こんにちは。中小企業財務コンサルを専門としております行政書士、1級FP技能士、銀行融資診断士®の本間です。
今回は「飲食業」に焦点を当て、財務面から見た資金需要や経営上の注意点について解説します。
飲食業は参入障壁が比較的低く、個人経営からチェーン展開まで幅広い形態がありますが、その一方で廃業率も高い業種です。
安定した経営のためには、日々の資金繰りから長期的な投資判断まで、数字に基づいた判断が不可欠です。
業種の特徴
飲食業は、料理や飲料を提供するサービス業で、立地・メニュー・価格設定・サービス品質が売上を左右します。
現金商売で入金は早い一方、材料費や人件費の変動が大きく、天候や景気動向に売上が左右されやすい特徴があります。
また、初期投資は比較的低額から始められるものの、店舗改装や設備投資が必要な場合は多額の資金を要することもあります。
資金需要(運転資金)
飲食業では日々の営業活動において、以下のような運転資金が必要です。
- 仕入資金:食材や飲料の仕入れ代金。現金決済や短期払いが多く、支払いサイトが短い。
- 人件費:アルバイトを含むスタッフ給与は固定費として毎月発生。
- 家賃・光熱費:固定費の比率が高い業種で、売上が減っても一定額が発生。
- 広告宣伝費:オープン時や集客強化時に集中して必要。
飲食業は現金商売で売上回収は早いものの、仕入や人件費の支払いが先行するため、月商の1~2か月分程度の運転資金を確保しておくのが理想です。
資金需要(設備資金)
店舗の開業や改装には、以下のような設備資金が必要です。
- 物件取得費用:保証金・敷金などで家賃の6~12か月分程度。
- 内装工事費:1坪あたり30万~100万円前後が目安。
- 厨房機器・什器備品:規模によって数百万円から数千万円規模。
- 開業前の広告宣伝費・人材採用費。
飲食業は「居抜き物件」を利用することで初期投資を抑えるケースもありますが、改装や機器更新が必要な場合は数千万円規模の資金調達が必要になることもあります。
決算書の特徴
飲食業の決算書には、以下のような特徴が見られます。
- 売上原価率が高め(30~40%程度):食材費の比率が大きい。
- 人件費率が高い(25~35%程度):人材確保が必要で、特に人手不足下では上昇傾向。
- 固定費負担が重い:家賃や水道光熱費の比率が高い。
- キャッシュフローは良好になりやすい:現金商売のため売掛金が少ない。
しかし、売上が季節要因や流行に左右されやすく、利益率が不安定になることが多い点に留意が必要です。
留意すべき財務指標
飲食業経営では、以下の財務指標を特に意識すると良いでしょう。
- 売上総利益率(粗利率):60~70%以上
- 人件費率:30%以下
- FL比率(食材費+人件費):60%以内
- 家賃比率:10%以内
- 損益分岐点比率:85%以下※
- 現金月商比率:1~2か月分以上
これらの数値を大きく超える場合、価格設定や仕入・人件費の見直し、メニュー構成の改善が必要です。
※ 損益分岐点比率
- 売上高に対する損益分岐点売上高の割合を示す指標。
- 85%を下回っていれば、売上が多少落ちても黒字を維持しやすい状態。
- 85%を超えると固定費負担が重く、売上が少しでも減少すると赤字に転落しやすくなる。
- 損益分岐点比率が高いというのは、売上のうち、固定費や変動費を回収するために必要な割合が高い状態で、売上のほとんどが費用の回収に消えてしまい、純利益が出にくくなります。
業界内黒字企業の特徴
黒字経営の飲食店は、以下のような共通点があります。
- 回転率が高く、安定した集客力を持っている。
- メニューの原価率が最適化されている。
- 人材教育と定着率が高く、サービス品質が安定。
- 店舗規模や立地条件に見合った家賃で運営。
- 財務数値を定期的に確認し、改善サイクルを回している。
業界内倒産企業の特徴
倒産した飲食店に多く見られる特徴は以下の通りです。
- 開業時に過大投資を行い、借入負担が重い。
- 売上予測が甘く、開業後すぐに資金繰りが悪化。
- 人件費や食材費が高止まりし、赤字が慢性化。
- 立地選定が不十分で集客が安定しない。
- 資金繰り表を作成せず、手元資金不足に陥る。
業界特有の課題
飲食業は、以下のような構造的課題を抱えています。
- 人手不足と人件費上昇の継続。
- 食材価格の高騰による利益圧迫。
- 景気変動や感染症流行など外部要因の影響を受けやすい。
- 新規出店の競争が激しく、差別化が難しい。
- 設備投資やメニュー改良に継続的な資金が必要。
まとめ
飲食業は参入しやすい一方、経営を軌道に乗せるのが難しい業種です。
特に資金繰りとコスト管理の徹底が成否を分けます。
運転資金は月商の1~2か月分を確保し、FL比率(食材費+人件費)60%以内、損益分岐点比率85%以下を目安に、日々の数字を管理しましょう。
また、開業時の過大投資は避け、借入返済が経営を圧迫しない計画を立てることが重要です。
飲食業は競争が激しい一方で、ファンづくりができれば長期的に安定した収益を生み出せる魅力あるビジネスです。財務の数字を味方にし、持続可能な経営を目指しましょう。
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