はじめに
資金繰りの安定化は、企業経営において常に最優先で取り組むべき課題となります。
その基盤を支えるのが、金融機関との強固な信頼関係です。
いざという時にスムーズな支援を引き出すためには、日頃からの継続的なコミュニケーションが欠かせません。
銀行と良好な関係を築くためには、単に足元の業績が良いだけでは不十分であり、
相手の立場や金融機関特有の事情を理解した上での綿密な「設計」が必要となります。
本記事では、意外と見落としがちな訪問タイミングの重要性をはじめ、
金融機関との対話において経営者が持つべき基本的なスタンスや、担当者が稟議書を作成しやすくなる情報開示の工夫について解説します。
円滑な資金調達を実現するための具体的な行動へと繋げてください。
この記事で分かること
- 表敬訪問や相談に適したタイミングと配慮の工夫
- 銀行担当者の事情を理解した信頼関係の基本姿勢
- 担当者が稟議書を書きやすくなる資料提供のポイント
訪問タイミングへの配慮と混雑回避
金融機関との関係性を深めるための欠かせない要素として考慮すべきことは、表敬訪問や相談を行う際のタイミングへの配慮です。
金融機関の窓口や担当部署は、いつでも同じように対応できるわけではなく、特定の日に業務が極端に集中する傾向があります。
例えば、毎月5日や10日といった5の倍数の日は「五十日(ごとうび)」と呼ばれます。
多くの企業で支払いや決済取引、給与振込などが集中するため、店内が非常に混雑しやすい日です。
さらに、月末や給与支給日・支払日となることが多い毎月25日、決算期が重なる半期末なども同様に、
窓口や裏方の事務処理を行う担当者が多忙を極める時期となります。
昨今は銀行の合併や支店統合が急速に進んでおり、一つの店舗に来店客や処理すべき案件が集中しやすい環境が定着しています。
このような状況下で、五十日や月末にわざわざ訪問を設定することは、相手の時間を奪い、通常業務の妨げになりかねません。
双方が落ち着いて自社の現状や将来について深い対話ができる時間を確保するためには、
繁忙期を意図的に避けた日程を設計することが、相手側の事情に対する最低限の配慮となります。
こうした細かな心遣いが、結果として有意義なコミュニケーションを実現し、信頼関係を構築する強固な土台となります。
相手の視点を理解した関係の設計
訪問のタイミングに配慮した上で、次に求められるのは、双方が納得できる論理的なコミュニケーションの設計です。
ここで着目すべきは、窓口となり実際に融資の稟議書を書く担当者の立場です。
融資の申し込みを受け、ヒアリングを行い、稟議書を作成して支店長や本部といった組織の上層部へ回していくのは、たいていの場合、若手の平社員です。
彼らは支店内で営業を担う係であり、融資を実行してこそ銀行内での人事評価が上がるため、本音では審査を通したいと考えています。
決して企業の要望を拒絶したいわけではありません。
しかし、経験が浅い担当者の場合、審査を通すために企業からどのような情報を聞き出せばよいか、業界特有の事情などを把握しきれていないことも少なくありません。
自社のビジネスモデルや業界の常識が、必ずしも銀行員に通用するとは限らないのです。
金融機関の業務構造と担当者の立場を理解し、相手に寄り添ったアプローチをとることが、対等で健全なパートナーシップを築くことへと繋がります。
稟議書作成を支援する主体的な情報提供
銀行の担当者に決裁者を納得させる稟議書を書いてもらうためには、企業側から判断材料を豊富に提供することが重要です。
年に一度の決算書を提出するだけでは不十分であり、日々の業績推移や将来の見通しを自発的に開示する仕組みの設計が求められます。
経験の少ない銀行員が稟議書をスムーズに作成できるよう、
あらかじめ必要な情報を文章にまとめ、書面で提供する配慮が極めて効果的です。
具体的には、以下の観点を整理して伝えます。
- 今後5年間の年次の損益計算書の予測など、中長期的な売上や利益の見込み
- 主力となる商品やサービスの市場動向、同業他社や業界全体を取り巻くトレンド
- 外注費や仕入価格の変動に対する対策、無駄な経費を使わないための管理体制や削減状況
- 今後の具体的な設備投資計画と、それによってもたらされる費用対効果
口頭で伝えるだけでなく、担当者がそのまま稟議書に転記できるような形で資料化しておくことがポイントです。
また、業績が好調な時だけでなく、
一時的な売上の減少や突発的なトラブルなどの懸念事項が生じた際にも、早い段階で事実を伝えることが不可欠です。
ネガティブな情報ほど速やかに共有し、それに対する改善策や今後の見通しをセットで提示することで、
担当者は社内での説明が格段にしやすくなります。
相手の作業負担を極力減らし、審査を通しやすい環境を整えてあげることが、結果として自社の資金調達をスムーズにする最善の策となります。
効率化が進む銀行事情と「媚びない」主体的な姿勢
銀行の統廃合や業務効率化により、
銀行側が個別企業にきめ細かく向き合う物理的な時間や余裕は減少傾向にあります。
そのため、企業側から主体的に情報開示を行い、コミュニケーションの機会を設ける重要性は
以前より増しています。
しかし、銀行に媚びる必要は全くありません。
銀行との関係は、資金の貸し手と借り手という対等なビジネスパートナーです。
ここで求められるアプローチは、相手の顔色を伺うことではなく、
銀行の業務構造や担当者の立場を理解し、双方が円滑に取引を進められるよう関係性を設計することです。
事実に基づく透明性の高い情報提供とビジネスとしての配慮を毅然とした態度で行うことが、
結果として最も強固な信頼関係の構築に繋がります。
まとめ
金融機関との良好な関係は、一朝一夕に完成するものではありません。
銀行の効率化が進む現状を理解し、
対等なビジネスパートナーとして媚びることなく主体的に情報開示を行うことが求められます。
業務状況に配慮した訪問スケジュールを設計し、
担当者が稟議書を作成しやすいよう先回りして情報を書面で提供するなど、
細やかな行動の積み重ねが重要となります。
経営者として、相手への配慮と自社の状況を正しく論理的に伝える努力を両立させることが、企業の未来を支える強固な財務基盤の構築に直結していきます。
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