在庫はなぜ増えるのか
在庫(棚卸資産)は、貸借対照表上の「商品」「製品」「半製品」「仕掛品」「貯蔵品」の他、建設業においては「未成工事支出金」も含まれます。
在庫が増える原因の一つとして、売上の見込み違いがあると思われます。損益予定を立てる際、自社にとって実現可能な売上高、粗利益がどのくらいなのかを想定します。
売上高ー売上原価(仕入)=粗利益
となるので、
売上目標ー粗利益目標=売上原価目標(必要な仕入)
となります。
丁度よい量を仕入れていればそのまま売上原価になるのですが、目算が外れて、仕入れた品物が売れ残った場合、それは売上に寄与していないことから、仕入経費ではなく「商品」という資産として残ることになります。これが棚卸資産です。
あるいは仕入先から、ある程度まとまったロットで注文すれば安く買えるということで、大量仕入れをしてしまうということもあるでしょう。これも在庫を増やす原因と言えます。
在庫は「資産」だから問題ないのか
資産なのだから問題ないと思われるかもしれませんが、在庫を抱えるということは、保管・管理費用がかかる、現預金で回収されるまで運転資金の融資利息がかかっている、陳腐化(時代遅れ、劣化等)など、様々なデメリットがあります。
近く必ず仕入れ値以上の価格で売れることが確実ということであれば良いのかもしれませんが、一般的には過大在庫を抱え続けても何も良いことはありません。
また、銀行が決算書を見て、前年度から急に在庫が増えているとか、業界平均よりも異常に大きいとかとなると、本当にそれだけの在庫があるのか、疑いを持たれてしまいます。
棚卸資産回転期間
企業の棚卸資産が、何日分の売上高に相当するかを「期間」(日数、月数)で表したものが「棚卸資産回転期間」です。棚卸資産回転日数は、棚卸資産の金額を売上高で割って365日を掛けたものです。業界ごとの棚卸資産回転日数は以下のとおりです。これよりも著しく大きい場合は、過剰在庫を本当に抱えているか、粉飾決算を行っているか、という見られ方をします。
| 業界 | 棚卸資産回転日数(平均) |
|---|---|
| 建設業 | 40日 |
| 製造業 | 35日 |
| 卸売業 | 22日 |
| 小売業 | 26日 |
| 飲食宿泊業 | 4日 |
| サービス業 | 7日 |
在庫処分を行う場合の留意点
在庫を廃棄処分したり、投げ売りしたりする場合、損失が計上されることから、銀行から悪く見られて、今後の融資に悪影響を及ぼすのではないかと、心配してしまいます。ですが、前向きな処分であることを逆にアピールすれば、心配に及びませんし、そもそも過剰在庫分は銀行の「自己査定」の過程で評価ゼロとして差し引いていますので、大きな影響はありません。
一方、仮に投げ売りをして換金した資金を銀行側から融資の前倒し返済に充てて欲しいと求められても、原則応じる必要はありません。
在庫を使った粉飾決算の例
決算書が赤字になる場合、売上原価を小さく見せて利益を増やす操作を行うため、実際には在庫がないにもかかわらず、売上原価の一部を減らして、その分を棚卸資産として計上するという操作を行えば、決算書は黒字化することが出来ます。
税務署は経費が少なくなるので、納税額が減ることにならないため、分かっていたとしても何も言わないでしょう。
棚卸も社内で「OK」ということにしておけば、バレないという考えを起こすかもしれませんが、一度そのような粉飾を行ってしまうと、それを取り繕うために、次々と粉飾を繰り返す体質になってしまいます。
建設業においては、入札資格を得るための「経営事項審査」(経審)を受ける必要がありますが、赤字決算を出すと点数が下がるため、赤字をどうしても避けたいというバイアスが働きます。上記の例と同様、建設業における在庫勘定である「未成工事支出金」(仕掛工事)で工事原価を減らすという会計操作を行ってしまうケースがあります。商品の場合と違い、実在性の確認がしにくいことを逆手にとって、粉飾を繰り返すという会社もあります。それは単に課題(コスト)の繰り延べだけの問題では収まらず、やってはならないことだと認識しなければなりません。
粉飾の度合いがエスカレートすると、やがて矛盾を説明しきれなくなります。銀行からの質問に答えられなくなり、これまでの嘘が発覚すれば信頼を失って、融資が受けられなくなることでしょう。結果、資金繰りに詰まり倒産、そのような憂き目に遭う前に、粉飾など考えないことです。
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