銀行員は業界の専門家ではありません。
それでも融資判断ができるのは、4つの視点を持って企業を見ているから。
本記事では銀行の着眼点を深掘り解説します。
この記事でわかること
- 銀行員が業界に詳しくなくても融資判断できる理由
- 銀行員が重視する「4つの俯瞰的視点」
- 実際に使われる比較指標や情報源
- 社長が説明を準備するための具体的な工夫
- 銀行交渉を有利に進めるポイント
はじめに
「銀行員はうちの業界を知らないくせに、どうして融資の可否を決められるのか?」
中小企業の社長がこうした疑問を持つのも無理はありません。
確かに、銀行員は自動車整備や建設業、金属加工といった現場の細かい事情には精通していません。
しかし、毎日多くの会社を相手にしながら、限られた時間で融資判断を行っています。
ではなぜ、銀行員は「業界の素人」でありながら融資判断を下せるのでしょうか?
その答えは、彼らが持つ 俯瞰的な4つの視点 にあります。
1. マクロ環境・業界動向の把握
銀行員はまず「業界全体がどちらに向かっているか」を大づかみに把握します。
参考にする情報源
- 金融庁が公表する「業種別財務指標」
- 信用保証協会の業種別動向レポート
- 帝国データバンクや東京商工リサーチの倒産動向
- 日経新聞や地元経済紙の業界記事
これらを通じて、「今の業界は上り坂か下り坂か」 をつかみます。
具体例
- 建設業:公共投資や人手不足の影響
- 自動車整備業:EV化・車検需要の変化
- 金属加工業:原材料価格や海外需要の影響
社長がこれらの流れを整理し、「その中で自社はどう戦うか」を語れれば、銀行員は強い安心感を持ちます。
2. 同業他社との比較
銀行員は「同業平均との比較」を重視します。
これは業界を知らなくても判断できるため、非常に有効な手法です。
比較される主な指標
- 売上総利益率(粗利率)
業界平均より低いと「価格競争に巻き込まれている」と疑われる。
- 債務償還年数
10年を超えると「借入負担が重い」と判断される。
- 自己資本比率
10%未満なら「財務基盤が弱い」と見なされる。
銀行員は数字そのものの高さ低さではなく、「業界の水準に比べてどうか」を軸にします。
経営者が備えるべきこと
- 自社の決算数値を同業平均と比較した資料を準備する
- 不利な数字があれば、改善策や理由を説明できるようにする
3. ビジネスモデルの持続可能性
銀行員は技術の専門家ではありません。だからこそ、ビジネスモデルの「シンプルさ」を求めます。
銀行員が確認したいポイント
- 誰に売っているのか(顧客層)
- 何を提供しているのか(商品・サービス)
- どうやって売っているのか(販売チャネル)
- どのくらい利益が残るのか(収益構造)
これらが一言で説明できれば、銀行員は納得しやすくなります。
逆に「専門用語ばかりで理解できない」となると、将来性が不透明だと評価される危険があります。
4. 経営者の姿勢・説明力
最終的には、社長本人の信頼感 が融資の可否を大きく左右します。
銀行員は毎日、多数の社長と面談しています。その経験から、次のような姿勢を敏感に見ています。
- 数字に基づいて話せるか
- 課題を正直に語り、解決策を示せるか
- 将来の方向性を一貫して説明できるか
ここで大切なのは、「夢物語」ではなく「数字で裏づけられた現実的な説明」です。
銀行員に刺さる「説明のフレームワーク」
では、実際にどのように説明すれば良いのでしょうか。以下の3ステップを意識すると効果的です。
- 数字で語る
試算表・決算書を根拠に、利益率や返済能力を説明する。
- 業界の流れを踏まえる
「市場は縮小傾向だが、自社はこうした差別化で受注を確保できる」といった整理。
- 経営者の言葉で将来を語る
「5年後には売上を○億円に」「雇用を○人増やす」など、具体的なビジョンを示す。
この流れを押さえると、銀行員は「納得できる説明だ」と感じ、融資判断にプラスになります。
まとめ
銀行員は業界の専門家ではありません。それでも融資判断ができるのは、次の4つの視点を持っているからです。
- マクロ環境・業界動向の把握
- 同業他社との比較
- ビジネスモデルの持続可能性
- 経営者の姿勢・説明力
経営者がこれらを理解し、数字と業界の現実を踏まえて自社を語れるようにすれば、銀行からの信頼を大きく高めることができます。
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