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2025年6月13日、商工組合中央金庫(商工中金)は、政府が保有していた株式をすべて売却し、同時に改正商工中金法が施行されました。
これにより、長らく「半官半民」と呼ばれてきた商工中金は、資本面・法制度面の両方で完全民営化を果たしました。
今回はその背景と、中小企業の資金調達にどのような影響があるのかを整理します。
商工中金とはどんな銀行か
商工中金は、戦後の中小企業を支援するために設立された特殊な金融機関です。
組合や協同組織を通じた資金供給を担い、2008年に株式会社化されましたが、政府が株式を保有し続けていたため「半官半民」の立場を維持してきました。
特徴のひとつが、全国展開と広域対応です。
支店網は100拠点に満たないにもかかわらず全国をカバーしており、特に広域で事業を展開する企業には使い勝手の良い金融機関といえます。
さらに、商工中金の行員は法人担当として1人あたり約100社、貸出金残高で100億円規模を管理するのが目安と言われています。
これは地銀なら3人、信金なら5人程度で分担する規模を1人で担っている計算です。
そのため「地銀担当者の3人分、信金担当者の5人分の仕事をこなす」と表現されることもあります。
実際、商工中金は「ザ・金貸し」と呼ばれるほど預金の多くを融資に回し、積極的な資金供給姿勢をとっています。
担当者の力量が重視される文化も特徴的です。
支店長の判断よりも現場担当者の評価が重視される場面も多く、彼らは企業の事業内容を深く理解し、迅速な対応を行います。
経営者から見れば、担当者次第で銀行の印象が大きく変わる金融機関とも言えるでしょう。
なぜ民営化なのか
商工中金は株式会社化当初から完全民営化が予定されていましたが、リーマンショックや東日本大震災、コロナ禍などの危機対応の役割が重視され、民営化は先送りされてきました。
転機は2023年6月。政府が保有株式の売却と業務範囲拡充を定めた改正商工中金法が成立しました。
この法律に基づいて段階的に株式売却が進められ、2025年6月13日には政府保有株式がゼロとなり、完全民営化が実現しました。
附則には「施行から2年以内に事業の状況を検討する」と明記されており、2027年までに政府が民営化後の状況を評価することになっています。
完全民営化といっても、一定のモニタリングが残っている点が特徴です。
民営化で何が変わるのか
1. 危機対応の役割がシフト
これまで商工中金は「政府系金融機関」として、リーマンやコロナ禍などの非常時に特別融資を実行する役割を担ってきました。
今後はその色が薄まり、同様の役割は日本政策金融公庫(公庫)が中心になります。
平時の通常融資は従来どおり継続されるため、中小企業にとって「取引しにくくなる」という心配はありません。
2.融資規模と保証協会の扱い
商工中金は数億円から十億円規模の融資に対応できるのが強みです。
信用保証協会付き融資も扱えますが、実務的にはプロパー融資(保証なし)が中心です。
協調融資で「信金=保証付き」「商工中金=プロパー」と役割分担するケースがよく見られます。
3.対象企業の選別
今後は、財務基盤の弱い零細企業よりも、安定性や成長性を備えた中堅企業が優先される傾向が強まると見られます。
もっとも、これまでも零細企業は信金や公庫がメインの取引先であったため、実務上の影響は大きくありません。
民営化の課題と今後の行方
一方で、完全民営化にはいくつかの課題も残されています。
- 差別化の難しさ
これまでは「政府系のセーフティネット金融機関」という独自性がありましたが、今後は都市銀行・地銀・信金と同じ「民間銀行」となり、存在感をどう示すかが問われます。
- 組合金融としての使命
設立の原点である「中小企業組合支援」を今後も維持できるのか。それとも中堅企業向けの一般銀行に近づくのかは注視が必要です。
- 協調融資での役割
大型融資やプロパーを引き受ける役割を維持できなければ、他行との差別化は難しくなります。
- 収益圧力とリスク管理
民営化によって株主への説明責任が強まり、収益重視の姿勢が強くなりすぎると「リスクを取らない保守的な銀行」になってしまう懸念もあります。
中小企業経営者が備えるべきこと
商工中金の完全民営化は、平時の融資条件が急に厳しくなるわけではありません。
ただし、他の民間銀行と同じように事業性評価と収益性をより重視する姿勢が鮮明になります。
- 決算書の精度を高める
- 資金繰り管理を徹底する
- 将来の事業計画を具体的に示す
こうした準備がある企業は、商工中金を引き続き有力な選択肢として活用できます。
逆に準備不足だと「地元の信金・公庫の方が話が早い」という状況もあり得ます。
まとめ
商工中金は2025年6月13日に完全民営化を果たしました。
法人担当は1人で100社・貸出金100億円規模を抱え、地銀の3人分、信金の5人分に相当する負担をこなしています。
迅速で事業理解の深い担当者に支えられた積極的な融資姿勢は健在であり、零細企業への影響は限定的ながら、中堅企業にとっては引き続き重要な資金調達先です。
一方で、民営化によって差別化や使命のあり方が課題となり、今後の方向性は政府によるモニタリング(2027年まで)を通じて見えてくるでしょう。
社長にとって重要なのは、数字で語れる経営を整え、信金・地銀・公庫・商工中金をどう組み合わせるかを戦略的に考えることです。
当事務所では、決算書や資金繰り計画の整備を通じて、金融機関との交渉をサポートしています。
民営化後の新しい商工中金を賢く活用し、資金調達の幅を広げていきましょう。
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