150日分(最大) |
| ~59歳 | 独立開業 | 基本手当 | × | - |
| 65歳~ | 再就職希望 | 高年齢求職者給付金 | ○ | 30~50日分(上限) |
| 65歳~ | 独立開業 | 高年齢給付金対象外 | × | - |
※ 60歳以降65歳未満は、基本手当の上限日額・支給条件に若干の変更がありますが、基本的には60歳未満と同じく「基本手当」の対象です。
ポイントまとめ
- 60歳未満の場合は、「まず求職→給付→開業」の流れがベター
- 65歳以上は、給付日数が少ないため早期の再就職・開業判断が必要
- 制度は変更される可能性もあるため、退職前にハローワークへ相談が鉄則
「せっかく保険料を払ってきたのに、知らないままもらい損ねた…」ということがないように、制度の特徴を理解し、自分に合ったタイミングと方法で次の一歩を踏み出しましょう。
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