社長に万一のことがあったら、家族はどんな相続手続きを踏むのか?
遺言や財産整理・事業承継など生前に準備すべきことと、相続発生後に家族が行う流れ(遺言確認・相続人確定・相続税申告)を詳しく解説します。
はじめに
こんにちは。中小企業の財務コンサルタントを専門とする行政書士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・銀行融資診断士®の本間です。
「自分にもしものことがあったら、妻や子どもはどうすればいいのだろう」
経営者であれば、一度はこんな不安を抱いたことがあるのではないでしょうか。
相続は人が亡くなった瞬間に必ず発生します。
残された家族は期限のある複雑な手続きに追われ、精神的にも肉体的にも大きな負担を背負います。
さらに、社長が経営者であれば会社の存続という課題も同時に浮上します。
従業員や取引先を守るためにも、生前の準備が欠かせません。
この記事では、生前に社長が準備しておくことと相続発生後に家族が行うことを時系列で整理して解説します。
生前に社長が準備しておくこと
【遺言を作成しておく】
遺言は家族を守る最も強力なツールです。
特に「公正証書遺言」や「法務局保管の自筆証書遺言」は法的効力が高く、後々のトラブルを防ぐことができます。
大切なのは、遺言を作ったら存在を必ず家族に伝えておくことです。
存在を知らせなければ、死後に見つからず無駄になります。ただし、内容を生前にどこまで伝えるかは家庭事情によります。
- 家族関係が良好なら内容まで共有し、理解を得やすい
- 相続人間で不公平感が出そうな場合は「公証役場に預けてある」とだけ伝える
これで「生前に揉める」ことを避けつつ、死後の円滑な相続につなげられます。
【財産を整理しておく】
プラス財産とマイナス財産を棚卸ししておくことも重要です。
- プラス財産:預貯金、不動産、株式、投資信託、退職金受取権利など
- マイナス財産:借入金、住宅ローン、未払税金、医療費など
これを「財産目録」にまとめておくと、家族が死後に慌てずに済みます。
また生命保険金や死亡退職金は法律上は遺産分割の対象外ですが、税法上は「みなし相続財産」として課税対象になる点にも注意しましょう。
【会社の事業承継を準備する】
経営者にとって最大のテーマは「会社をどう残すか」です。
事業承継対策を怠ると、家族だけでなく従業員や取引先も大きな混乱に巻き込まれます。
- 後継者の選定
親族か、役員・従業員か、あるいはM&Aか。早めに方向性を決めておきましょう。
- 自社株式の承継
中小企業の株式は社長個人が持つことが多く、株価が高いと相続税が重くのしかかります。生前贈与や信託などを活用しておくことが有効です。
- 金融機関との調整
社長の死は銀行にとって大きなリスクです。
借入金の個人保証や代表者交代への影響について、事前に銀行と話し合っておくと安心です。
- 事業承継計画の整備
遺言に会社の承継方法を明記する、あるいは「事業承継計画書」を作っておくと、家族・従業員・金融機関が安心して対応できます。
相続発生後に家族が行うこと(7つのステップ)
ここからは、相続開始後に残された家族が行う具体的な手続きを時系列で整理します。

➀遺言の有無を確認
遺言があればその内容に従います。自宅で発見された場合は、家庭裁判所で「検認」が必要です。

➁相続人の確定
戸籍を取り寄せ、誰が法定相続人かを確定します。
配偶者は常に相続人であり、第1順位は子、第2順位は直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。

➂相続財産の確定
プラスとマイナスを含めた財産目録を作成します。
ここで社長が生前に整理していれば、家族の負担は格段に軽減されます。

④相続するかしないかの決定(3か月以内)
「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つから選びます。借入金などマイナス財産が多い場合は相続放棄も有効です。

➄準確定申告(4か月以内)
亡くなった人の年の途中の所得を相続人が申告・納税します。

⑥遺産分割協議
遺言がなければ相続人全員で協議を行い、「遺産分割協議書」を作成します。
不動産登記や銀行手続きに必須です。

⑦相続税の申告・納付(10か月以内)
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例:妻と子2人 → 4,800万円まで非課税。課税がある場合は10か月以内に申告・納付します。

まとめ
相続は家族にとって避けられない現実であり、経営者にとっては会社の存続にも直結します。
- 生前に社長が準備しておくこと:遺言作成・財産整理・事業承継計画
- 相続発生後に家族が行うこと:遺言確認から相続税申告までの7ステップ
この二本柱を意識して備えることで、遺された妻や子ども、従業員を守り、会社の存続を確実にすることができます。
行政書士・司法書士・税理士といった専門家に相談すれば、期限に追われることなくスムーズに進められます。
早めに準備を始めることが何よりの安心につながります。
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