今回は、生命保険や少額償却など具体的な「節税スキーム」を紹介しつつ、税金対策として広く活用される経営セーフティ共済の注意点、さらに実効性ある財務改善の重要性を解説します。
はじめに
こんにちは。中小企業の財務コンサルタントを専門とする行政書士・1級FP技能士・銀行融資診断士®の本間です。
地元企業の経営者の方とお話しする中で、「節税」に関する話題がよく出てきます。
「せっかく利益が出たのに、税金で持っていかれるのはもったいない」――この気持ちは経営者であれば誰もが抱くものです。
しかし、実際の節税スキームの多くは「納税を繰り延べている」に過ぎず、会社のキャッシュフローを根本的に改善するものではありません。
よく使われる節税スキーム
1.生命保険の活用
- 定期保険や長期平準定期保険などの法人契約
- 保険料を損金算入でき、利益圧縮効果あり
- 解約返戻金が将来戻るが、その時点で益金化される
👉 「今期の税金が減ったように見える」だけで、将来の益金で結局取り戻されます。
2.少額減価償却資産の即時償却
- 30万円未満の資産を全額即時償却可能(年間300万円まで)
- 今期の費用を一気に増やせる
👉 翌年度以降の償却費が減るため、税負担の前倒し調整=繰り延べに過ぎません。
3.福利厚生制度の活用
- 社宅制度(役員・従業員の住宅費を一部会社負担に)
- 社員旅行(一定要件を満たせば非課税・損金算入可)
- 慶弔見舞金制度(経費算入可能)
👉 節税効果に加えて、従業員満足度向上という副次的効果もありますが、「経費を増やしているだけ」とも言えます。
4.退職金制度の整備
- 中小企業退職金共済、適格退職年金の導入
- 将来支払う退職金を前倒しで損金算入
👉 損金化メリットはあるものの、支出を繰り上げているだけ。将来キャッシュアウトは必ず発生します。
税金対策と資金繰り備え:経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(倒産防止共済) は、本来は取引先倒産による連鎖倒産を防ぐための制度です。
本来の目的
- 取引先が倒産した際、掛金の10倍まで借入可能
- 中小企業の資金繰りを守るセーフティネット
節税効果
- 掛金は全額損金算入(最大800万円まで)できるため、実務上は税金対策として広く活用されている
- ただし、解約時に返戻金が益金計上されるため、単純に「税金が安くなる」と勘違いしがちだが、実際には納税を繰り延べているだけで、トータルの納税額は変わらない
👉 つまり「資金繰りの備え」と「当期の税金負担を軽減する効果」を兼ね備えた制度。ただし解約時には納税が発生するため、加入はキャッシュ余力を見極めて行う必要があります。
節税策の本質:単なる「納税繰り延べ」
ここまで見てきたように、多くの節税スキームは「納税の先送り」に過ぎません。
- 今期は税額が減ったように見える
- しかし将来必ず益金が発生する
- トータルの納税額は変わらない
👉 節税には「繰り延べの間、キャッシュアウトを遅らせ資金繰りを楽にできる」というメリットはあります。しかし「税金が安くなった」「得をした」と考えるのは誤解です。
一方で「無駄削減」は実効性がある
これに対し、固定費や無駄な支出を削減する施策は、単なる繰り延べではなく キャッシュそのものを残す効果 があります。
具体例
- 借入金の借換えによる利息削減(市場金利や信用力改善によって可能な場合がある)
- 不要なサブスクやリース契約の解約
- 遊休資産の売却による現金化
- 在庫削減による運転資金圧縮
- 取引条件見直しによる仕入コスト削減
👉 これらは「支払わなくてもよくなったお金」なので、将来益金化されることもなく、確実にキャッシュフローを改善します。
経営者が取るべき優先順位
節税は資金繰りに時間的な余裕を作る効果はあります。
しかし、本当に会社を強くするのは 「無駄を削って資金を残す」こと です。
- 節税=一時的なお得感(繰り延べによる資金繰り効果)
- 無駄削減=実効的なキャッシュ改善(トータルで資金が残る)
この違いを経営者自身が理解することが、財務改善の第一歩です。
まとめ
中小企業経営者にとって「節税」は魅力的に見えます。
確かに、繰り延べによって納税時期を先送りできれば、その間の資金繰りにはメリットがあります。
しかし、トータルの納税額は変わらない。「節税で得をした」「税金が安くなった」という認識は誤解です。
一方で、固定費の見直しや無駄削減は、確実にキャッシュフローを改善し、企業の体力を高めます。
節税に飛びつく前に、自社の無駄を削れる部分はないか。これを考えることが、本当に強い財務体質を作る近道です。
「節税のテクニックを学んだら、次は財務体質改善に踏み込む」――その発想こそが、黒字を現金に変える経営への第一歩だといえるでしょう。
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