「試算表が遅い」「銀行に提出を求められると慌てる」――そんな悩みを解決するのが「月次試算表の仕組みづくり」です。
単なる会計ソフト導入ではなく、業務フロー全体を整え、翌月20日までに試算表を完成させる方法を解説します。
この記事でわかること
- 「月次試算表の仕組みづくり」とは何か
- 翌月20日までに試算表を仕上げる意味とメリット
- 仕組みづくりの具体的ステップ
- 業種ごとの注意点と失敗しがちなポイント
- 社長が試算表を活用して意思決定に使う方法
はじめに
「銀行から試算表を求められたが、2か月前のものしかない」
「会計事務所から出てくるのが翌月末、実際の経営判断には遅すぎる」
多くの中小企業がこうした悩みを抱えています。
しかし、銀行は「直近の数字」が欲しいのです。
業績の良し悪しよりも、数字をタイムリーに出せる体制があるかどうかを重視します。
これは融資の信頼性に直結します。
では、どうすれば翌月20日までに試算表を仕上げられるのか?
答えは 「月次試算表の仕組みづくり」 にあります。
月次試算表の仕組みづくりとは?
単に会計ソフトを導入することではありません。
「20日までに試算表が当たり前に出る」状態を会社の文化として根付かせる、業務フロー全体の仕組み化です。
これを言い換えるなら、経営者にとっては 「数字をタイムリーに見える化するための体制づくり」 です。
ステップ1:会計入力を“自動化”する
クラウド会計ソフトの導入は第一歩です。
- freee会計
- マネーフォワードクラウド会計
- 弥生会計オンライン
これらは中小企業でもごく普通に使われています。
100人規模でも十分対応可能で、むしろERPのような大規模システムより運用しやすいケースが多いです。
具体的な取り組み:
- 銀行口座・クレジットカード・POSレジ・ECサイトと連携し、仕訳データを自動取り込み
- 勘定科目の自動仕訳ルールを設定し、入力作業を削減
- 人手による入力を減らし、経理担当は確認・分析に注力
👉 ポイントは 「人手で打ち込む作業を徹底的に減らす」。
ステップ2:証憑(領収書・請求書)の“整理ルール”を決める
証憑の整理が遅れると、いくら会計ソフトがあっても試算表は完成しません。
- 領収書は紙で保管せず、スマホで撮影しクラウドへ即アップ
- 請求書は月末締めでPDF化、担当者が期日までにアップロード
- 経理担当者が 月初3営業日までにすべて処理
👉 「社長がまとめて持ってくる」方式は遅れの原因。ルールで自動的に集まる仕組みが必要です。
ステップ3:締め日の設定と“逆算カレンダー”
試算表の遅れは、「締め日があいまい」なことが原因です。
会社として「毎月○日までに前月を締める」と決め、全員で守ります。
例:
- 月初5営業日まで:証憑入力を完了
- 月初10日まで:経理担当が確認・修正
- 月初15日まで:会計事務所と共有
- 月初20日まで:月次試算表完成
👉 逆算スケジュールを明文化することで、文化として根付くのです。
ステップ4:業種別の注意点
試算表を早く出すには業種特性に合わせた工夫が必要です。
- 製造業・建設業:仕掛品や工事未収入金を簡便法で月次計上
- 小売業:在庫棚卸を月次(最低でも四半期)で実施
- サービス業:売上計上基準(完了基準/継続基準)を明確化
👉 完璧でなくても「おおむね正しい数字を20日までに出す」ことが重要。
ステップ5:社長が活用する“場”をつくる
試算表を作って終わりでは意味がありません。
- 経営会議や役員ミーティングで毎月共有
- 売上・粗利・資金繰りを確認する習慣をつくる
- 「数字に基づく意思決定」を文化にする
👉 社長自身が数字を見る習慣を持つことが最大の仕組み維持策です。
ありがちな失敗例
- 領収書をまとめて持ってくるのが月末近く
- 在庫や仕掛品を年に1回しか棚卸しせず、月次数字が出ない
- 会計事務所に丸投げして「来月末にまとめて出ます」と言われる
👉 これでは数字は「後追い」でしかなく、経営の羅針盤にはなりません。
翌月20日体制がもたらす効果
- 銀行からの信頼性アップ:「数字を出すのが早い会社=管理が行き届いている」と評価される
- 経営判断のスピード化:採用・投資・資金調達の判断が遅れない
- 社内文化の変化:社員が「数字で語る」習慣を持つようになる
最終的に「経理の仕組み=会社の信頼力」になります。
まとめ
「月次試算表の仕組みづくり」とは、
- 会計入力の自動化
- 証憑の整理ルール
- 締め日と逆算カレンダー
- 業種ごとの月次処理方法
- 数字を活用する会議体制
を整えることです。
これらが揃えば、翌月20日に試算表が出るのは当たり前となり、銀行や取引先からの信頼が格段に高まります。
✅ 行動の第一歩
「試算表がいつも遅れる」と感じるなら、まずは証憑整理ルールから着手してみましょう。
そこから仕組みは一気に回り始めます。
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作った試算表をもとに、さらにキャッシュフローまで把握出来れば、会社の「見える化」は相当高まります。
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