はじめに|「好きだから続けている」社長は、実は少数派?
「70歳を過ぎても社長を続けている人は、仕事が好きで、生きがいに満ちている」
そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ところが、日本政策金融公庫総合研究所の調査
「高齢でも経営を続ける『生涯現役経営者』の実態」
を読み解くと、その姿は想像以上に“現実的”で、どこか切実です。
本記事では、
- 60歳以上
- 後継者なし
- 事業売却・譲渡の意向なし
- 「働けるうちは経営を続けたい」と考えている
こうした条件に該当する 「生涯現役経営者」 の実態をもとに、
中小企業経営者として知っておきたい 5つの重要なポイント を解説します。
経営継続の最大の理由は「情熱」ではなく「生活のため」
まず最も意外なのが、経営を続けている理由です。
- 生活費をまかなうため:77.2%
- 借入金の返済が残っているから:56.7%
- 仕事が生きがいだから:33.8%
一般的に語られがちな
「好きだから」「やりがいがあるから」
という理由は、実は少数派でした。
つまり多くの生涯現役社長は、
生活を維持するために、やめたくてもやめられない
という現実を抱えています。
これは、将来の自分や、自社の姿として決して他人事ではありません。
経営は厳しい。それでも「生きがい」は感じているという現実
次に注目すべきは、経営状況です。
- 採算は「赤字基調」:39.7%
- 売上は減少傾向:半数以上
- 市場は今後10年で縮小すると予測:62.6%
数字だけ見れば、決して楽な経営ではありません。
しかし一方で、
「経営に生きがいを感じている」 と答えた人は 66.4% にのぼります。
この一見矛盾した結果の背景にあるのが、次の回答です。
中小企業経営の魅力
1位:「好きなことを仕事にできる」(70.8%)
※「収入が多い」は上位に来ません
儲からなくても、厳しくても、
自分の判断で、自分の事業を続けていること自体が価値
・・・この感覚は、多くの社長が思い当たるのではないでしょうか。
「社長」というより「創業者・個人事業主」に近い存在
生涯現役経営者の人物像を見ると、さらに特徴が浮かび上がります。
- 創業者:66.3%
- 個人事業主:62.3%
- 平均従業員数:3.3人
- 「社長一人だけ」の事業:23.2%
大企業の経営者というより、
地域で長年、自分の手で商売を続けてきた“現場の社長”
という姿が実態に近いと言えます。
この「事業=自分」という関係性の強さが、
後継者問題や事業承継の難しさにつながっていきます。
事業収入が止まったら生活できない社長が半数以上
なぜ、やめたくてもやめられないのか。
答えは、生活と事業が直結していることです。
- 生計に「あまり余裕がない」「まったく余裕がない」:77.1%
- 事業収入がなくなると生活できない:54.7%
年金だけでは足りない。
預貯金にも余裕がない。
だから 「働けなくなる=生活が成り立たなくなる」。
この状況では、
「引退」「廃業」「売却」を冷静に考える余地がないのも無理はありません。
事業承継もM&Aも難しい理由は「事業が小さすぎる」
では、なぜ承継や売却を検討しないのか。
最大の理由は、
- 「事業の規模が小さいから」:67.8%
さらに、
- 「どのような条件でも検討しない」:58.2%
個人と一体化した小規模事業は、
「売る」「譲る」という発想自体が持ちにくい のが実情です。
これは、社長の意識の問題だけではなく、
構造的に“出口が用意されていない”とも言えるでしょう。
まとめ|これは未来の社長自身の問題かもしれない
今回の調査から見えてきたのは、
「元気で前向きな高齢社長」だけではない、もう一つの現実です。
- 生活のためにやめられない
- 経営は厳しいが、生きがいはある
- 事業と自分が切り離せない
- 収入が止まると生活も止まる
- 出口戦略を描けないまま年齢を重ねる
これは特別な人たちの話ではありません。
いま現役の中小企業社長にとって、数年後・10年後の姿でもあります。
だからこそ、
- 早めに将来の生活設計を考える
- 事業と個人のお金を分けて整理する
- 承継・廃業・縮小も含めた選択肢を持つ
こうした視点が、
「生涯現役」を自分で選べる状態につながります。
※本記事は、日本政策金融公庫総合研究所の公表資料を参考に、筆者の視点で整理・解説したものです。
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「いずれは引退を考えているが、何から手を付ければいいか分からない」
「自分が働けなくなった後、事業と生活はどうなるのか不安がある」
今回の記事を読んで、そんな思いが少しでも頭をよぎった方は、
早めに一度、数字ベースで整理してみることをおすすめします。
当事務所では、
- 事業と個人のお金の整理
- 引退・縮小・承継を含めた将来シナリオの整理
- 資金繰り・借入金の見直し
などについて、社長の状況に合わせて現実的に整理するお手伝いをしています。
「相談するほどでもないが一度話してみたい」
そんな段階でも構いません。