はじめに
会社の事業拡大や運転資金の確保に向けて、金融機関から融資を受ける際、
不動産などの担保を提供することがあります。
このとき、契約書や銀行の担当者の口から
「抵当権」
あるいは
「根抵当権」
という言葉が出てきます。
どちらも不動産を担保にするという点では同じですが、
その仕組みや融資を受ける側にとっての使い勝手は大きく異なります。
担保は一度設定すると変更に手間とコストがかかるため、
この違いをしっかりと理解しておくことは、今後の円滑な資金繰り設計において非常に重要です。
この記事で分かること
- 抵当権と根抵当権の根本的な仕組みの違い
- 単発の借入と継続的な借入におけるメリットとデメリット
- 今後の資金計画を見据えた最適な担保の選び方
抵当権の仕組みと適したケース
◆ 借入と担保が「1対1」で紐づく
抵当権は、特定の1つの借入に対して設定される担保権です。
たとえば、新しい工場を建てるために5000万円の融資を受けた場合、
その5000万円という特定の借入金の返済を担保するために、対象となる不動産に設定されます。
◆ 完済による消滅と単発借入への適性
最大の特徴は、対象となる借入を完済すると、抵当権の役割も終わり、抹消手続きができることです。
借入と担保の関係が1対1で結びついているため、非常に分かりやすい仕組みと言えます。
自社ビル購入や大型機械の導入など、目的が明確で単発の設備資金を借り入れる場合などに適した方法です。
◆ 再借入時のコストと手間に注意
しかし、完済後に再び同じ不動産を担保にして新たな融資を受けたい場合は、
新たに抵当権を設定し直す必要があります。
その都度、法務局での登記費用や専門家への報酬といったコスト、
そして手続きの手間がかかる点は留意しておく必要があります。
根抵当権の仕組みと適したケース
◆ 利用上限枠(極度額)内で何度も利用可能
一方の根抵当権は、特定の借入に紐づくものではありません。
あらかじめ不動産の担保価値に応じて「極度額」という利用上限枠を設定し、
その範囲内であれば何度でも借りたり返したりを繰り返すことができる担保権です。
極度額を5000万円と設定すれば、その範囲内で、継続的な借入取引を担保することができます。
◆ スピーディーな融資実行とコスト削減
日常的な運転資金の調達や、季節によって仕入れ資金が大きく変動する業種など、
継続的に金融機関と取引を行う場合に非常に大きな力を発揮します。
一度完済して借入残高がゼロになっても、根抵当権そのものは消滅しません。
そのため、再び急な資金が必要になった際にも、新たに担保設定の手続きを行う必要がなく、
スピーディーに融資を受けられるメリットがあります。
登記費用も最初の設定時の一度で済むため、
長期的な取引を見据えた場合にはトータルのコストと手間の削減につながります。
仕組みから見る具体的な違い
両者の違いをさらに深く理解するために、いくつか重要なポイントを見ていきましょう。
- 債権の範囲:
抵当権が「今回の設備資金」といった特定の借入のみを対象とするのに対し、
根抵当権は「当行との銀行取引全般」といったように、極度額の範囲内で将来にわたる不特定の借入を対象とします。
- 完済時の扱い:
抵当権は完済とともに消滅しますが、
根抵当権は完済しても消滅せず、銀行との間で根抵当権を抹消する合意をしない限り不動産に残り続けます。
- 融資スピード:
抵当権は借入の都度手続きが必要なため、融資実行までに時間がかかることがあります。
対して根抵当権は、極度額の枠が空いていれば審査から実行までがスムーズに進む傾向にあります。
自社の事業計画に合わせた設計が重要
◆ 今回限りの投資ならシンプルに
どちらの担保設定を選ぶべきかは、会社の現在の状況と、今後の事業計画、資金繰りの方向性によって変わります。
例えば、今回の一度きりの大きな投資であり、しばらくは追加の借入を予定していないのであれば、
目的が明確な抵当権がシンプルで適しています。
抵当権は特定の借入に対して設定されるため、
借入ごとに担保関係を整理しやすく、将来的に他の金融機関との取引余地を残しやすい側面もあります。
◆ メインバンクとの関係性を深めるなら
一方、メインバンクとして深く長く付き合っていく予定であり、
機動的な資金調達が常に求められる環境であれば、
根抵当権を設定しておくことで、いざという時の強力な資金調達のカードになります。
◆ 将来を見据えた財務戦略を
金融機関から提示された条件をそのまま受け入れるのではなく、
自社の5年後、10年後の財務戦略と照らし合わせて、社長自身が納得して形を設計することが大切です。
まとめ
融資における抵当権と根抵当権は、それぞれ異なる役割を持っています。
特定の借入に紐づく抵当権と、極度額の枠内で何度も利用できる根抵当権。
どちらが良い悪いではなく、自社の資金使途や今後の取引方針に合わせて使い分けることが重要です。
担保設定の段階から計画的な資金繰り設計を行うことで、より強固な財務体制を築くことができます。
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