こんにちは。中小企業財務コンサルを専門としております行政書士、1級FP技能士、銀行融資診断士®の本間です。
今回は、中小企業が留意すべき、短期継続融資と長期融資の返済財源、そして短期資金流用のリスクと対策について解説いたします。
ぜひ最後までお読みください。
短期継続融資とは
短期継続融資とは、期日一括返済を条件とした借入期間が1年以内の短期融資のことを言います。
手形貸付もしくは当座貸越枠での借入れで、手形貸付の場合は、返済期日到来時に証書の書き換えで融資を繋ぎ、返済期日はそのまま更新されます。
実務上は、元金の返済は要せず借りっぱなし、利息の支払いだけでよいということになっています。
短期継続融資は経常運転資金を融通するための融資です。
経常運転資金とは、通常の事業サイクルの中で常時必要となる資金のことで、売上債権(売掛金、受取手形等)に棚卸資産(商品在庫)を加えて、仕入債務(買掛金、支払手形等)を引くことで求められます。
経常運転資金=売上債権+棚卸資産ー仕入債務
売上債権+棚卸資産 ⇒ いずれ入金を予定するものの、キャッシュとして回収するまでお金が入らない
仕入債務 ⇒ 近いうちにキャッシュとして支払う必要がある
よって、両者のタイムラグが一時必要なキャッシュであり、この範疇で銀行から一時的に借入を行うものです。
ただし企業が継続する限り、この必要資金は常にローリングしてずっと必要であり続けます。
経常運転資金は企業にとってベース資金となるため、利益から返済するのではなく、売上債権から返済しなければなりませんが売上債権で得られたお金は仕入債務に充てる必要があるので、事実上返済は不可能です。
会社を畳む際には、売上債権や棚卸資産から回収したキャッシュから、払わなければならない仕入債務を支払い、残ったお金で返済することになります。
短期の転がしの最終回は、回収から支払い義務ありの資金を捻出し、理論上それで返済することになります。
短期継続融資がしにくくなった経緯
金融検査マニュアルに〝差し控え″の記載
バブル崩壊により、金融機関は大量の不良債権を抱えることとなり、金融機関の経営状況がひっ迫するようになりました。
これを是正する目的で平成11年、金融監督庁によっていわゆる「金融検査マニュアル」が制定されました。
このマニュアルに沿って、当時の金融監督庁が金融機関の財務の健全性をチェック、指導することとなりました。
平成14年に金融庁は金融検査マニュアルに「書き換えを継続している手形貸付等(短期継続融資)について、正常運転資金を超える部分は不良債権に当たるかどうかの検証が必要」と記載しました。
それ以前は、経常運転資金は短期継続融資で行われており、前述のとおり、元金の返済は要せず、利息の支払いだけでよいという状態が続いていました。
しかし、多くの金融機関は金融検査マニュアルで「正常運転資金を超える部分は」と言っているよりも過剰に、正常運転資金(=経常運転資金)の範囲内であっても、短期継続融資を差し控えるようになりました。
その結果、経常運転資金も長期融資でしか調達出来ない環境になり、中小企業は毎月元本部分の返済も求められることから、資金繰りが従来よりも厳しくなりました。
いわゆる貸し剥がしという状況です。
長期融資は「利益+減価償却費」からどうにか捻出するしかありません。
方針転換⇒短期継続融資の重要性を明記
このような実態を踏まえ、金融庁は平成27年に方針を転換、金融検査マニュアル(別冊)の中で、
①正常運転資金範囲内の短期継続融資であれば何ら問題ないこと
②正常運転資金に対する考え方も決まった計算方法でなく、業種や個社別のビジネスモデルを理解したうえで実態に即したものでよい
としました。
このように「事業性評価」に基づく短期継続融資の重要性が明記されました。
金融庁としては、中小企業にもきちんと必要なお金が流れるよう、金融機関には短期継続融資に取り組んでほしいという考えです。
その後も状況は変わっていない
金融庁の方針転換にもかかわらず、多くの金融機関は保守的な考えで、経常運転資金を短期継続融資へ切り替える動きをしておらず、保守的に、長期融資(証書貸付)を継続しています。
そのため中小企業は経常運転資金であっても、毎月の約定弁済のために厳しい資金繰りを強いられているのが実態です。
なお、金融検査マニュアルは令和元年12月に廃止されています。
経常運転資金は短期継続融資で
「なるべく長期融資で月々の返済を抑えたい」との考えで、経常運転資金についても長期融資が望ましいと考えてしまうかもしれません。
設備資金の融資であればそれでよいですが、経常運転資金は元本はそのままとする短期継続融資を志向すべきです。
短期継続融資は、企業が継続する限り借り続けるものであり、資金繰り的にも楽です。
企業側としては、金融機関に経常運転資金の金額をまずは正しく伝えることです。
ただし決算書(貸借対照表)で示すだけでは、月々の債権額(売掛金、受取手形)にばらつきがある場合は、期中でショートする虞があります。
そのため、年度の各月の増減推移を検証したうえで、増減幅を吸収できるような正しい値で短期継続融資を求める必要があります。
年度内における月々の売上や仕入れのばらつきも含め、自社のビジネスモデルをしっかり理解してもらい、短期継続融資を引き出せるよう努力しましょう。
黙っていると、経常運転資金であっても、銀行は元本の回収がしやすい長期融資を進めてきます。
長期融資は利息も高いので、その点のデメリットもあります。
経常運転資金は短期継続融資を念頭に、銀行とお付き合いして下さい。
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