「もう十分働いたから、60歳でリタイヤしたい」…こんなご相談を受けることがあります。
60歳で退職した後にまず考えるべきは健康保険と介護保険。
任意継続と国民健康保険の違いや、65歳からの介護保険の切り替え、国民年金の任意加入のポイントをわかりやすく整理。
退職金や税金についても誤解のない範囲で触れます。
この記事でわかること
- 60歳退職後に加入する社会保険の種類
- 協会けんぽ・任意継続と国民健康保険の仕組み
- 65歳で変わる介護保険の扱い(第2号→第1号)
- 国民年金(任意加入)の位置づけ
- 税金(退職金・所得税・住民税)の最小限の注意点
はじめに
60歳で退職すると、それまで会社で加入していた厚生年金や健康保険を外れることになります。
退職後の生活に直結するのは、健康保険と介護保険。
この2つの選び方・切り替え方で、家計の負担が大きく変わります。
健康保険の選択肢:任意継続か国保か
協会けんぽ・任意継続の保険料計算
協会けんぽで任意継続を選んだ場合、保険料の基準は次の2つのうち低い方となります。
- 退職時の標準報酬月額
- 全被保険者の平均標準報酬月額(2025年度は32万円)
この額に健康保険料率と介護保険料率を掛けて算出します。
そのため、退職時の給与が高かった人でも「32万円」を基準に計算されるため、国民健康保険より任意継続の方が有利になるケースが多いのです。
国民健康保険
- 市区町村ごとに計算方式が異なり、前年所得・世帯人数・資産割などで保険料が決まる。
- 退職直後は前年所得が高いため負担が大きくなりやすい。
- 無収入期が続くと均等割だけとなり、軽くなる。
👉 退職直後は「任意継続」が有利になりやすく、62〜64歳の無収入期は「国保」が軽くなることが多い。
介護保険は65歳で徴収方法が変わる
- 40〜64歳は「第2号被保険者」として健康保険料に含まれて負担。
- 65歳からは「第1号被保険者」となり、健康保険から切り離され、市区町村が独自に介護保険料を徴収。
- 多くは公的年金からの天引き(特別徴収)。年額は所得段階に応じて数万円〜十数万円程度。
👉 「65歳から介護保険が新たに始まる」のではなく、負担の仕組みが変わるのが正確な理解です。
国民年金(老齢基礎年金)
- 60歳以降は加入義務なし。
- 将来の年金額を増やすために「任意加入」が可能。
- 未納期間や不足分を埋めたい場合に活用されるが、加入は家計とリターンのバランスを見て判断。
税金について軽く整理
- 退職金:退職所得控除が大きいため、多くの場合課税額は小さくなる。ただし金額・勤続年数次第では課税されるケースもある。
- 所得税・住民税:退職後は公的年金やその他収入に応じて発生。年金額が少なければ課税はごく軽い。
👉 本記事では詳細計算に踏み込みませんが、「退職金は控除で課税額が抑えられる」「年金収入が少なければ税負担も軽い」程度を押さえておけば十分です。
まとめ(60歳退職後・働かない場合)
- 健康保険:退職直後は任意継続が有利になりやすい。無収入期(62〜64歳)は国保が軽くなる傾向。
- 介護保険:40歳以上は既に負担しているが、65歳からは市区町村が別立てで徴収。
- 国民年金:加入義務なし。任意加入は増額メリットと家計の見合いで判断。
- 税金:退職金は控除で課税が小さくなる場合が多い。所得税・住民税は年金収入や控除の範囲によって軽くなる。
👉 退職後にまず考えるべきは「どの健康保険に入るか」「65歳までどうつなぐか」。これが社会保険設計の第一歩です。
ご相談ください
任意継続か国保か、65歳からの介護保険料はいくらか──。
退職後の社会保険料は、世帯の状況・年金受給のタイミングによって大きく変わります。
ご自身の退職時の収入や世帯状況に応じて、任意継続と国保のどちらが負担が軽くなるか、概算シミュレーションを一緒に確認してみませんか。
正式な手続きは各健康保険組合・市区町村にご確認いただく必要がありますが、生活設計を考える上での目安としてご活用いただけます。
お気軽にご相談ください。
