「あといくら借りられるのか?」と悩む中小企業経営者さまへ。
銀行が重視する返済能力・保証枠・担保余力を整理し、借入可能額の目安と正しい活用姿勢を解説します。
はじめに
中小企業の財務コンサルタントを専門とする行政書士・1級FP技能士・銀行融資診断士®の本間です。
「銀行から、あといくらぐらい借りられるのだろうか?」
これは多くの社長が気にされる疑問です。
借入可能額は、単純に「保証協会の枠が空いているから」といった話ではありません。
銀行の内部では複数の指標が使われており、会社の財務状態・資金使途・取引履歴が総合的に評価されます。
今回は専門的な観点から、その考え方を整理します。
銀行が融資可能額を判断する3つの柱
1.返済能力(債務償還年数・DSCR)
銀行はまず「返済できる力があるか」を確認します。代表的な指標が債務償還年数です。
- 計算式:有利子負債 ÷ 年間キャッシュフロー
- あるいは:年間キャッシュフロー ÷ 年間返済額 = DSCR(債務返済余裕率)
実務では「10年以内で返済可能」または「DSCRが1倍以上」が目安とされます。
例えば、年間キャッシュフローが800万円で、年間返済額が600万円なら、DSCRは1.3倍。
つまりキャッシュフローが返済を十分カバーしており、追加借入も検討余地ありと見られます。
ただし、余力すべてを返済に回す計算は危険です。銀行も安全余裕を見込み、余力の半分程度を追加返済原資とみなすのが一般的です。
2.信用保証協会の枠
中小企業にとって欠かせないのが信用保証協会付き融資です。
- 一般枠:制度上の上限は2億8,000万円
- 小口零細枠:2,000万円
ここで注意したいのは、これは制度上の数字であり、全企業に当てはまるわけではないという点です。
実際に利用できる枠は、既存借入残高・売上規模・財務内容で大きく異なります。
銀行実務では「保証枠が残っている=そのまま借りられる」とは考えず、過去の返済履歴や経営状況を加味して承認を判断します。
3.担保余力(不動産・資産評価)
担保余力も融資可能額に影響します。銀行は不動産担保を評価する際、時価×掛目という方法を使います。
- 例:時価5,000万円の土地建物
- 掛目70% → 評価額3,500万円
- 既存借入で2,000万円が抵当済み → 残りの余力は1,500万円
この「掛目」を通した実効的な担保価値が、追加融資の参考にされます。
ただし、現在は担保だけに依存せず、返済能力とのバランスがより重視される傾向にあります。
シミュレーションで考える借入余力
先ほどの例を使いましょう。
- 年間キャッシュフロー:800万円
- 年間返済額:600万円
この場合の返済余力は200万円です。
理論上、これを10年間返済に回せば2,000万円の追加借入が可能です。
しかし実務上は、すべてを返済に充てることはしません。
急な売上減少や突発的な支出に備える必要があるため、銀行は余力の半分、100万円程度を返済可能額とみなし、10年返済なら約1,000万円が現実的な追加借入余力という判断になります。
つまり、「理論値」と「安全値」の両方を理解しておくことが経営判断に役立ちます。
借りられるだけ借りるのは良いのか?
戦略的に有効な場合
- 経常収支が黒字でキャッシュを積み上げられている会社
- 借入資金を現預金として維持し、資金余力を「備え」として活用できる会社
このような会社では、「余裕資金を厚くしておく」こと自体が戦略的な目的になります。
銀行からも「計画的」と評価され、条件が良くなることもあります。
危険な場合
- 赤字補填のために借り増しをしている会社
- キャッシュが減少し、借入金が本業の損失に吸い込まれている会社
こうしたケースでは、借入金だけが残り、返済に行き詰まるリスクが高まります。
リスケジュールを依頼せざるを得なくなり、新規融資がストップする危険性があります。
まとめ
「あといくら借りられるか」を正しく考えるためには、
- 返済能力(DSCR・債務償還年数)
- 保証協会枠の実効性
- 担保余力の正味評価
この3つを理解する必要があります。
そして結論はシンプルです。
- 戦略的に余裕資金を確保する目的があるなら借入はプラス
- 赤字補填や目的不明の借入は逆効果
借入可能額は単なる「枠」ではなく、会社の信用力と資金計画を映すものです。
余裕のあるうちに銀行と対話し、無理のない水準を確認しておくこと。
それが中小企業の資金繰りを安定させる最も確実な方法です。
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