― 自動車整備業の社長から学んだ、口出ししないリーダーの価値 ―
中小企業の現場では、「社員が主体的に動かない」「細かく指示しないと仕事が進まない」という悩みをよく耳にします。
しかし、その背景には、社長自身が気づいていない“ある共通点”があります。
先日、自動車整備業を営む2代目の社長と話をしていたとき、この問題の本質を突くような言葉がありました。
その内容がとても示唆に富んでいたので、組織マネジメントの視点からまとめます。
「資格がないからこそ任せられた」
先代が一から築いた工場を継いだ2代目社長は、こう語りました。
「自分は整備工の資格を持っていません。それが逆に良かったと思っています。
持っていたら、工員の作業が気になって、いちいち口を挟んでしまったはずです。
今は“資格がないからお願いするしかない”。
その方が工員も“社長に頼まれたらやらなきゃ”となるんですよ。」
この言葉には、組織がうまく回る要素が凝縮されています。
任せざるを得ない状況が、
→ 信頼の前提を生み
→ 工員の主体性につながっているのです。
口出ししすぎるリーダーほど、組織が止まる理由
この話は、整備工場に限ったものではありません。
あらゆる中小企業の組織で、同じ現象が起きています。
特にマネージャー職(課長・工場長など)でよく見られるのが、
- 細かな指示
- 自分のやり方の押し付け
- 必要以上の修正やダメ出し
- 「自分がやった方が早い」という介入
これらを繰り返すと、部下は次のようになります。
●“上司のコメント待ち”になる
自分で判断する力が育たず、主体的に動けなくなる。
●チャレンジしなくなる
「どうせまた直される」と、努力が報われない感覚になる。
●責任感・やる気が下がる
指示通りにやるだけになり、仕事がつまらなくなる。
リーダーが良かれと思って口を出すほど、チームの機能は弱くなる。
これは組織論でも“典型的な弊害”として指摘されています。
「できる人ほど任せられない」という落とし穴
中小企業では、
・先代=職人肌で技能がある
・二代目=経営中心で現場経験は少ない
というケースがよくあります。
すると次のような違いが生まれます。
- 技能を持つ先代は、つい現場に入り込みがち
- 口出しが多くなる
- 工員は“社長のやり方に合わせること”が仕事になる
- 改善・工夫の余地が消えていく
一方、資格や技能がなかった二代目社長は、良い意味で“無理に任せざるを得ない”。
これは、結果として組織にプラスに働きます。
任せることができる人=組織を伸ばせる人
これはスキルではなく、リーダーの“姿勢”に近い資質です。
任せるほど、信頼と責任感が強まる
任せるという行為には、次の効果があります。
●社員が「信頼されている」と感じる
お願いされた側は、自然と責任感が湧く。
●自分で考えるスペースが生まれる
裁量があるから工夫し、成長する。
●社長が経営に集中できる
現場に入らないことで、本来の役割に時間を使える。
結果として、
任せる=弱さ
ではなく
任せる=組織を強くする力
であることがわかります。
主体性を引き出すリーダーが大切にしている習慣
社員が自走する組織では、リーダーは次のような行動を心がけています。
- 完璧を求めすぎない(80%で合格とする)
👉「完璧を目指すな、まずは終わらせろ」
- 口出しを“意図的に”減らす
- 判断基準(何を大事にするか)だけを明確に伝える
- 失敗したときの責任は自分が取ると決めている
- やり方ではなく「成果」と「目的」を共有する
中小企業では、社長のこのスタンスひとつで、組織の動き方が大きく変わります。
まとめ:任せる勇気が、組織を成長させる
今回の自動車整備業の社長の言葉は、非常に本質的です。
- 「できる人」ほど口出しが多くなる
- 口出しは部下の主体性と成長を奪う
- 資格や技能の有無ではなく、任せる姿勢が組織を強くする
- 任せることで、社員の責任感・モチベーションが高まる
つまり、
リーダーが“どこまで任せるか”が、組織の未来を決める
と言っても過言ではありません。
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