利益の“行方”をB/Sで確認する視点
この記事でわかること
- P/Lの利益とB/Sの利益剰余金の関係
- 「黒字なのにお金が残らない」理由
- 利益がどこへ行ったのかを確認する方法
- 2期分のB/S比較で分かる会社の実態
- 利益の“質”まで見る財務分析の視点
はじめに
「今期はしっかり利益が出ました」
経営者にとって、これはもちろん良いニュースです。
しかし実務では、
「利益は出ているのに、お金が増えていない」
というケースが少なくありません。
むしろ、
売上も利益も伸びているのに、
資金繰りだけが苦しくなっていく会社もあります。
重要なのは、
P/L(損益計算書)の利益だけを見て判断しないことです。
利益は、
“出た瞬間に現金として残る”
わけではありません。
会社の中で別の形に姿を変え、
B/S(貸借対照表)のどこかへ移動しています。
そのため、
資金繰りを正しく見るためには、
「利益がどこへ行ったのか」
まで確認する必要があります。
P/Lの利益は、B/Sでは利益剰余金になる
まず基本として、
P/Lで計上された当期利益は、
B/Sでは純資産の「利益剰余金」に積み上がります。
たとえば、
- 前期末の利益剰余金:1,000万円
- 当期利益:300万円
であれば、
当期末の利益剰余金は1,300万円になります。
つまり、
利益が出れば、
B/Sの純資産は増える。
これは会計上、必ず起きることです。
本来は、キャッシュも増えていてほしい
利益が出たのであれば、
本来は会社にお金も残っていてほしいところです。
つまり理想は、
- 利益剰余金が増える
- 現預金も増える
という状態です。
しかし現実には、
利益剰余金は増えているのに、
現預金がほとんど増えていないことがあります。
さらに、
利益が出ているのに、
現預金が減っているケースすらあります。
では、
稼いだ利益はどこへ行ったのでしょうか。
利益が消えた先は、基本的に3つしかない
利益によって増えたはずのお金は、
基本的には次の3つのどこかへ移動しています。
① キャッシュ以外の流動資産が増えた
代表例は、
- 売掛金
- 在庫
です。

たとえば売上が増えても、
その代金をまだ回収していなければ、
利益は出ても現金は増えません。
また、
在庫を大量に抱えている場合も、
お金が商品へ姿を変えているだけです。
特に、
「売上は伸びているのに資金繰りが苦しい」
という会社では、
売掛金や在庫の増加が原因になっていることがよくあります。
② 固定資産が増えた
利益を設備投資へ回したケースです。

たとえば、
- 機械設備
- 店舗改装
- 車両購入
などです。
これは必ずしも悪いことではありません。
将来的に、
- 生産性向上
- 売上増加
- 人手不足解消
につながる投資であれば、
前向きな利益の使い方です。
ただし、
同じ設備投資でも内容は大きく異なります。
たとえば、
- 新たな利益を生む投資
なのか、
- 壊れた設備の単なる更新
なのか、
なのか。
後者の場合、
お金は出ていく一方で、
将来キャッシュを増やす力はそれほど強くない可能性があります。
「設備が増えた」
という事実だけでは、
良し悪しは判断できません。
③ 負債が減った
利益を借入返済へ回したケースです。

たとえば、
利益が出たからといって、
毎月どんどん返済を進めていくと、
会社の現預金は減っていきます。
もちろん、
借入を減らすこと自体は悪ではありません。
ただし、
返済を優先しすぎることで、
手元資金が薄くなり、
資金繰りが苦しくなるケースがあります。
特に中小企業では、
「無借金が理想」
という感覚を持つ経営者も少なくありません。
しかし実務では、
借入残高を減らすこと以上に、
手元資金を維持することが重要な場面も多くあります。
分析の基本は「2期分のB/S比較」
では、
利益の行方はどのように確認すればよいのでしょうか。
その基本が、
「2期分のB/Sを並べて増減を見る」
という方法です。
たとえば、
| 項目 | 前期 | 当期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現預金 | 1,000 | 800 | ▲200 |
| 売掛金 | 700 | 1,000 | +300 |
| 機械設備 | 500 | 700 | +200 |
| 借入金 | 1,500 | 1,200 | ▲300 |
| 利益剰余金 | 800 | 1,100 | +300 |
この場合、
利益剰余金は300増えています。
しかし、
現預金は200減っています。
その理由を見ると、
- 売掛金が増えた
- 設備投資をした
- 借入返済を進めた
という形で、
利益が別の場所へ移動していることが分かります。
「利益が出ている」は入口に過ぎない
経営では、
利益を見ることはもちろん重要です。
しかし実際には、
「どんな形で利益が使われたのか」
まで見なければ、
会社の実態は分かりません。
- 売掛金が膨らみすぎていないか
- 在庫が積み上がっていないか
- 投資は将来回収できる内容か
- 返済によって資金繰りが圧迫されていないか
こうした視点まで含めて見ることで、
初めて“利益の質”が見えてきます。
まとめ
P/Lの利益は、
B/Sでは利益剰余金として積み上がります。
しかし、
その利益がそのまま現金として残るとは限りません。
利益は、
- 売掛金
- 在庫
- 設備投資
- 借入返済
などへ姿を変えていることがあります。
だからこそ重要なのは、
「利益が出たかどうか」
だけではありません。
「その利益が、どこへ行ったのか」
まで確認することです。
P/Lだけを見ていると、
資金繰りを見誤ることがあります。
会社のお金の流れを正しく把握するためには、
B/Sの増減まで含めて見る視点が欠かせません。
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「利益は出ているのに、お金が残らない」
その原因は、
P/Lだけでは見えないことがあります。
実際には、
- 売掛金の増加
- 在庫の積み上がり
- 設備投資
- 返済負担
などが、
資金繰りに大きく影響しているケースも少なくありません。
当事務所では、
決算書を単に“見る”だけではなく、
資金の流れまで含めて分析し、
今後の打ち手まで一緒に整理しています。
「利益は出ているのに、なぜか資金繰りが苦しい」
そんな場合は、お気軽にご相談ください。
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