~ 社長が知っておきたい「日本政策金融公庫の本当の役割」~
はじめに
日本政策金融公庫は、創業時や資金繰りに悩んだとき、多くの中小企業経営者が一度はお世話になる金融機関です。
「民間銀行が難しいと言ったときに相談できる存在」
そんな認識を持っている社長も多いでしょう。
ただ、日本政策金融公庫が毎年公表している決算書(以下、令和6年度の値)を読むと、
その姿は「少し頼れる銀行」どころではありません。
そこに書かれているのは、
日本経済全体を下から支えるための、国家規模の仕組みです。
今回は、日本政策金融公庫の決算書から読み取れる
特に重要な4つの事実を、社長向けにできるだけ分かりやすく整理します。
1.資本金は約11.7兆円
― メガバンクをはるかに超える「国の財布」
まず驚くのが、日本政策金融公庫の資本金の大きさです。
決算書上の資本金は
11兆7,000億円超。(純資産は15兆1,600億円超)

これは、
日本最大級のメガバンク(三菱UFJグループ)の資本金(約2.1兆円)の
5倍以上です。
なぜ、ここまで大きいのか。
理由はシンプルで、
日本政策金融公庫は国が100%出資する政策金融機関だからです。
民間銀行が行わない、あるいは行いにくい融資を
「国の方針として実行する」ためには
多少の赤字ではびくともしない財務基盤が必要になります。
この11.7兆円は、
利益を出すためのお金ではなく、
日本経済を安定させるための体力そのものです。
2.約2,000億円の赤字
― 失敗ではなく「役割を果たした結果」
次に目につくのが、
約2,008億円の当期赤字です。

民間企業であれば、相当深刻な数字です。
しかし、日本政策金融公庫の場合、この赤字は少し意味が違います。
日本公庫の役割は、
「民間銀行の補完」。
つまり、
- 創業したばかりで実績がない
- 災害や不況で一時的に苦しくなっている
こうした “民間では採算が合いにくい先” へ、
あえて融資を行うことが使命です。
当然、貸倒れリスクは高くなります。
結果として、赤字が出ることもあります。
この赤字は、
民間では引き受けきれないリスクを、国が背負った結果です。
言い換えれば、
日本経済を守るための「政策コスト」とも言えるでしょう。
3.約2.5兆円の要注意債権
― 実際に引き受けている「支援の重さ」
日本政策金融公庫がどれほどのリスクを引き受けているかは、
債権の内訳を見ると、よりはっきりします。
決算書には、次のような債権が計上されています。
- 破産・更生債権:約337億円
→ すでに法的に破綻した企業への融資
- 危険債権:約1兆405億円
→ 破綻の可能性が高い企業への融資
- 要管理債権:約1兆5,133億円
→ 返済条件を緩和しながら支援している融資
合計すると、約2.5兆円。


これは、「支援をします」という単なる掛け声ではなく、
実際に、
巨額のリスクを抱えながら、事業を続ける企業を支えている
という現実の数字です。
この金額の裏には、
苦しい状況でも会社を立て直そうとする
数多くの社長の姿があります。
4.約1.3兆円の保険機能
― 実は「裏側の保険会社」でもある
日本政策金融公庫は、直接お金を貸すだけの存在ではありません。
決算書には
保険契約準備金 約1.3兆円
という項目があります。

これは何か。
日本政策金融公庫は、
信用保証協会を通じた中小企業融資に対して、
保険の役割も担っています。
もし融資が焦げ付いた場合、
日本政策金融公庫が保険金を支払うことで、
金融機関や保証協会の負担を軽くします。
この仕組みがあるからこそ、
民間金融機関も中小企業融資に踏み出しやすくなります。
つまり、日本政策金融公庫は、
- 表では「融資」
- 裏では「保険」
という二つの役割で、日本の金融システムを支えている存在なのです。
まとめ
日本政策金融公庫は「銀行」ではなく、日本経済のインフラ
決算書から見えてきたポイントを整理します。
- 資本金11.7兆円
→ 国が本気で経済を下支えするための体力
- 約2,000億円の赤字
→ 利益より使命を優先した結果
- 約2.5兆円の要注意債権
→ 実際に背負っている支援の重さ
- 約1.3兆円の保険機能
→ 金融システムを安定させる裏方の役割
日本政策金融公庫は、単なる「お金を貸す銀行」ではありません。
道路や電力と同じように、日本経済が回り続けるための金融インフラの一部です。
そう思って見ると、公庫融資の意味や位置づけも、今までとは違って見えてくるはずです。
👉 日本政策金融公庫 第17期計算書類(令和6年4月1日~令和7年3月31日)
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