こんにちは。中小企業の財務コンサルを専門としております、行政書士・1級FP技能士・銀行融資診断士®の本間です。
今回は、昨今の価格高騰によって大きな影響を受けている「住宅着工件数」と「建築会社の資金繰り」についてお話しします。
住宅着工件数がマイナスに転じた現実
今年7月の統計によると、住宅着工件数は前年同月比でマイナスとなりました。
さらに鉱工業生産も減少し、日本経済全体に陰りが見えています。
一部では、4月に施行された改正建築物省エネ法に伴う駆け込み需要の反動減とも言われていますが、むしろ本質的な要因は、建築資材や人件費の高騰、都市部での土地価格上昇、そして住宅ローン金利の上昇といった価格負担の増大です。
特に住宅着工の減少は、消費者の「マイホーム離れ」を象徴しています。
かつては「結婚して子どもが生まれたら、一戸建てを建てる」という流れが一般的でした。しかし今では建築資材や労務費が高騰し、住宅は“高嶺の花”となっています。
数年前なら3,000万円で建てられた規模の住宅が、いまは4,000万円以上必要になるケースも珍しくありません。
住宅ローンの返済額も月々10万円台から15万円台へと膨らみ、家計を圧迫。
結果として「欲しいけれど買えない」という層が増え、着工件数は減少しているのです。
建築会社の苦しい現実
一方で、建築会社も大きな板挟みにあります。資材価格が上がれば販売価格に転嫁しなければ利益は出ません。
しかし価格を上げれば消費者が買わない。価格を据え置けばキャッシュフローが悪化してしまいます。
建築業界は工事受注から代金回収までに時間がかかります。着工時に前金が入っても、最終的な支払いは竣工時。
材料費や外注費、人件費は先に支払う必要があり、このタイムラグが資金繰りを難しくしています。
最近では建材メーカーが「前払い」や「短期決済」を求める傾向も強まり、キャッシュ負担は一層重くなっています。
利益とキャッシュは別物
ここで強調したいのは「利益とキャッシュは別物」だということです。
決算書上は黒字でも資金繰りが行き詰まれば会社は倒産します。
現預金が減る主な要因は、
- 材料費・外注費の先払い
- 人件費や社会保険料の固定支出
- ボーナスや税金など一時的に大きな支出
- 売掛金回収までの長いリードタイム
こうした要因が重なると、会計上の利益だけでは会社の健全性は測れません。
日々の資金繰り管理こそが経営の生命線なのです。
建築会社に必要な対応
では、この厳しい環境で建築会社はどう対応すべきでしょうか。ポイントは3つです。
1.資金繰り表の作成と予実管理
キャッシュの出入りを把握し、将来の残高推移を予測することで、資金ショートを早期に察知できます。
2.価格転嫁と付加価値の説明
値上げは避けられませんが、単に「高くなりました」では消費者は納得しません。自社ならではの強みを具体的に示すことが重要なはずです。
- 建材の性能を数値で示す:「この断熱材で光熱費が年間◯万円下がる」など長期的メリットを見える化。
- 保証やアフターサービスの制度化:施工後10年間の無料点検や定期メンテナンスを提供し、建てた後の安心を訴求。
- 地域密着の強み:地元気候への理解や、何かあれば即対応できる距離感をアピール。
価格競争では大手に勝てませんが、「品質」「保証」「地域密着の安心」といった価値を数字や事例で示すことで、顧客は「多少高くてもこの会社にお願いしたい」と考えるようになります。
3.金融機関との関係強化
短期的な資金不足に備えるため、信用金庫や地銀との連携が欠かせません。資金繰り表を提示し、運転資金や季節資金の融資を上手に活用することで安定した経営が可能になります。
消費者・建築会社・金融機関の三者関係
住宅着工件数の減少は「消費者が買えない」という問題だけにとどまりません。
建築会社が仕事を失えば地域経済全体に波及します。住宅建築は裾野が広く、木材業者、建材メーカー、設備会社、大工、電気工事、内装業と、多くの関連業者を巻き込んでいます。
この連鎖が止まれば、雇用や消費にも悪影響を及ぼします。だからこそ、金融機関や行政も含めた「三者の協力」が必要なのです。
銀行説明用の資料ポイント
金融機関に相談する際は「資金が足りない」だけでは不十分です。
銀行は返済可能性を重視するため、次の資料を準備すると効果的です。
- 資金繰り表(実績+予測):過去6か月の実績と今後6か月の見通しを提示。
- 工事別採算管理表:受注案件の粗利率を示し、収益管理をしていることを伝える。
- 借入金一覧表:金額・金利・返済期日を整理。一本化やリスケの余地を説明できるとベター。
- 価格転嫁の取組み:原価上昇分をどこまで反映しているか、顧客への説明の工夫など。
これらを整えて持参すれば「数字をしっかり管理している会社だ」と評価され、融資交渉がスムーズになります。
経営者へのメッセージ
建築業を取り巻く環境は厳しいですが、資金繰り改善や金融機関との対話によって危機は乗り越えられます。
大切なのは「利益が出ているか」ではなく「キャッシュをどう守るか」です。
マイホームが“高嶺の花”となった今こそ、建築会社は財務体力を磨き、次の時代に備える必要があります。
資金繰りに悩む経営者の皆さま、どうぞ一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら未来を見据えた財務戦略を築いてください。
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