こんにちは。中小企業の財務コンサルを専門としております行政書士・1級FP技能士・銀行融資診断士®の本間です。
鉄鋼・アルミ・銅・燃料・物流費など、あらゆるコストが上昇しています。
大手メーカーは価格転嫁の仕組みで対応できますが、年商1〜5億円規模の中小企業にとって「原材料価格の高騰」は経営を直撃します。
まずは、この問題が経営に与える影響を整理してみましょう。
価格高騰が経営に与える3つの影響
1.粗利率の悪化
仕入価格が上昇しても販売価格に転嫁できない場合、粗利率が低下します。
10%の粗利が7%に下がれば、同じ売上でも利益は3割減です。
2.資金繰りの圧迫
仕入額が増えれば、同じ取引量でも資金流出が大きくなります。
売上入金までのタイムラグが長い会社では、運転資金不足に直結します。
3.取引先との関係悪化リスク
納品価格を上げざるを得ない場面も出てきますが、強引な値上げは取引先離れにつながる危険があります。
以降では、この3つの影響それぞれに対応する具体的な財務戦略を解説していきます。
影響① 粗利率の悪化への対策
粗利率の悪化は「利益を削る静かな侵食」です。放置すれば経常利益はあっという間に赤字へ転落します。
対応策は大きく3つ。
- 付加価値で価格に説得力を持たせる
短納期対応、小ロット生産、アフターサポートなどで「値段」ではなく「価値」で選ばれる関係を築く。
- 固定費の徹底見直し
電気代、通信費、保険、リース料などの固定費を洗い出し、即効性のある削減を実行する。
- 財務指標の見える化
粗利率を月次でグラフ化し、危険信号を早期に察知できる仕組みを整える。
影響② 資金繰りの圧迫への対策
資金繰りの乱れは「黒字倒産」を招きかねません。対策のポイントはキャッシュの流れを整えることです。
- 支払サイトの延長交渉
- 売掛金の回収条件短縮
- 在庫の適正化
ここで重要になるのが、銀行との交渉です。
銀行との交渉は「ストーリー」で決まる
銀行は「この資金は何に使うのか」「本当に返せるのか」を最も気にします。
あいまいに「運転資金が足りない」と伝えてしまうと、「慢性的な資金不足ではないか」と疑われ、融資が難航します。
そこで有効なのが、一時的な資金需要であることを明確に説明するストーリー作りです。
- 季節資金の場合
繁忙期前に仕入や在庫を積み増す必要がある場合、過去の売上推移や在庫増加実績を提示し、「例年この時期だけ資金が膨らむが、シーズン終了後には確実に回収できる」と説明します。
- 一時的資金の場合
原材料が急騰して仕入額が増えるが、販売価格を段階的に転嫁することで一定期間後には利益が戻るケース。この場合は「仕入単価の通知書」「値上げ合意書」「転嫁スケジュール」を提示し、「価格転嫁が進むまでのつなぎ資金」と説明します。
さらに有効なのは、資金繰り予定表を添付することです。
この際に効果的なのが、融資注入と返済を組み込んだ資金繰り予定表を提示することです。
資金繰り予定表サンプル(価格転嫁+一時的資金返済シナリオ)
| 月 | 仕入支払 | 売上入金 (価格転嫁後) | 差引収支 | 融資注入 /返済 | 累計資金 残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | ▲1,200万 | +1,000万 (転嫁前) | ▲200万 | ― | 800万 |
| 5月 | ▲1,300万 | +1,300万 (5%転嫁反映) | 0 | +500万注入 | 1,300万 |
| 6月 | ▲1,350万 | +1,500万 (10%転嫁反映) | +150万 | ― | 1,450万 |
| 7月 | ▲1,400万 | +1,500万 (転嫁定着) | +100万 | ▲250万返済 | 1,300万 |
| 8月 | ▲1,350万 | +1,600万 (安定化) | +250万 | ▲250万返済 | 1,300万 |
解説
- 5月:仕入支払が増えるタイミングで500万円を一時的に借入。価格転嫁もスタート。
- 6月:追加値上げ効果で黒字化。資金残高は融資元金を上回る水準に。
- 7月・8月:増益分を原資に分割返済。最終的に融資は完済され、残高は安定。
このように「不足する時期」「必要金額」「返済可能な理由」をセットで説明することで、銀行は「一時的な資金需要で返済確実」と判断しやすくなります。
影響③ 取引先との関係悪化リスクへの対策
値上げ交渉は難しい課題ですが、合理的な説明を準備すれば取引先も理解します。
- データに基づいた説明
- 品質維持・安定供給の強調
- 段階的な価格改定の提案
こうした「納得感のある値上げ交渉」は、銀行への説明にも使えます。
取引先と合意形成できている会社は、銀行からも「安定している」と評価されます。
まとめ|守りと攻めを同時に進める
原材料価格の高騰は一過性ではなく、今後も続く可能性があります。
中小企業が取るべきは、
- 粗利率を守る「利益確保」
- 資金繰りを安定させる「キャッシュ管理」
- 取引先との信頼を崩さない「交渉力」
この3つのバランスを取ることです。
当事務所では「資金繰り表の作成」「銀行交渉サポート」「財務指標の可視化」によって、社長が自信を持って決断できるよう伴走しています。
「原材料高騰で資金繰りが厳しい」「値上げ交渉をどう進めたらいいか分からない」という課題があれば、ぜひご相談ください。
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