この記事でわかること
- 「黒字なのにお金が残らない」が起こる理由
- 資金繰り悪化3パターンの典型例
- 資金繰り表で見るべきポイント
- 銀行対応の実務的な考え方
- 現場で実際に行う具体的な打ち手
- 銀行調整が難しい場合の改善方法
はじめに
「利益は出ているのに、お金がない」
中小企業の経営において、このような状態は決して珍しいことではありません。
- 黒字なのに資金繰りが苦しい
- 売上は伸びているのに通帳残高が減る
- 返済が重く、資金が残らない
これらは感覚の問題ではなく、財務構造上の問題として捉える必要があります。
実際には、
- 返済構造の問題
- 運転資金の滞留
- 設備投資と資金調達のズレ
によって、現金が漏れているケースが多くあります。

重要なのは、「お金が足りない」という現象に振り回されるのではなく、
「どこで資金が漏れているか」
という構造を把握することです。
資金繰り改善で最初にやるべきこと
資金繰り改善において、最初にやるべきことは、
「どこで資金が減っているか」
の見える化です。
そのために必要なのが、資金繰り表です。
利益が出ていても、それが、
- 借入返済に消えているのか
- 売掛金として寝ているのか
- 在庫に変わっているのか
- 設備投資に流れているのか
によって、打ち手は全く変わります。
原因を整理せずに「とにかく売上アップ」を目指すと、かえって運転資金不足が悪化することもあります。
資金繰り改善は、気合いではなく構造調整です。
パターン① 利益は出ているのに返済でお金が消える
決算書では利益が出ているのに、通帳残高が増えない典型的なケースです。
◆ よくある状態
創業時借入や設備投資借入、コロナ融資などが積み上がり、毎月の返済総額が会社のキャッシュ創出力を上回っている状態です。
社長は、
「借金は早く返した方がいいと思っていた」
と考えがちです。
もちろん、その考え方自体は間違いではありません。
しかし、利益以上の速度で返済すれば、当然ながら手元の現金は減少します。
つまり問題なのは、「借入があること」ではなく、「返済構造が現在のキャッシュフローに合っているか」です。
◆ 実際に行う打ち手
このケースでは、
- 返済期間の見直し
- 借換
- 複数借入の一本化
- 元金据置
などを検討します。
銀行に対しては、
「返済できません」
ではなく、
「返済負担が先行しているため、返済構造を正常化したい」
と整理して説明することが実務上のポイントです。
◆ 銀行交渉は必ず通るわけではない
銀行には、
- 信用格付
- 支店方針
- 本部判断
などがあるため、交渉が必ずしも通るわけではありません。
そのため、銀行対応だけに依存せず、並行して、
- 不要な投資の停止
- 役員報酬の調整
- 赤字取引の整理
などを進める必要があります。
特に、
「利益率は低いのに資金だけが出ていく仕事」
を整理することで、キャッシュフローが改善するケースがあります。
パターン② 売上は伸びているのに苦しい
売上が過去最高を記録しているにもかかわらず、手元の現金が減っていくケースです。
◆ 「忙しい=順調」とは限らない
売上が増加すると、売掛金や在庫も増加します。
売上計上から入金までにタイムラグがある一方で、
- 仕入
- 外注費
- 人件費
などの支払いが先行する場合、会社が先に資金を立て替えている状態になります。
つまり、売上が伸びるほど、先に必要な資金(運転資金)が増大することがあります。
社長としては、
「こんなに忙しいのだから順調なはずだ」
という感覚になりやすいのですが、実際には現金化が追いついていないケースも少なくありません。
◆ 実際に行う打ち手
このケースでは、
- 売掛金一覧
- 回収サイト
- 在庫推移
を整理し、現金化の速度を改善していきます。
具体的には、
- 回収条件の見直し
- 請求タイミングの前倒し
- 入金遅延管理
- 不要在庫の整理
- 在庫圧縮
などが挙げられます。
在庫は「売れる見込み」であっても、財務的には「現金が棚に寝ている」状態です。
そのため、在庫回転を改善するだけでも、資金繰りが大きく改善するケースがあります。
◆ 銀行への説明で重要なこと
このような場合、銀行には単に、
「資金が足りない」
と伝えるのではなく、
「売上増加に伴って、運転資金が一時的に膨らんでいる」
と説明することが重要です。
赤字補填なのか、成長に伴う運転資金なのかで、銀行側の受け止め方は変わります。
そのため、
- 売掛金の増加
- 在庫の増加
- 入金予定
- 今後の回収見込み
などを、資金繰り表とあわせて整理して示すことが重要になります。
パターン③ 設備投資後に苦しくなる
設備投資を行った後に、資金繰りが急変するケースです。
特に、補助金を活用する場合には注意が必要です。
◆ 補助金のタイムラグ
補助金は後払いです。
つまり、導入時には会社が資金を立て替える必要があります。
さらに、
- 設備ローンの返済開始
- 投資回収の遅れ
- 稼働率不足
などが重なると、利益が出る前に資金が減少していきます。
これは投資の成否というより、
- 返済期間
- 回収タイミング
- 資金調達方法
とのズレによる、
「資金設計ミス」
である場合が少なくありません。
◆ 実際の打ち手
このケースでは、
- 短期資金の長期化
- 設備資金への借換
- 返済計画の見直し
- 追加投資の停止
などを検討します。
あわせて、
「導入した設備が、実際に利益を生んでいるか」
も確認が必要です。
設備は、導入しただけでは利益を生みません。
稼働し、回り、利益化して初めて意味を持ちます。
◆ 銀行への説明で重要なこと
銀行に相談する場合も、
「設備投資が失敗した」
という説明ではなく、
「投資回収期間と返済期間にズレが生じている」
と整理する方が実務的です。
その上で、
- 設備の稼働状況
- 今後の売上見込み
- 補助金入金予定
- 返済計画
などを資金繰り表とあわせて示すことで、長期資金への借換や返済条件の再設計を検討しやすくなります。
銀行調整が難しいときの考え方
条件変更や借換などの銀行交渉が通らない場合に備え、実務では、
「自力で時間を稼ぐ」
という考え方が重要になります。
◆ 優先順位を付けた改善
具体的には、
- 役員報酬の調整
- 不要・追加投資の停止
- 在庫の徹底した圧縮
- 遊休資産の売却
- 赤字取引の整理
などです。
これは単なるコスト削減ではありません。
「資金流出インパクトが大きいもの」
から優先順位を付けて整理していく作業です。
まとめ
「利益は出ているのに苦しい」
という状態では、まず、
「どこで資金が漏れているか」
を整理する必要があります。
- 返済構造の問題なのか
- 運転資金の滞留なのか
- 投資設計のズレなのか
によって、打ち手は全く変わります。
そのためには、資金繰り表による見える化が非常に重要です。
感覚ではなく数字で整理することで、
- 銀行への説明
- 改善行動
- 優先順位
が明確になります。
資金繰り改善は、気合いや根性ではなく、数字に基づく構造調整なのです。
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当事務所では、
- 資金繰り表の作成支援
- 銀行対応支援
- 決算書分析
- 資金調達支援
- 財務改善サポート
などを行っています。
「どこで資金が漏れているのか」
を整理し、社長が腹落ちする形で改善設計を一緒に検討しています。
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