銀行融資の審査で差がつくのは「事業計画書の中身」。
この記事では、中小企業の社長が融資申込時に押さえるべき8つの視点を、実際のチェックリストと具体事例をもとに詳しく解説。
金融機関に信頼される計画書の作り方がわかります。
はじめに
「数字は税理士に任せている」「毎回“とりあえず”で申請している」──そんな社長ほど、融資で苦戦します。
銀行が見ているのは決算書そのものではなく、社長の説明力。
ある金属加工業の社長(年商3億円)は黒字にもかかわらず融資を断られました。
理由は、「なぜ今、いくら、何のために必要なのか」を説明できなかったからです。
この記事では、銀行が実際に確認する「融資申込時の事業計画書チェックリスト」8項目をもとに、審査を突破するための実践的な書き方を解説します。
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1. 現在の経営状況|数字で語る「今」
融資審査の出発点は、社長が自社をどれだけ数字で説明できるか。
「売上が減ってきた」「忙しいけど利益が出ていない」といった感覚的な説明は通用しません。
銀行が知りたいのは、どの数字が、なぜ動いたのかです。
チェックポイント:
- 試算表・決算書をもとに足元の業績を説明できるか
- 自社の課題や強み、今後の方向性を具体的に話せるか
事例:
部品製造業A社では、「主要取引先の発注減により売上が前年比90%。
一方で粗利率は改善。
B社向けの新製品で利益率を維持できています」と説明。
数字+要因+対応策の3点を整理することで、銀行の信頼度が格段に上がりました。
2. 融資背景|「なぜ今、資金が必要か」を明確に
銀行が最も注目するのは「融資の目的」です。
融資は“赤字補填”ではなく、“成長投資”であることを伝える必要があります。
チェックポイント:
- 融資の目的が明確か(設備更新・販路拡大・運転資金など)
- 投資効果や必要性を説明できるか(生産能力向上、納期短縮など)
事例:
切削加工業B社は、「新しいマシニングセンタ導入で月産能力を1.5倍にし、既存顧客からの追加受注1,000万円を確定済み」と説明。
このように「結果につながる資金活用」を示すと、融資の説得力が増します。
3. 融資希望条件|「いくら・どの期間で」を論理的に
融資金額や返済期間には“根拠”が必要です。
「できるだけ多く借りたい」ではなく、必要額と期間の理由を示すことが信頼を生みます。
チェックポイント:
- 借入金額の算出根拠(見積書・資金繰り表)があるか
- 設備資金は耐用年数に見合う期間設定になっているか
- 自己資金とのバランスが取れているか
事例:
機械設備費1,800万円に対し、自己資金300万円・借入1,500万円を7年返済で申請。
耐用年数10年との整合性を説明し、計画性が評価されました。
4. 資金使途|「お金の流れ」を正確に説明
銀行が最も嫌うのが“資金使途の不明確さ”です。
「何に使うか」だけでなく、「誰に・いつ・どう支払うか」まで説明できることが大切です。
チェックポイント:
- 借入金の使い道を具体的に説明できるか
- 見積書・契約書・請求書で裏づけできるか
- 支払方法(振込・手形・クレカなど)が明確か
事例:
「○○機械への支払は納入時50%・据付完了時50%、全額銀行振込」と支払計画を添付。
資金の流れを明確化したことで審査がスムーズに進みました。
5. 返済財源(返済余力)|キャッシュフローで語る
銀行が重視するのは「返せるか」。
黒字でもキャッシュが足りなければ、返済は滞ります。
利益+減価償却費+運転資金変動=返済原資を説明することが必須です。
チェックポイント:
- 営業キャッシュフローをもとに返済可能性を示せるか
- 返済期間中に資金繰りが崩れない見通しか
- 既存借入との重複返済を考慮しているか
事例:
営業キャッシュフロー年間1,200万円、返済額900万円と説明。
担当者から「返済余力が明確」と高評価を得ました。
6. 今後の経営計画|「どう伸ばすか」を描く
融資は未来への信用。
銀行は、「この会社が今後どのように売上・利益を伸ばしていくか」を知りたがります。
チェックポイント:
- 今後の取組みをスケジュールで説明できるか
- 成長の軸(新分野・新市場・新商品)が明確か
- 実現可能な行動計画になっているか
事例:
製造業C社は「既存技術を活かし医療機器分野に参入。
展示会出展を通じ新規顧客2社獲得を目指す」と明言。
明確な戦略とスケジュールが評価され、融資実行につながりました。
7. 損益計画|「根拠ある数字」で信頼を得る
損益計画は、希望的観測ではなく、根拠に基づく数字でなければなりません。
銀行は、前年比や市場動向との整合性をチェックします。
チェックポイント:
- 売上・原価・経費の根拠を説明できるか
- 前年実績との乖離に理由があるか
- 経費増減(人件費・仕入・広告費など)に妥当性があるか
事例:
「前年度比110%の売上を見込むが、主要顧客からの発注見込みが120%と確定済み」と説明。
数字に裏付けがあることで計画が現実的と判断されました。
8. 資金繰り計画|「お金を回す力」を見せる
最後のチェックは資金繰り。
黒字倒産を防ぐには、入出金のタイミング管理が欠かせません。
チェックポイント:
- 月次の入金・支払スケジュールを把握しているか
- 借入後の残高見通しを立てているか
- 税金・返済・投資を織り込んだ資金計画になっているか
事例:
製造業D社は、借入後も月末残高200万円を維持する資金繰り表を提出。
「数字で管理している」姿勢が評価され、追加融資も実現しました。
まとめ|事業計画書は「借りるため」ではなく「語るため」
銀行融資の審査で問われるのは、“計画書の見栄え”ではなく“社長の説明力”です。
この8つの視点を押さえれば、金融機関との面談で「数字で語れる経営者」として信頼を得られます。
事業計画書は、融資を取るための書類ではなく、自社の未来を見える化するツール。
銀行に説明できる計画は、そのまま「強い経営」の証です。
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