忙しい社長でも10分で自社の健康状態をつかめる!
「純資産」「簡易CF」「借入月商倍率」など、専門用語をやさしく解説しながら、決算書の見方を具体例で紹介。
銀行面談や経営判断の前に読んでおきたい実践ガイド。
はじめに
「決算書って難しそう」「どこを見れば会社の状態が分かるの?」そんな声をよく聞きます。
でも、経営者が見るべきポイントはほんの数か所。10分あれば、自社の“健康診断”は十分可能です。
この記事では、会計に苦手意識がある社長でも理解できるように、決算書の8つのチェックポイントを具体例付きで紹介します。
① 売上高と営業利益、そして「簡易CF」を見る(P/L)
まず最初に確認すべきは「どれだけ稼いでいるか」。
損益計算書(P/L)の冒頭にある売上高と営業利益を見ます。
- 売上高…会社の事業規模
- 営業利益…本業で稼いだ実力
例えば、売上1億円・営業利益500万円なら営業利益率は5%。
製造業ならおおむね3〜8%が平均的です。
さらに“現金を稼ぐ力”を見るために、次の式で簡易CF(キャッシュフロー)を出します。
簡易CF=経常利益+減価償却費−法人税等
たとえば、経常利益500万円、減価償却費300万円、法人税100万円なら、
簡易CF=700万円。
この金額が、借入返済をまかなえるかどうかを確認します。
理想は「年間返済額<簡易CF」。
逆に「年間返済額>簡易CF」なら、返済に追われる資金繰りリスクが出てきます。
② 純資産と現預金を見る(B/S)
次に貸借対照表(B/S)を開きましょう。
ここで見るのは「会社の体力」です。
- 純資産=資産−負債。会社の“自己資金”のようなもの。
- 現預金=いざという時の“命綱”。
例えば、総資産8,000万円、負債5,000万円なら、純資産は3,000万円。
つまり「会社が倒産しても3,000万円は自分の財産として残る」状態です。
純資産が年々増えていれば黒字経営が続いている証拠。
一方、利益が出ているのに現預金が減っている場合は、在庫や売掛金に資金が滞留しているサインです。
③ 借入の重さを測る「借入月商倍率」(B/S)
会社の借入が適正かどうかは、「借入月商倍率」で判断します。
借入月商倍率 = 長期借入金 ÷ 平均月商
例えば、月商1,000万円・長期借入金4,000万円なら倍率は4か月。
目安は次の通りです:
- ◎ 3か月以下:健全(借入は軽め)
- △ 3〜6か月:やや重め
- × 6か月以上:返済負担が大きい
この数字は銀行が融資判断で必ず見るポイント。
業績が伸びても、借入月商倍率が6か月を超えていると、「借りすぎ」と判断される可能性があります。
④ 3期分の売上・利益・役員報酬の推移を見る(P/L)
単年度だけで判断してはいけません。
3期分を並べて“流れ”を見ることで、経営の安定性が分かります。
- 売上が右肩上がり → 事業拡大期
- 売上横ばい+利益改善 → コスト削減が進んでいる
- 利益減少+役員報酬増加 → 経営の引き締め余地あり
例えば、
| 期 | 売上高 | 営業利益 | 役員報酬 |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 9,000万円 | 300万円 | 600万円 |
| 第2期 | 1億円 | 500万円 | 700万円 |
| 第3期 | 1.1億円 | 200万円 | 800万円 |
この場合、売上は増えているのに利益率が低下。報酬を抑えてでも利益を戻す対策が必要です。
⑤ キャッシュの推移を見る(B/S)
過去3期分の現預金残高を並べると、資金繰りの傾向が見えます。
利益が出ていても、キャッシュが減っている場合は注意。
設備投資や在庫の増加で資金が固定化している可能性があります。
逆に、利益が少なくてもキャッシュが増えている会社は、在庫圧縮や回収改善など“経営の地力”が高いといえます。
⑥ 簡易CFから返済額を引いて「予測キャッシュ増減」を算出(B/S・P/L)
次に、実際の返済負担を踏まえて資金の動きを予測します。
予測キャッシュ増減 = 簡易CF − 年間返済額
例:
簡易CF 800万円 − 返済額600万円 = +200万円(余裕あり)
簡易CF 600万円 − 返済額900万円 = ▲300万円(資金減少傾向)
この数字を見るだけで、来期に“息切れ”しそうかどうかが分かります。
⑦ 手元キャッシュの「寿命」を測る(B/S)
「あと何か月、今の資金で会社が持つか?」を計算します。
手元キャッシュ ÷ 毎月のキャッシュ減少額
例:現預金2,000万円・毎月の支出が300万円 → 約6.6か月分。
半年以内に資金が尽きる計算なら、早めの追加融資やコスト見直しが必要です。
⑧ 資産・負債の中身を見る(B/S明細)
最後に、数字の裏側をチェックします。
- 売掛金:古い未回収がないか
- 在庫:長期滞留や陳腐化していないか
- 借入金:金利や返済期間がバランスしているか
数字の「額」だけでなく、「質」を見ることが経営分析の本質です。
まとめ:10分でわかる“会社の健康診断”
| チェック項目 | 見る目的 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 売上・営業利益・簡易CF | 稼ぐ力 | 利益率・返済余力 |
| 純資産・現預金 | 体力 | 内部留保・流動性 |
| 借入月商倍率 | 借入の重さ | 3か月以下が理想 |
| 3期比較 | 傾向把握 | 利益と報酬の関係 |
| キャッシュ推移 | 資金繰り | 増減の要因を分析 |
| キャッシュ寿命 | 持久力 | 半年以上が安全圏 |
おわりに
決算書を10分で読むコツは、「完璧に理解しようとしない」こと。
数字の意味をざっくりつかみ、会社の“体温”を感じ取ることが大切です。
この習慣をつけるだけで、銀行交渉でも冷静に話ができるようになります。
あなたの会社の決算書、いま改めて10分だけ眺めてみませんか?
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