銀行査定で重視される財務指標をわかりやすく解説。
自己資本比率・流動比率・借入金返済年数など、中小企業が融資審査で注意すべき数字を整理しました。
はじめに
銀行融資を受ける際、必ず行われるのが『銀行査定』です。
その中でも一次評価(定量評価)は、決算書の数値を基に13種類の財務指標を点数化して行われ、プロパー融資や金利交渉に直結します。
本記事では、その評価項目と銀行が重視するポイントをわかりやすく整理しました。
<この記事でわかること>
- 銀行融資における一次評価(定量評価)の仕組み
- 13種類の財務指標の意味と採点基準
- 銀行が特に重視する指標(自己資本比率・債務償還年数・インタレストカバレッジレシオ)
- プロパー融資・金利交渉に直結する評価点の目安
- 自社の財務をどのように改善すれば銀行評価が上がるか
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銀行融資における一次評価(定量評価)
金融機関が行う企業の格付け評価は、評価は一次評価(定量評価)、二次評価(定性評価)、三次評価(潜在返済能力)の3段階に分かれています。
このうち一次評価は、企業の決算書(貸借対照表や損益計算書)の値を実態に合わせて数値を置き換え、そのデータを使って13種類の財務指標を点数化することで行われます。
以下、その13種類の指標を項目別に説明いたします。
なお、評価は換金価値や回収可能性を踏まえて組み換えた実質貸借対照表(実態貸借対照表)で計算します。
一次評価(定量評価)においては、
・55点以上がプロパー融資の入り口
・60点以上であれば、他の金融機関と競合させて金利を下げる、連帯保証を速やかに外す(付けない)
と判定されます。自社がどのレベルにいるのかを知ることは、銀行との交渉において非常に意義があることです。


安全性項目
その会社に融資をしても、安定して返済していける基盤があるのかを評価します。(34点/129点)
①自己資本比率(%)(10点)
(自己資本/総資産)×100
いかに資金の調達源泉が返済不要な自己資本(資本金や繰越利益等)で賄われているかを表す。30%以上であれば一定水準、60%以上であれば満点。逆に15%未満はゼロ点(加点なし)です。
②ギアリング比率(%)(10点)
(負債の部合計/自己資本)×100
自己資本に対する他人資本(負債の部合計)の比率を表す。他人資本が少ない方が安全性が高く、50%以上で満点。逆に250%以上になると、他人資本が多すぎと評価され、ゼロ点(加点なし)です。200%以内が一定の目安です。
③固定長期適合率(%)(7点)
固定資産/(固定負債+自己資本)×100
固定資産が安定した資金(借入金のうちすぐに返さなくてもよいものや、返済不要な自己資本)で賄われているかを評価します。小さい方がよく、100%以内が望ましい。80%以内が一定の目安です。
④流動比率(%)(7点)
(流動資産/流動負債)×100
短期の支払い能力を評価します。大きい方が資金繰りが安定しており、200%超が望ましい。140%以上が一定の目安です。
収益性項目
融資先の会社にどれだけの稼ぐ力があるのかを評価します。(15点/129点)
⑤売上高経常利益率(%)(5点)
(経常利益/売上高)×100
売上高に対する経常利益の比率を表し、支払い利息なども含めた経費全般をカバーしても高い比率を維持できていれば、評価は上がります。4%以上で満点、2%以上は欲しいところです。
⑥総資産経常利益率(%)(5点)
(経常利益/総資産)×100
企業の経営効率を見る指標で、総資産を使って効率よく経常利益を上げているのかを示します。3%以上で満点、1%以上は欲しいところです。
⑦当期利益の推移(収益フロー)(5点)
過去3期分の決算書で確認します。2期連続黒字でないと点数は付きません。
成長性項目
経常利益の増加率や売上規模等を評価します。(25点/129点)
⑧経常利益増加率(%)(5点)
{(当期経常利益-前期経常利益)/前期経常利益}×100
成長性を証明するために、厳しいですが、出来れば15%以上を目指したいところです。
⑨自己資本額(15点)
直近の決算書で確認します。1億円以上あった方が望ましいです。
⑩売上高(5点)
直近の決算書で確認します。1億円未満では加点されず、小規模な会社は加点は難しく、1億円以上あれば可です。売上高5億円以上になると、かなり大きめな会社と言えます。
返済(債務償還)能力項目
金融機関にとっては、貸したお金が返ってくることが融資の絶対条件です。
融資先の返済能力(償還能力)は一次評価で最もウエイトが高く設定されており、ここで稼ぎたいところです。(55点/129点)
⑪債務償還年数(20点)
{(短期借入金+長期借入金)ー(売掛金+棚卸資産ー買掛債務)}/(経常利益+減価償却費ー法人税等)
「売掛金+棚卸資産ー買掛債務」を「経常運転資金」と言います。
借入金の総額から、常時必要となる「経常運転資金」を引き、残ったものを返済原資となるフリーキャッシュフローで割ることで求めます。
債務償還年数が1年未満であれば満点の20点となります。
債務償還年数がマイナスの場合は、「短期借入金+長期借入金」がゼロ(つまり借入れがない)からということであれば20点、「売掛金+棚卸資産ー買掛債務」が大きい(つまり返済財源がない)からということであれば0点です。
同じマイナスという結果であっても、その原因により評点が異なります。
なお、債務償還年数は、銀行によって式が異なります。
短い方が評価が高く、中小企業の平均値は13年程度ですが、出来れば9年以内を目指したく、悪くても15年、20年超は厳しいと言えます。
業種にもよるところがあり、旅館業などは比較的長めです。
⑫インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)(15点)
事業利益※1 /金融費用※2
企業の借入金等の利息の支払能力をみる指標です。数値が高いほど財務的に余裕があると評価されます。3倍以上(4倍以内)が理想、満点は6倍超です。
※1 事業利益=営業利益+受取利息および受取配当+有価証券利息+持分法投資利益
※2 支払利息および割引料+社債利息
⑬償却前営業利益(EBITDA)(20点)
営業利益+減価償却費
本業の儲けである「営業利益」にキャッシュアウトを伴わない減価償却費を加えることで、利息の支払い能力を判定します。
融資の利息はここから捻出されるため、融資を受けられるかどうかにとっては重要な指標となります。
利息の支払いの方が大きければ、利息の支払いが滞ることを意味します。
小規模な会社は加点は難しく、1億円以下でも可です。
特に重視しているのはどこか
上記のうち着色が多いのは「自己資本」と「経常利益」ということが分かります。
そして、4つに分けた分類(安全性・収益性・成長性・返済能力)のうち、安全性と返済能力に配点ウエイトが高く設定されています。
このことから、金融機関の考え方は「貸しても倒産しない企業基盤があり、貸したお金を返済する力がある」ことを重視していることが分かります。
「自己資本」は安定した資金の源泉であり、債務超過(負債の方が資産よりも多い)の場合は自己資本はマイナスとなるため、多くの項目でゼロ点となります。
損益計算書の利益には4つの種類があります。
「売上総利益」は儲けの源泉、「営業利益」は本業の儲け、「経常利益」は総合的な実力、「当期純利益」は1年間の経営成果を表します。
このうちの総合的な実力を示す「経常利益」は最も重視されます。
「経常利益」は営業外費用である利息を支払った後に残る利益であり、利息を支払ってもまた余力があるということを表します。
逆に利息を支払う前の利益である「営業利益」がマイナスの場合は、金融機関は、この会社は利息の支払いがそもそも出来ないと評価するため、原則、融資は不可ということになります。
また「①自己資本比率(%)」、「⑪債務償還年数」、「⑫インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)」は、銀行にとっては特に重要であり、ここで加点を狙いたいところです。
銀行格付け判定シミュレーション
一次評価(定量評価)においては、
・55点以上がプロパー融資の入り口
・60点以上であれば、他の金融機関と競合させて金利を下げる、連帯保証を速やかに外す(付けない)
と判定されます。
自社がどのレベルにいるのかを知ることは、銀行との交渉において非常に意義があることです。
当事務所では、銀行格付け判定シミュレーションを行っております。詳しくはお問い合わせください。
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