価格を出せば安心感を与えられる一方で、比較に巻き込まれて問い合わせが減るリスクも。
個人事業主や中小企業が価格を出すべきかどうかを判断する際の考え方を、実例を交えて解説します。
価格競争に振り回されない「戦略的な見せ方」のヒントを紹介。
この記事でわかること
- 中小企業が価格を安易に出すことのリスク
- 価格を出すときに考えるべき戦略的視点
- 「〇〇円~」表記が逆効果になる理由
- 言葉選びで差別化を図る方法
- 粘り強い発信が成果につながる理由
はじめに
社長をしていると、必ず一度は悩むテーマがあります。
それは「価格を出した方がいいのか、それとも出さない方がいいのか」ということです。
「値段を出さないと不親切に見えるかな?」
「でも出したら大手と比べられてしまうのでは?」
──このジレンマ、多くの経営者に共通する悩みです。
実は「価格の見せ方」ひとつで、問い合わせが増えることもあれば、逆にほとんど来なくなってしまうこともあります。
特に中小企業にとっては、安易に価格を公開すると「価格で比べられて終わり」になりかねないのです。
1. 価格を出すと比較される
価格は一番わかりやすい情報だからこそ、出した瞬間に「比較」の材料になってしまいます。
例えば、あるブリーダーは「子犬の販売価格○○万円」とホームページに明示しました。
このブリーダーは一匹一匹の個性を大切にし、健康や性格、しつけにまで愛情を込めて育てていました。
しかし、価格を見たお客様は「大型ペットショップの方が安い」と判断してしまい、相談すらしてこないケースが増えてしまったのです。
本来なら「安心して一生のパートナーを迎えられる」という大きな価値を提供していたにもかかわらず、価格を出したことで「値段」だけの勝負にされてしまった。
つまり、ライバルが価格を出しているからといって同じことを真似すれば、同じ土俵に引きずり込まれます。
価格を出すこと自体が悪いのではなく、出すなら“なぜ出すのか・どんな見せ方をするのか”を戦略的に考えることが欠かせないのです。
2. 絞り込みができれば「価格を消す」こともできる
サービスや商品の特性をしっかり絞り込めば、相場比較の土俵から外れることができます。
例えば、ある印刷会社は「名刺印刷」という広い分野では価格競争に巻き込まれていました。
しかし「高級和紙を使った名刺専門」と niche(ニッチ)に絞ったところ、価格を出さなくても「一度相談してみたい」という問い合わせが増えたのです。
「相場」があると価格勝負になりやすい。
逆に「ここにしかない」というポジションを築けば、価格を出さなくても選ばれるのです。
3. 「〇〇円~」の表示はもう古い
一昔前は「〇〇円~」と書くことで安心感を与えられることもありました。
しかし今では「安売り感」や「追加料金がかかりそう」という疑念につながりやすく、ブランドを築きたい中小企業にとっては逆効果になりがちです。
価格を目安に示すのではなく、その金額でどんな価値が得られるのかを伝えることの方が重要です。
4. 言葉選びでも差別化できる
価格を出さない場合、なおさら大事になるのが「言葉選び」です。
ある住宅会社は「安心のローコスト住宅」という表現を使っていましたが、大手の広告に埋もれてしまっていました。そこで「三条市で一番“家事が楽になる家”」と表現を変えたところ、問い合わせが増加。価格ではなく「暮らしやすさ」という価値に共感したお客様が集まったのです。
競合と同じ言葉を使えば埋もれますが、自社らしい言葉を磨けば、価格がなくても印象に残ります。
5. 最後は「粘り強さ」がものを言う
「人が商品やサービスを購入するまでには9か月、または7回の接触が必要」といわれます。
知り合いの飲食店経営者は、SNSでコツコツ情報を発信していました。
最初は反応が少なかったものの、続けているうちに「前から気になっていた」と来店するお客様が増え始めたのです。
つまり、価格を出すか出さないかよりも大切なのは、粘り強く発信し続け、接点を積み重ねることです。
まとめ
価格を出すことは一見「親切」に見えますが、中小企業にとっては比較に巻き込まれるリスクが高い行為でもあります。
だからこそ、「なぜ価格を出すのか」「どんな見せ方をするのか」を戦略的に考える必要があります。
大切なのは「価格で比べられる会社」から抜け出すこと。
そのために、サービスの絞り込み、言葉の工夫、そして粘り強い発信が欠かせません。
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