この記事でわかること
- 利益と現金がズレる構造的な理由
- 自社が危険かどうかを判断する具体的な基準
- 資金繰り予定表を経営判断に使う方法
はじめに
損益計算書では利益が出ている。それなのに、通帳の残高は増えない。
このような違和感は、多くの企業で実際に起きている現象です。
利益と現金は別物。これは皆さんも理解されていると思います。
ですが、このズレを放置すると、黒字のまま資金が尽きる黒字倒産に直結します。
問題は儲かっているかどうかではなく、現金が回っているかどうかです。
資金繰りの危険信号を見極める基準
まず最初に、自社が安全なのか危険なのかを確認してください。
◆ 具体的な確認手順
では、実際にどのように確認すればよいのでしょうか。次の3つの数字を決算書から拾ってください。
- 税引後利益(損益計算書の最終利益)
- 減価償却費(販売費及び一般管理費または製造原価内)
- 年間の元本返済額(借入金返済予定表または試算表)
そして、「税引後利益+減価償却費」よりも「元本返済額」が大きくなっていないかを確認します。
もしこの関係が成り立っている場合、会社は利益ではなく、手元資金を削って返済している状態です。
この状態は一時的なものではなく、構造的な問題です。
放置すれば、いずれ確実に資金ショートに至ります。
あわせて、単年度だけでなく直近3期で継続していないかも確認してください。継続している場合、問題はより深刻です。
この状態は金融機関からも「返済余力に課題がある」と評価され、追加融資のハードルが上がる要因になります。
売上が伸びるほど資金が苦しくなる理由
直感に反しますが、売上が伸びている会社ほど資金繰りは厳しくなります。
売上が伸びた直後に資金ショートする会社は珍しくありません。
仕入や外注費、人件費の支払いが先に発生し、売上の入金が後から来るためです。
売上が増えるほど先行支出も増えるため、通帳の残高はむしろ急激に減少します。
なぜこのズレは必ず発生するのか
利益と現金のズレは、偶然ではなく構造的に発生します。
利益は発生主義で計算されますが、資金繰りは現金主義で動いているためです。
例えば、売上が計上された時点では利益は増えますが、入金されていなければ現金は1円も増えていません。
一方で、仕入や外注費は支払時点で現金が減少します。
この発生と現金のズレが積み重なることで、利益が出ているのに現金が不足するという現象が起きます。
これが黒字倒産の正体です。順調に見える時期が、最も危険なタイミングです。
資金繰り予定表で未来の現金を見える化する
この問題を解決するのが資金繰り予定表です。
ポイントは、損益ではなく現金の動きで管理することです。
◆ 資金繰り予定表の基本フォーマット
資金繰り予定表は、シンプルに次の形で作成します。
- 前月繰越残高
- 当月入金(売上入金・借入など)
- 当月支出(仕入・人件費・経費・返済)
- 翌月繰越残高
この繰越残高を月ごとに並べることで、資金の推移が一目で把握できるようになります。
重要なのは、利益ではなく残高の推移を見ることです。
この形で月次の現金残高を並べると、どの月に資金が底を打つかが明確になります。
◆ 半年先から逆算して打つべき手を決める
資金繰り予定表は作ることが目的ではありません。
将来の資金不足を事前に把握し、打ち手を決めるための経営ツールです。
◆ 資金不足が見えた場合の具体的な打ち手
資金繰り予定表で将来の資金不足が見えた場合、打つべき手は限られています。
- 金融機関への早期相談(追加融資・借換え)
- 支払いサイトの見直し(外注先・仕入先との交渉)
- 入金サイトの短縮(請求条件の見直し)
- 投資の延期または分割実行
重要なのは、資金が足りなくなってから考えるのではなく、足りなくなる前に手を打つことです。
資金繰りが悪化してからでは、金融機関の対応は一気に厳しくなります。
余裕があるうちに相談するか、追い込まれてから駆け込むかで、結果は大きく変わります。
まとめ
利益が出ているのに現金が減るのは、異常ではありません。
しかし、それを放置することは極めて危険です。
元本返済とキャッシュ創出力のバランス、そして入出金の時間差。
この2つを正しく把握し、資金繰り予定表で未来を可視化することで、資金ショートは予測可能なリスクに変わります。
資金繰りは結果ではなく、設計です。
過去の数字を見るだけでなく、未来の現金をコントロールする視点が、会社を守ります。
重要なのは、資金が尽きてから対応するのではなく、尽きる前に意思決定を行うことです。
自社の数値で判断が難しい場合は、一度資金繰りの構造を整理するだけでも状況は大きく変わります。
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