こんにちは、本間です。
私は自分が苦境に立たされると、幽体離脱したかのごとく、苦境に立っている自分を上から見ている感覚になることがあります。
まるで第三者が自分を観察しているような、不思議な感覚です。
実はこの状態、心理学では「セルフ・ディスタンシング」と呼ばれています。
偶然の感覚に思えるかもしれませんが、研究でも効果が裏付けられており、経営者にとって大いに役立つ“心の技術”なのです。
セルフ・ディスタンシングとは何か
セルフ・ディスタンシングとは、自分の感情や出来事をあたかも第三者が体験しているかのように眺めることです。
感情と自分を切り離すことで、冷静な判断を可能にします。
スタンフォード大学やシカゴ大学の研究によれば、この手法を取り入れることでストレスが和らぎ、意思決定の質が向上することが示されています。
例えば「なぜ私はこんなに不安なのか?」ではなく、「なぜ彼は不安を感じているのだろう?」と考えるだけで、視点が変わり、冷静さを取り戻しやすくなるのです。
経営に役立つ3つの場面
経営の現場では、感情に流されない判断力が成果を大きく左右します。セルフ・ディスタンシングは特に次のような場面で力を発揮します。
1. 資金繰りの危機に直面したとき
入金遅れや売上減で資金ショートが迫ると、「もう終わりだ」と思考が止まりがちです。
しかし「もし他の経営者が同じ状況にあったら、どんな打ち手を考えるだろう?」と置き換えて考えると、支払いスケジュールの組み直しや追加融資の検討など、現実的な選択肢が見えてきます。
2. 社員や取引先との衝突
感情的に反応してしまうと関係はこじれ、経営に悪影響が及びます。こんなお悩みありませんか?
そんな時に「第三者がこの場面を見たらどう映るか」と考えると、相手の立場も理解でき、解決に向けた冷静な言葉を選べます。
3. 長期戦略の検討
日々の忙しさに追われていると、どうしても短期的な課題解決に偏ります。
あえて「数年後の自分が今を振り返ったらどう考えるか」と視点を変えることで、長期的な投資判断や組織づくりに目を向けられるようになります。
実践の3ステップ
セルフ・ディスタンシングは特別なスキルではなく、ちょっとした工夫で誰でも取り入れられます。
- 三人称で自分を語る
「私は失敗した」ではなく「彼は失敗した」と言い換える。シンプルですが、驚くほど効果があります。 - 紙に書き出す
頭の中だけで考えると感情に支配されやすいもの。紙に書くことで事実と感情を切り分けられます。 - 時間を置く
一晩寝かせたり、翌週に改めて見直すだけで、感情の熱が冷め、建設的なアイデアが出てきます。
まとめ
経営とは、感情と理性の綱引きの連続です。時には不安や怒りが経営判断を狂わせることもあります。
セルフ・ディスタンシングは、そんなときに「冷静な自分」を取り戻すための実践的な方法です。
苦境にあるときこそ、自分を上から眺めるように客観視してみる。
その習慣が、資金繰りの改善、人間関係の修復、そして長期的な成長戦略の構築に必ずつながっていきます。
経営者としての視座を高めるために、日常の中でぜひ試してみてください。
