この記事でわかること
- ラーメン店の倒産が増えている背景
- 原価高や人手不足だけではない、資金繰りの問題
- 小規模店が早めに確認しておきたい資金繰り対策
はじめに
東京商工リサーチの調査によると、2026年上半期のラーメン店の倒産は、上半期として過去最多となったようです。
ラーメン店の倒産というと、
「原材料費が上がったから」
「人手不足だから」
「値上げでお客様が離れたから」
といった理由が思い浮かびます。
もちろん、これらは大きな要因です。
しかし、倒産に至るまでの流れを見ると、単に売上や原価だけの問題ではありません。
お客様は来ている。
売上もある。
それでも、仕入、人件費、光熱費、家賃、借入返済を支払うと、手元にお金が残らない。
この状態が続くと、少しの客数減少や設備故障で、一気に資金繰りが苦しくなります。
この記事では、ラーメン店の倒産をきっかけに、小規模店や中小企業が見直しておきたい資金繰りの考え方について整理します。
ラーメン店の倒産要因は1つではない
ラーメン店の倒産が増えている背景には、いくつかの要因があります。
1. 原材料費・光熱費の上昇
小麦、油、肉、野菜、卵、海苔、調味料など、ラーメン店で使う材料は多岐にわたります。
さらに、スープを炊くためのガス代、冷蔵・冷凍設備の電気代、水道代などもかかります。
原材料費や光熱費が上がると、1杯あたりの利益は確実に削られます。
2. 値上げの難しさ
原価が上がれば、本来は販売価格を上げる必要があります。
しかし、ラーメンは長く「手頃な外食」として親しまれてきました。
そのため、価格を上げると、
「高くなった」
「前より行きにくくなった」
「この価格なら別の店に行く」
と感じられる可能性があります。
値上げが必要でも、簡単には値上げできない。
ここに飲食店の難しさがあります。
3. 人手不足と人件費の上昇
ラーメン店は、仕込み、営業、片付け、発注、清掃など、多くの作業を少人数で回すことが多い業種です。
人が足りなければ営業時間を短くするしかありません。
しかし、営業時間を短くすれば売上は減ります。
一方で、人を採用すれば人件費が増えます。
人手不足と人件費上昇は、売上面にも費用面にも影響します。
4. 立地・家賃・競争環境の厳しさ
飲食店は立地で大きく左右されると言われます。
人通りが多い場所、駐車場に入りやすい場所、視認性の高い場所は有利です。
しかし、良い立地ほど家賃は高くなります。
開業当初は売上が見込めても、競合店の出店、道路状況の変化、周辺施設の閉店、客層の変化によって売上が落ちることもあります。
そのとき、高い家賃だけが固定費として残ると、資金繰りを圧迫します。
5. 資金繰りの余力不足
資金繰りは最も重要です。
ラーメン店などの飲食店は、毎日現金やキャッシュレス決済で売上が入ります。
そのため、一見すると資金繰りは分かりやすい業種のように見えます。
しかし、毎日お金が入るからこそ、
「何となく回っている」
「まだ大丈夫だろう」
と感じてしまい、資金繰りの悪化に気づくのが遅れることがあります。
大切なのは、売上があるかどうかではありません。
支払いをした後に、手元にお金が残るかどうかです。
資金繰り対策1 手元資金が何か月分あるかを確認する
まず確認したいのは、今ある手元資金で、何か月分の支払いに耐えられるかです。(以下は説明用の想定事例)
あるラーメン店について、次のように考えてみます。
- ラーメン1杯の販売価格:900円
- 1杯あたりの材料費など:400円
- 1杯あたりの粗利:500円
- 毎月の固定的な支払い:180万円
固定的な支払い180万円の内訳は、例えば次のようなものです。
- 家賃:30万円
- 人件費:80万円
- 水道光熱費:30万円
- その他経費:20万円
- 借入返済:20万円
この店が、手元資金100万円で営業していたらどうでしょうか。
毎日売上が入っていても、月末の家賃、給与、仕入代金、借入返済が重なると、すぐに資金が足りなくなる可能性があります。
この店の場合、固定的な支払いは毎月180万円です。
そうであれば、手元資金100万円は、1か月分の支払いにも足りないため、かなり危険な水準です。
まずは、最低でも1か月分の180万円。
できれば2か月分の360万円。
余裕を持つなら3か月分の540万円。
このように、毎月の固定的な支払いをもとに、現預金の目安を具体的に持っておくことが大切です。
日々の売上が入っているかどうかだけでなく、
今の手元資金で何か月分の支払いに耐えられるのかを確認しておく必要があります。
資金繰り対策2 何杯売れば資金が減らないかを見る
次に見るべきなのは、何杯売れば資金が減らないかです。
先ほどの例では、1杯あたりの粗利は500円です。
毎月の固定的な支払いは180万円です。
そうすると、
180万円 ÷ 500円 = 3,600杯
つまり、この店では、月に3,600杯売らなければ、固定的な支払いをまかなえません。
営業日数が月26日であれば、
3,600杯 ÷ 26日 = 約139杯
1日平均で約139杯が必要になります。
ただし、飲食店は平日と週末で客数が違います。
例えば、平日18日、週末8日で営業している店であれば、次のように考えることもできます。
- 平日18日 × 100杯 = 1,800杯
- 週末8日 × 225杯 = 1,800杯
- 合計 3,600杯
この場合、平日は1日100杯前後、週末は1日225杯前後が、資金を減らさないための目安になります。
社長が見るべきなのは、
「うちは1日何杯を下回ると、お金が減っていくのか」
ということです。
この数字が分かると、判断が変わります。
営業時間を短くしてよいのか。
定休日を増やしてよいのか。
人をもう1人入れてよいのか。
値上げが必要なのか。
こうした判断を、感覚ではなく数字で考えられるようになります。
資金繰り対策3 値上げ・割引・客単価アップを粗利で考える
売上が落ちてきたとき、社長はさまざまな対策を考えます。
しかし、資金繰りの面では、売上が増えるかどうかだけで判断するのは危険です。
値上げをすれば、1杯あたりの粗利は増えます。
一方で、客数が減る可能性があります。
割引をすれば、客数は増えるかもしれません。
しかし、1杯あたりの粗利は減ります。
客単価を上げるためにサイドメニューを増やす方法もあります。
ただし、仕込みの手間や廃棄ロスが増える場合もあります。
大切なのは、それぞれの対策を「売上」ではなく、「手元に残る粗利」で見ることです。
◆ 値上げは客数減とセットで考える
例えば、900円のラーメンを950円に値上げしたとします。
材料費400円が変わらなければ、1杯あたりの粗利は500円から550円に増えます。
月3,600杯のまま売れれば、
550円 × 3,600杯 = 198万円
固定的な支払い180万円を差し引くと、18万円残ります。
では、値上げによって客数が5%減ったらどうでしょうか。
販売数は3,600杯から3,420杯になります。
550円 × 3,420杯 = 188万1,000円
この場合でも、固定的な支払い180万円を差し引くと、8万1,000円残ります。
一方で、客数が10%減ると、販売数は3,240杯です。
550円 × 3,240杯 = 178万2,000円
固定的な支払い180万円に届かず、1万8,000円の不足になります。
つまり、値上げは必要な場合がありますが、
「50円上げれば利益が増える」
と単純には言えません。
大切なのは、値上げによって何%まで客数が減っても資金繰りが悪化しないかを、事前に試算しておくことです。
◆ 割引キャンペーンは必要販売数も増える
売上が落ちてくると、割引キャンペーンを考えることがあります。
しかし、割引は客数を増やす一方で、1杯あたりの粗利を減らします。
例えば、900円のラーメンを100円引きにして800円で販売したとします。
材料費400円が変わらなければ、1杯あたりの粗利は500円から400円に下がります。
固定的な支払い180万円をまかなうには、
180万円 ÷ 400円 = 4,500杯
が必要です。
通常価格なら3,600杯でよかったものが、割引後は4,500杯必要になります。
つまり、100円引きキャンペーンを行うなら、販売数を25%以上増やせる見込みがあるかを見ておく必要があります。
ポイントカードも同じです。
リピートにつながる効果はありますが、実質的な値引きになる場合は、粗利がどれだけ減るかを確認しなければなりません。
◆ セットメニューやサイドメニューは粗利を増やす手段になる
一方で、値引きではなく、客単価を上げる方法もあります。
例えば、原価100円、販売価格300円のサイドメニューを用意したとします。
1品あたりの粗利は200円です。
月3,600人のお客様のうち、3割が注文すれば、
1,080品 × 200円 = 21万6,000円
の粗利が増えます。
これは、単にラーメンを値上げするよりも、お客様に受け入れられやすい場合があります。
ただし、仕込みの手間、廃棄ロス、オペレーションの複雑化が増えるようでは逆効果です。
大切なのは、
「売上が増えるか」
だけではありません。
「手元に残る粗利が増えるか」
を見ることです。
資金が詰まる前に金融機関へ相談する
資金繰りが苦しくなったとき、最後まで放置してはいけないのが借入返済です。
よくない流れは、次のようなものです。
売上が落ちる。
仕入や人件費の支払いを優先する。
税金や社会保険料が遅れる。
金融機関への返済も遅れる。
その段階で相談に行く。
この段階になると、金融機関も対応しづらくなります。
本来は、手元資金がまだ残っている段階で、
「今後3か月、このままだと資金が減っていく見込みです」
と相談する方がよいです。
そのためには、最低でも3か月先の資金繰りを見ておく必要があります。
売上がいくら入る見込みなのか。
仕入、人件費、家賃、返済、税金の支払いはいくらあるのか。
月末の現金残高はいくらになりそうなのか。
これを早めに把握しておくことで、金融機関への相談も具体的になります。
まとめ
ラーメン店の倒産は、味が悪いから起きるとは限りません。
お客様は来ている。
売上もある。
それでも、支払いをした後に手元にお金が残らなければ、資金繰りは苦しくなります。
大切なのは、売上だけを見ることではありません。
今の手元資金で、何か月分の支払いに耐えられるのか。
何杯売れば資金が減らないのか。
値上げや割引によって、粗利がどう変わるのか。
3か月先の資金繰りはどうなっているのか。
これらを早めに数字で確認しておくことです。
ラーメン店に限らず、小規模店や中小企業では、日々の売上に意識が向きやすくなります。
しかし、会社を続けるために本当に大切なのは、売上の先にある手元資金です。
資金繰りに不安がある場合は、早めに現状を整理し、数字で確認することから始めましょう。
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資金繰りに不安があるものの、何から確認すればよいか分からない。
売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない。
金融機関へ相談する前に、自社の状況を整理しておきたい。
このようなお悩みがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
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