融資稟議書の仕組み
企業から融資の申込みを受けた銀行の担当者は、権限者の決済を受けるために準備を進めます。具体的には、書面の稟議書を作成し、それが支店内で回覧され、支店長もしくは本部で採否の決済を行い、金利、期間、融資額などが決まります。(支店長決済案件と、本部決済案件があります。)
支店長の決済権限額は、支店の格によって違います。
重要都市にある支店や名門支店なのか、小規模支店なのか大規模支店なのかにもよります。
また、企業毎に融資総額の枠を設けていて、すでに数本の融資を受けていて、追加で新規となった場合は、その枠の上限に達するまでが新規の上限となります。
つまり回毎で上限が設定されているわけではありません。
企業側としては、銀行の内情を把握した上で、稟議書が通りやすいように、銀行担当者に書面で情報の刷り込みを行うのです。
担当者が稟議書に書きやすいようお膳立てをすることで、事がスムーズに運びます。
稟議書の記載内容
稟議書には以下の要素が記載されることになります。
1.融資金額および条件(金利・融資期間等)
2.資金使途(資金の使い道)
3.返済財源(将来の事業収益など)
4.業績、財務内容、保全(担保・保証人)の要否
5.取引メリット(当行にとって融資をすることで得られるメリット)
担当者がこれらの要素を記載する必要があることを念頭に、書きやすくなるような資料を書面で提出します。
とくに業績や財務内容については、将来の業績改善などの見通しも合わせて書面で説明します。
逆に、担当者に対し「いくらまでなら借りられるのか」「借りられるだけ借りたい」と言ったとしても、担当者は困ってしまいます。
彼らは稟議書に上記の内容を書かなければ、上申出来ません。このような質問や一方的なお願いは、彼らの印象を悪くするだけです。
稟議書を書いてもらわなければ始まらない
稟議書を書くのは貴社と対面する担当者です。
担当者が「この企業には融資は出せないな」「信用出来ないな」「稟議書が書きにくいな」と思われては、事は始まりません。
「当然貸してくれるんでしょ」「若造のくせに生意気だ」などと斜に構えた態度では、彼らを動かすことは出来ないでしょう。
日頃から真摯に付き合い、決算書や経営計画、将来性を証明する書面などを提供し、「稟議書を書こう」と思わせなければなりません。
とは言え、銀行のご機嫌を取ったり、無理な定期保険や投資信託などを、銀行の言いなりで組まされたりすることとは違います。あくまで対等な中での良好な関係の構築です。
稟議書の回付ルート
融資の稟議書は、次のように回覧されます。
得意先係担当者 ⇒ 得意先係管理職 ⇒ 融資係担当者 ⇒ 融資係管理職 ⇒ 次長 ⇒ 支店長
本部決済の場合は、
・・・支店長 ⇒ 本部審査役 ⇒ 本部審査部長 (大型案件の場合は、その先本部役員)
これだけ多くの銀行員の目を通るので、担当者に熱く「口頭」で訴えても、若い担当者がその全てを稟議書に落とすことは無理でしょう。
無理に口頭だけで納得させたとしても、今後は担当者が内部で詰められるだけです。
したがって、「書面」で合理的にアピールする方がスムーズに事が進みます。
得意先係は営業が仕事なので、融資を通したいと考えます。
一方、融資係は、融資の貸倒れを出さないよう、リスク管理が仕事です。
得意先係が付いていない会社もあり、その場合は融資係が稟議書を起案します。
当然ながら保守的な起案内容になりがちなので、起案する担当者がどちらサイドなのかをさりげなくリサーチし、出来れば得意先係が稟議書を書くよう仕向けられればベターです。そのためにも、日頃から銀行と良い関係性を築くことは重要です。
支店長の経歴によって支店のスタンスが違ってくる
支店長の経歴が営業畑(得意先係)だったのか、融資畑(融資係)だったのかによって、支店の融資スタンスがガラッと変わります。
得意先係出身の支店長は、融資額の数字を上げることを重視し、前向きに融資に取り組む傾向にありますが、融資係出身の支店長は、貸倒れを起こさないよう、融資には堅実な立場になりがちです。
この差があることを念頭に、もし融資係出身の支店長が着任した場合は、なぜ当社に融資をするべきなのか、融資をしても貸倒れリスクは小さいと、納得させる材料を積極的に打ち込みましょう。
支店長がどちらの経歴の持ち主なのかは、担当者との対話の中でさりげなく聞いてみてもよいでしょう。
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