はじめに
2025年の「後継者難」による倒産件数が454件に達し、過去2番目の高水準となったことが東京商工リサーチの調査で明らかになりました。
この数字は、日本の中小企業が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。
特に注目すべきは、倒産の要因として「代表者の病気・死亡」が半数以上を占めている点です。
本記事では、このデータから読み取れるリスクの本質と、活用可能な公的支援の詳細についてお伝えします。
深刻化する「後継者難」倒産の内実
今回の調査結果を詳細に見ると、後継者難倒産の深刻な実態が浮かび上がってきます。
◆ 資本金と従業員数から見る脆弱性
倒産した454件のうち、資本金別では1,000万円未満が280件と約6割を占めています。
また、従業員10人未満の小規模企業での多発も目立っており、経営基盤が必ずしも強固でない企業ほど、後継者不在が致命傷になりやすい傾向があります。
◆ 労働集約型産業での際立ち
産業別では、サービス業(151件)や建設業(93件)といった労働集約型の産業で件数が際立っています。
これらの業種は現場のスキルや代表者の人脈への依存度が高く、
代表者が不在になった際の影響がより直接的に経営を直撃していると考えられます。
なぜ代表者の健康が「最大の経営リスク」なのか
調査において、後継者難倒産の要因で最も多かったのは「代表者の病気・死亡」で251件(構成比55.2%)でした。
行政書士として中小企業の支援に関わる中で、この数字は非常に重い意味を持ちます。
◆ 意思決定と信頼関係の集中
多くの中小企業では、代表者が営業、現場管理、さらには資金繰りまで一手に引き受けています。
代表者の健康悪化は、単なる労働力の欠如ではなく「企業の意思決定機関の消失」を意味します。
銀行からの融資交渉や、長年の信頼関係で成り立っている主要取引先との契約維持が、
代表者の不在によって一瞬で立ち行かなくなるリスクが常に潜んでいます。
◆ 9割を超える「破産」という結末
さらに深刻な事態は、これらの倒産の91.8%(417件)が「破産」を選択しているという事実です。
再建を目指す民事再生法などの手続きではなく、事業を完全に消滅させる清算型の手続きが圧倒的多数を占めています。
これは、代表者が倒れてからではもはや事業を誰かに引き継ぐ(M&Aや親族内承継)ための時間的・精神的な余裕が残されていないことを示唆しています。
事業承継・M&A補助金の概要
こうしたリスクを回避し、事業を次世代へつなぐための有力な支援策が「事業承継・M&A補助金」です。
この補助金は、事業承継やM&Aをきっかけとした経営革新や、専門家活用の費用を支援するものです。
主な申請枠と支援内容は以下の通りです。
◆ 申請枠と補助上限・補助率
| 支援枠 | 主な申請要件 | 補助上限・補助率 | 主な対象経費 |
| 事業承継促進枠 | 5年以内に親族内承継または従業員承継を予定していること | 600万〜1,000万円 (1/2〜2/3) | 設備費、店舗借入費、広報費、謝金、旅費、外注費等 |
| 専門家活用枠 | 登録されたM&A支援機関を活用すること(売り手・買い手共に対象) | 600万〜1,000万円 (1/2〜2/3) | 仲介手数料、DD費用、セカンドオピニオン、システム利用料等 |
| PMI推進枠 | M&A後の経営統合(体制整備やシナジー創出)に取り組むこと | 150万〜1,000万円 (1/2〜2/3) | システム統合費、就業規則整備費、研修費、設備費、外注費等 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継やM&Aに伴って既存事業の廃業等を行うこと | 150万円(併用可) (2/3) | 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費 |
※「専門家活用枠」でデュー・デリジェンス(DD)費用を申請する場合、上限に200万円が加算されます。また、中小企業の場合は補助率1/2ですが、小規模事業者の場合は2/3となるなど、事業規模によって優遇措置があります。
現在実施されているのは令和6年度補正予算を原資とした公募で、複数年にわたる継続実施が予定されています。
2026年1月現在、13次公募の審査が進んでおり、次なる14次公募の情報公開も期待されています。
令和8年度予算と今後の見通し
令和8年度の当初予算案(概算要求)においても、「中小企業活性化・事業承継総合支援事業(222億円)」などの支援体制強化が盛り込まれています。
ただし、足元では通常国会冒頭での衆議院解散の可能性が報じられており、予算の年度内成立は極めて流動的な状況です。(令和8年1月15日現在)
仮に成立が遅れ、暫定予算での対応となった場合でも、事業承継支援という国策の重要性が揺らぐことはないと考えられますが、今後の政治動向には引き続き注視が必要です。
まとめ
2025年の後継者難倒産の急増は、代表者の健康リスクがそのまま企業の存続リスクに直結していることを示しています。
破産という最悪の結末を避けるためには、経営者が健やかなうちに事業の「出口」を想定し、補助金などの支援制度を賢く活用することが重要です。
雇用を守り、培ってきた技術を次世代に繋ぐためにも、資金繰りの安定化と並行して、事業をどのように託すのかを早期に検討する時期に来ています。
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