従業員雇用は固定費
忙しくて業務が回らないから新たに従業員(店員、作業員)を雇用しようと考えた場合、継続的に固定費が掛かることを理解していないと、資金繰りが回らなくなる虞があります。十分な利益が出ていて、そこから人件費がすべて捻出出来るのであれば問題ありませんが、単純に増えた分以上の売上が上がらなければ、利益は減っていくことになります。人件費は直接払う給与だけでなく、通勤費、社会保険料、税金など、様々な経費や出費が伴います。
<従業員にかかる必要経費>
・給料、賞与
・残業代
・各種手当
・採用費
・社会保険料
・福利厚生費
・教育訓練費
・備品、消耗品費
社会保険料
社会保険は大きく「医療保険」「介護保険」「年金保険」に加え、「労災保険」「雇用保険」に分けられます。

健康保険料は、被保険者(従業員)の報酬に応じて保険料率を掛けて求められ、事業主(会社)と被保険者で労使折半となります。保険料率は都道府県や健康保険組合の料率にもよりますが概ね10%程度です。
介護保険料は、健康保険などの公的医療保険に上乗せして徴収されます。料率は年度により異なりますが、概ね1.5%~2%弱です。負担は労使折半です。
厚生年金保険料は、標準報酬月額や標準賞与額に18.3%を掛けて求められます。負担は労使折半です。
労災保険は、全額事業主(会社)負担です。労働者の賃金総額に労災保険率(業種によって異なる)を乗じて求められます。(令和7年度は、0.3%~8.8%まで様々)
雇用保険料は、毎月の給与総額に「雇用保険料率」を掛けて算出されます。雇用保険料率は年度、業種により異なりますが、概ね1%程度です。事業者と従業員の双方が負担しますが、従業員が負担する金額は労使折半ではなく、事業主(会社)が多く支払うようになっています。
以上から、ほぼ労使折半と考え、上記の率を全て足して2で割れば、事業主(会社)側の負担は、給料(賞与含む)の15%程度と考えて良いでしょう。
従業員にかかる経費は販売費・一般管理費
社会保険料は給料(賞与含む)の15%程度であるとしました。それ以外にも従業員コストは掛かりますが、当該会社における現在の従業員数で各費目を人数割するなどして、追加1人当たりどの程度増えるのかを計算します。これは会社により大きく異なると思われますので、以下では社会保険料も含めて、従業員経費は単純に給料(賞与含む)の50%だと仮定します。追加で雇用する従業員の年収を300万円(月額25万円)とした場合、
給料(賞与含む)・・・25万円
従業員経費・・・・12.5万円
販管費増 計・・・37.5万円
1人雇用増の損益分岐点
1人雇用増の場合に、単純に販売費・一般管理費の増(上記の例で月次37.5万円)を売上高で埋め合わせた場合の月次損益計算書は、以下のようになります。
| 増員前 | 増員後 (1人増) | 差 | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (月次) | 1,000 | 1,037.5 | +37.5 | 販売費・一般管理費 の増をそのまま売上 増でカバー |
| 売上原価 (月次) | 800 | 830 | +30 | 原価率80% |
| 売上総利益 (月次) | 200 | 207.5 | +7.5 | 粗利率20% |
| 販管費 (月次) | 100 | 137.5 | +37.5 | 従業員経費の増 |
| 営業利益 (月次) | 100 | 70 | ▲30 | 営業利益が減っている |
単純に販売費・一般管理費の増分だけ売上高が伸びても、営業利益は減ってしまいます。そこで、営業利益をキープ出来る売上高(損益分岐点売上高)はいくらになるのか、当てはめた場合のシミュレーションは以下のとおりです。
| 増員前 | 増員後 (1人増) | 差 | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (月次) | 1,000 | 1,187.5 | +187.5 | |
| 売上原価 (月次) | 800 | 950 | +150 | 原価率80% |
| 売上総利益 (月次) | 200 | 237.5 | +37.5 | 粗利率20% 販売費・一般管理費 の増分を利益ベース でカバー |
| 販管費 (月次) | 100 | 137.5 | +37.5 | 従業員経費の増 |
| 営業利益 (月次) | 100 | 100 | ±0 | 営業利益を維持 マイナスにならない ギリギリの水準 |
上記の例では、年収300万円(月額25万円)の従業員を1人増やした場合、月次で100万円の営業利益を維持するために必要な売上高は187.5万円ということになります。
仮に従来2人で月1,000万円の売上を上げていたとしたら、3人で1,187.5万円となり、1人当たりの売上高は500万円⇒396万円となります。
1人当たり粗利
従業員1人当たりがどれだけの粗利(売上総利益=売上高ー売上原価)を生み出したかを示す目安が「1人当たり粗利」で、会社の生産性や稼ぐ力が分かります。
1人当たり粗利=売上総利益÷従業員数
業種にもよりますが、黒字化のために最低限ほしいレベルは月80万円と言われています。
上記の例では、
増員前:200÷2人=100万円
増員後:237.5÷3人=79万円
です。
営業利益が増えない前提では、従業員1人増員した場合には、生産性が落ちていることが分かります。
事業としての成長性を考えれば、売上高を損益分岐点ギリギリではなく、もう少し伸ばしたいところです。ただしこれまで他の従業員に過度の負担が掛かっていたところを緩和する目的であれば、従業員増員に伴う経費を賄えるこのラインでも目的は果たせたと言えるかもしれません。
ちなみにこの「1人当たり粗利」、月120万円あれば従業員に高給を支給できるレベルと言われています。
まとめ
忙しいからと、単純に従業員を増やす前に、コスト増がいくら見込まれ、利益を維持出来る売上高の水準をシミュレーションし、定量的に判断していくことが重要です。
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