損益分岐点とは売上高と総費用が一致し、利益ゼロになる地点のこと。
固定費や変動費の違いを理解し、損益分岐点を山登りにたとえて直感的に解説します。
中小企業経営者が利益構造を把握し、改善へつなげる実務的な考え方を紹介します。
この記事でわかること
- 損益分岐点売上高の意味と計算方法
- 固定費と変動費の違いと具体例
- 変動費率が損益分岐点に与える影響
- 山登りにたとえた直感的な利益構造の理解法
- 損益分岐点を下げる実務的アプローチ
はじめに
「うちの会社、売上はそこそこあるのに、なぜか利益が残らないんだよな…」
ある社長が、決算書を前に首をかしげながらつぶやきました。
実は、この悩みの原因の多くは「損益分岐点」を理解していないことにあります。
損益分岐点を知ることは、会社経営における登山計画を立てるようなもの。
どのくらい登れば黒字になるのか、どこまでが赤字の領域なのか、その全体像がはっきりと見えるからです。
経営を山登りにたとえて考えると、固定費や変動費の意味も自然と腑に落ちます。
ここでは、その構造をわかりやすく解説していきます。
固定費と変動費 ― 山の地形を決めるもの
利益構造を理解する第一歩は、費用を「固定費」と「変動費」に分けることです。
- 固定費:売上に関係なく毎月必ずかかる費用。工場や事務所の家賃、正社員の給与、減価償却費などが典型例です。
- 変動費:売上に比例して増減する費用。仕入原価、外注加工費、販売手数料などが代表的です。
登山にたとえれば、固定費は「山の高さ」、変動費は「登り道の険しさ」を決める要素にあたります。
つまり、どれだけ売上を上げれば黒字に届くのかは、この2つのバランスで決まるのです。
損益分岐点売上高とは ― 山頂に届く地点
損益分岐点売上高とは、売上高と総費用(固定費+変動費)がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上高のことです。
この売上を超えれば黒字となり、下回れば赤字になります。
計算式は次のように表せます。
損益分岐点売上高=固定費 + 変動費(=売上高 × 変動費率)
損益分岐点売上高を X とすると、
X = 固定費 + X × 変動費率
→ X-X × 変動費率=固定費
→ (1-変動費率)× X =固定費
→ X = 固定費 ÷(1-変動費率)
∴ 損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)
この式によって、「売上のうち変動費を引いた残りで固定費をどのくらいカバーできるか」が一目でわかるようになります。
山登りに例えて考える
この仕組みを山登りに置き換えてみましょう。
- 固定費=山の高さ。大きければ大きいほど、登る距離が長くなる。
- 変動費率=登山道の傾斜。変動費率が高ければ傾斜が急で、登ってもなかなか前に進まない。変動費率が低ければ傾斜が緩やかで、歩を進めるごとに確実に前へ進める。
- 損益分岐点売上高=黒字に到達するための合目。ここを越えると利益が出始める。
つまり、経営者が直面する山は「高さ」と「傾斜」の組み合わせで決まります。
変動費率が高いと黒字化が難しい
実際に数字で見てみましょう。
- 固定費 1,000万円、変動費率 60% の場合
損益分岐点売上高=1,000÷(1-0.6)=2,500万円 - 固定費 1,000万円、変動費率 40% の場合
損益分岐点売上高=1,000÷(1-0.4)=1,667万円
同じ固定費でも、変動費率が高い会社はより高い売上を稼がないと黒字に届きません。
これはまさに「険しい山を必死に登っている」ような状況です。
損益分岐点を下げる方法
では、どうすれば山を登りやすくできるのでしょうか。考えられる方向性は2つです。
- 変動費率を下げる(傾斜を緩やかにする)
仕入先の交渉で原価を下げる、無駄な外注を減らす、効率的なサービス提供方法を導入する。 - 固定費を効率化する(山を低くする)
遊休資産を処分する、IT導入で事務コストを減らす、オフィスや設備を最適化する。
ただし注意点があります。
固定費を減らす取り組みが売上を作る力を失わせてしまうと、かえって利益が減るリスクがあります。
山を削りすぎて登山道ごと崩してしまっては本末転倒です。
まとめ
損益分岐点売上高は、会社が黒字になるための「登山ルート」を示す数字です。
- 固定費が高ければ山は高くなる。
- 変動費率が高ければ傾斜が急になり、黒字化までの距離が長くなる。
- 損益分岐点は 固定費÷(1-変動費率) で表される。
- 改善の方向性は「変動費率を下げる」「固定費を効率化する」の2つ。
山の高さを低くし、傾斜を緩やかにできれば、利益の山頂はぐっと近づきます。
こちらもぜひご覧ください👉 損益分岐点売上高について
👉 まずは自社の決算書から、固定費と変動費、そして変動費率を整理してみましょう。
損益分岐点を把握することが、経営改善の第一歩になります。
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