この記事で分かること
- 銀行融資の金利がどのように決まるのか
- 日銀の利上げや短期プライムレートとの関係
- 同じ会社でも銀行によって金利が違う理由
- 信用金庫と銀行との付き合い方の違い
- 融資を金利だけで比較してはいけない理由
はじめに
「日銀が利上げしたけれど、うちの借入金利も上がるのだろうか」
「同じような会社なのに、なぜ他社の方が低い金利で借りられるのか」
「もっと金利の低い銀行から借りた方がよいのではないか」
金利が上昇する局面では、このようなことが気になる経営者も多いと思います。
もちろん、借入金利は低いに越したことはありません。
しかし、中小企業の銀行取引では、
「一番低い金利で貸してくれる銀行から借りればよい」
と単純に考えることもできません。
そもそも銀行は、どのようにして融資金利を決めているのでしょうか。
そして、金利以外に何を見て、借入先を考えればよいのでしょうか。
日銀が利上げすると、自社の借入金利も同じだけ上がる?
日銀が政策金利を引き上げると、それを受けて市場金利や銀行の資金調達環境も変化します。
そして、銀行が貸出金利を決める際の基準となる金利にも影響が及びます。
その一つとしてよく聞くのが「短期プライムレート」です。
日本銀行では、短期プライムレートを、金融機関が優良企業向けの1年未満の短期貸出に適用する最優遇金利と説明しています。
ただし、
日銀が政策金利を0.25%上げたから、自社の借入金利も必ず0.25%上がる
という単純な仕組みではありません。
短期プライムレートも、すべての中小企業にそのまま適用される金利ではありません。
銀行融資の金利を考えるときは、
「基準となる金利」+「その会社や融資ごとの条件」
というイメージを持つと分かりやすいでしょう。
同じ銀行でも、会社によって融資金利は違う
銀行は、すべての会社に同じ金利で貸しているわけではありません。
融資をするときには、
会社の財務内容や返済能力、事業内容、借入期間、資金使途、担保や保証の有無など、
さまざまな要素を見ています。
当然、銀行から見て信用リスクが低い会社と、高い会社では、融資条件が同じになるとは限りません。
銀行内部の格付けなども融資条件を考える材料の一つです。
ただし、
「格付けがこのランクだから、金利は○%」
というほど単純でもありません。
金融機関によって融資方針や金利の決め方は異なりますし、同じ会社でも融資の内容によって条件は変わります。
したがって、自社の金利が高いからといって、
「銀行から悪い会社だと思われている」
と直ちに判断することはできません。
一方、同じ銀行から、似たような条件で継続的に借りている中で金利条件が変わったのであれば、
自社に対する銀行の見方を確認する一つのきっかけにはなります。
同じ会社でも、銀行によって金利が違う
さらに、同じ会社が同じ時期に融資を申し込んでも、
A銀行 1.3%
B銀行 1.6%
C信用金庫 1.9%
というように、提示される金利が異なることがあります。
銀行によって、基準となる金利だけでなく、融資方針やリスクの見方、取引状況などが違うからです。
また、新たに取引を始めたい銀行が、既存取引行より低い金利を提示することもあります。
このとき経営者として悩むのが、
「それなら、一番金利の低い銀行から借りればよいのではないか」
という問題です。
しかし、銀行との付き合いを金利だけで考えると、見落としてしまうものがあります。
信用金庫は「金利だけ」で比べられない
信用金庫は、一定地域の中小企業や住民を会員とする協同組織の地域金融機関です。
全国信用金庫協会も、
信用金庫について、営業地域を一定の地域に限定し、地域で集めた資金を地域に還元する金融機関と説明しています。
実際の貸出金利には金融機関の業態による違いも見られます。
ただし、平均金利だけを見て、
「信用金庫は金利が高いから不利」
と考えるのも早計です。
信用金庫など地域金融機関には、
地域の中小企業と日常的に接する中で、その会社の事業内容や経営者、取引先、これまでの経緯などを把握しやすい面があります。
金融庁も、中小・地域金融機関について「間柄重視の地域密着型金融」という考え方を示しており、
現在も地域金融機関に対して、
担保や保証だけに依存せず、企業の事業性を評価した融資や経営支援に取り組むよう促しています。
もちろん、信用金庫なら必ず定性面を重く評価してくれるという意味ではありません。
また、大きな銀行が決算書の数字しか見ないということでもありません。
それでも、日頃から会社を知ってもらうことには、金利では測れない意味があります。
「一番金利が低い銀行」が、一番よい銀行とは限らない
会社の業績が良く、複数の銀行から「借りてください」と言われているときは、金利を比較する余裕があります。
問題は、本当に資金が必要になったときです。
大口取引先の倒産で売掛金が回収できない。
売上が急激に落ち込んだ。
大型受注を獲得したものの、材料費や外注費の先行支払いが必要になった。
そんなときに初めて相談する銀行と、
毎年決算書を提出し、業況を説明し、これまで何度も借入と返済を続けてきた銀行とでは、
会社について持っている情報量が違います。
だからといって、
「長年付き合っている銀行なら、苦しいときでも貸してくれる」
ということではありません。
どれだけ長い付き合いでも、銀行が返済可能性を見込めなければ融資は難しくなります。
大切なのは、
長年の付き合いがあるから貸してくれるのではなく、
長年の取引を通じて会社を理解してもらっていることが、融資を検討する際の材料になり得る
ということです。
0.3%の金利差だけで銀行を選ぶ?
例えば、3,000万円を借りるとして、金利差が0.3%なら、単純計算では年間最大9万円の差です。
もちろん、9万円も会社のお金ですから、安い方がよいことに変わりはありません。
しかし、
「今回はA銀行が安い」
「次はB銀行が安い」
「今度はC銀行の条件がよい」
と、その都度最も低い金利だけを求めた結果、どこの金融機関とも十分な取引関係ができていないとしたらどうでしょうか。
特に、メインバンクとの取引まで極端に減らしてしまうことには注意が必要です。
他行から低い金利を提示されたなら、それを金利交渉の材料にすることはできます。
しかし、銀行との付き合いを毎回の価格競争だけにしてしまうことと、適正な条件交渉をすることは別です。
融資条件は金利だけで比較しない
もう一つ重要なのが、資金繰りです。
例えば、
A銀行
3,000万円・7年返済・金利1.7%
B銀行
3,000万円・5年返済・金利1.3%
という条件だったらどうでしょう。
金利だけならB銀行です。
しかし、同じ3,000万円でも返済期間が短ければ、毎月の元金返済負担は大きくなります。
会社の資金繰りにとっては、0.4%の金利差以上に、返済期間や毎月返済額の差が大きく影響することがあります。
融資を比較するときには、
金利だけでなく、
借入額、返済期間、毎月返済額、据置期間、担保・保証、手元資金への影響、
今後の資金調達余力なども含めて考える必要があります。
そして、
「どの金融機関に自社をよく知ってもらうのか」
という視点も忘れてはいけません。
まとめ
融資金利は、世の中の金利環境だけで決まるものではありません。
会社の信用力や融資条件、金融機関との取引状況など、さまざまな要素が関係します。
低い金利で借りることは大切です。
しかし、
「低い金利で借りること」と「良い銀行取引をすること」は、必ずしも同じではありません。
金利だけを追いかけるのではなく、
返済条件や資金繰り、そして金融機関との日頃の付き合いまで含めて、
自社にとっての借入条件を考えてみましょう。
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