~インフレ時代を生き抜く資産運用のヒント~
はじめに
こんにちは。中小企業の財務コンサルタントを専門とする行政書士・1級FP技能士・銀行融資診断士®の本間です。
県内某所で開催された「長期投資特別セミナー」に参加してきました。
著名な投資会社から3名の講師が登壇し、資料は配布されず、すべて口頭での解説というスタイル。
逆に生の言葉だからこそ、熱量や本音が伝わってきました。
今回はその内容を、一般の投資家目線で整理し直し、ブログ記事としてお伝えします。
なお、講師の発言を逐語的に引用したものではなく、私自身の理解を踏まえた再構成です。
「投資」から「運用」の時代へ
講師の方が最初に口にしたのは印象的な一言でした。
「これからは投資じゃない。運用の時代だ。」
日本ではNISA口座の開設者が2,700万人を突破し、成人の4人に1人がNISAを持つようになっています。
しかし実態は「なんとなくインデックスを買っている」人が多く、漠然とした不安を抱えたまま運用しているとのこと。
実際、日銀の政策変更に伴う「日銀ショック」では、多くの個人投資家が慌てて売却に走ったそうです。
ここにあるのは、「長期的に何を目指すのか」という意思の欠如。
これをどう補うかが今後の課題だと感じました。
インフレ時代の資産防衛は「株式」
セミナーでは「インフレは避けられない」という前提が何度も語られました。
タンス預金や銀行預金にお金を眠らせておくと、物価上昇によって実質的な価値が目減りします。
ではどう守るか。答えは「株式」。
- 株価は名目GDPに連動して上昇する
- 物価上昇分が株価に織り込まれる
- 債券よりも株式を持つことでインフレに対抗できる
特に「良い会社の株」を持つことが強調されました。
価値あるサービスや商品を提供できる企業は、需要があるため価格転嫁(値上げ)が可能です。
結果として物価上昇率を超える成長が期待できるのです。
Good Companyに投資するという考え方
講師陣が繰り返し口にしたのが「Good Company」という言葉でした。
いま注目を集める半導体やAI関連銘柄も、必ずしもGood Companyではない。
短期的に話題になっている企業が、10年後に存在する保証はありません。
Good Companyとは、
- 長期的に応援したいと思える会社
- 利益を生み出し続ける力を持つ会社
- 生活や社会に不可欠な価値を提供できる会社
投資で「もうけよう」とするのではなく、結果的に「もうかってしまう」状態が理想。
お金は後からついてくる、という姿勢が印象的でした。
プラチナNISAを巡る議論
質疑応答では「プラチナNISA」についての質問も出ました。
これは、2023年末から一部の政治家(旧宏池会系)を中心に検討された制度構想で、「毎月分配型投資信託もNISAで買えるようにしよう」という内容でした。
ただし、この案には講師陣も強く反対していました。
- 毎月分配型ファンドは、分配金を出すために運用資産を売却せざるを得ない
- いわば「タコ足配当」に近く、長期資産形成には不向き
- 外資系の商品が中心で「育てる投資」にはならない
実際、金融庁長官も「現行NISAの趣旨には合わない」と発言しており、導入には否定的な立場です。
つまり、プラチナNISAは「構想は出たものの、現状では実現性が低い制度」といえます。
セミナーでも「NISAは長期の資産形成のための制度。
毎月分配型を入れてしまうと本ているため、導入の可能性は低いとの見方が示されました。
投資の実践アドバイス
積立は良いが「何を買うか」が重要
毎月少額から積み立てること自体は素晴らしい。
しかし「今良いから」という理由だけで銘柄を選んではいけないとのこと。
Good Companyの見つけ方
- 生活に密着した企業に注目するのは良い視点
- 四季報やチャートは参考程度。未来は仮説を立てるしかない
- 資産が1億円に達するまでは3~4社に集中するのが理想
忍耐強く持ち続けることが、長期投資の神髄とされました。
インデックスファンドとの付き合い方
オールカントリーやS&P500に資金が集中していますが、これは「意思のない投資」だと講師は指摘しました。
- 中身が見えないので下落時に不安になりやすい
- 結果的に米国を応援することになる
- インデックスは「今大きい会社」を買うだけ
- 一方、アクティブ投資は「未来」を買いに行く
つまり、インデックスは「規模の大きい企業の現状を追う投資」であり、アクティブは「将来を見越して応援したい企業を選ぶ投資」。
セミナー全体で流れていた「銘柄を丁寧に見ていく」というトーンと一致する部分です。
金(GOLD)の位置づけ
金は「交換価値」や「夜逃げ資産」としては意味があるが、長期資産形成には不向き。
短期的な値動きで利益を取る商品である、とのことでした。
業態レベルでの投資対象の考え方
質疑応答の中で、参加者から個別銘柄名を挙げた質問もありました。
しかし講師陣はあえて個別名には踏み込まず、業態レベルで語るにとどめていました。
- エンターテインメント業界
モノ消費からコト消費へのシフトが進んでおり、長期的に成長が見込まれる。
- 農林水産業
世界的には需要が拡大する分野。
ただし、日本では経営力不足が課題。優れた経営があれば大きく伸びる可能性がある。
- 一般性・汎用性のある分野
社会全体に広く必要とされるサービスや商品を提供できるかどうかが、投資の大切な視点。
舞茸のようにニッチな需要では限界があるのでは、という問題提起もありました。
また、株主優待については「株価とは無関係で、外国人投資家から見れば単なる無駄なコストに過ぎず、むしろやめるべきだ、との見方になる。」とのコメントも。
日本独自の制度がグローバル投資家の視点からは評価されていない点も興味深い示唆でした。
まとめ:意思ある長期投資を
今回のセミナーで最も心に残ったのは、「長期的に応援できるGood Companyを選び、忍耐強く保有する」という言葉でした。
短期的な値動きに振り回されるのではなく、自分がどの業態や企業を信じて支援したいかを見極める。
その姿勢が「運用の時代」を生き抜く投資家に求められるものだと強く感じました。
参加しての私自身の学び
今回のセミナーを通じて、私自身が改めて感じたのは「数字やチャートに頼りすぎず、自分の目で企業を見極める重要性」です。
私は自身の経験からも「利益を生み出す力が本物かどうか」は決算書だけでは見えてこないというのは全くその通りだと思います。
実際にサービスや商品がどのように社会に受け入れられているか、経営者がどんな姿勢で事業に臨んでいるか──そうした現場感覚が不可欠だと思います。
セミナーで語られた「Good Companyを丁寧に見極める」という言葉は、私自身の仕事観とも重なりました。
👉 投資を始めたばかりの方も、すでに運用している方も、「今の流行」だけに惑わされず、自分の意思を持った資産形成を目指しましょう。
