こんにちは。中小企業財務コンサルを専門としております行政書士・1級FP技能士・銀行融資診断士®の本間です。
「利益は意見、キャッシュは真実」。
経営の世界でよく語られるこの言葉は、決算書の数字を見て安心していると足元をすくわれる危険性を端的に表しています。
実際、倒産する企業の約6割は決算上「黒字」と言われています。
利益が出ているのになぜ資金が尽きてしまうのか。その理由を理解し、資金繰りの管理を徹底することこそが、企業を守る第一歩となります。
今回は、利益とキャッシュがずれる代表的な要因を5つ取り上げ、さらに現場で起きるその他の要因にも触れながら、資金繰りの重要性を社長の視点で整理します。
掛取引 ― 売上は利益になるが、現金はまだ入らない
多くの中小企業で当たり前に行われている掛取引。
売上を計上した時点で損益計算書には利益が載りますが、入金は1か月後や2か月後というケースが一般的です。
その間、仕入や人件費、外注費などは先に支払わなければなりません。
たとえば1,000万円の売上を計上して黒字になっても、入金は翌月。
その間に800万円の支払いが発生すれば、手元資金は一気に減少します。
資金繰り表を作っていなければ、「利益はあるのに口座残高はマイナス寸前」という事態を見落としがちです。
在庫 ― 利益計上してもキャッシュは棚に眠ったまま
製造業や卸売業では在庫の存在も大きなズレ要因です。
決算では、仕入れや製造原価は在庫として資産に計上されます。
その結果、損益計算書の利益は増えて見えます。
しかし、実際の現金はすでに支払済みで、まだ売上になっていません。
在庫が過剰になればなるほど、資金は倉庫に寝ている状態です。
特に繁忙期に備えて材料を先行仕入れする企業では、資金繰りが急速に悪化することもあります。
利益を追うだけでなく、「在庫日数」や「棚卸資産回転率」をチェックすることが、資金の流れを把握するうえで欠かせません。
銀行返済 ― 利益に出ない「元金返済」
銀行からの借入金返済も要注意です。
損益計算書に計上されるのは利息だけで、元金返済は経費になりません。
つまり、1,000万円の利益が出ても、同時に年間1,200万円の返済があれば、資金繰りは赤字になります。
このギャップこそ、黒字倒産の典型例です。
銀行返済のスケジュールを資金繰り表に組み込み、事業のキャッシュフローで返済が回るかどうかを常に確認することが重要です。
設備投資 ― 将来の利益のために今キャッシュが減る
工場の機械更新や新規設備投資も、利益とキャッシュのズレを生みます。
会計上は減価償却として数年に分けて費用化されますが、実際の資金支出は一括です。
たとえば3,000万円の機械を導入した場合、会計上は毎年300万円ずつ10年かけて費用計上されます。
しかしキャッシュは導入時に一気に出ていきます。利益上は黒字でも、資金ショートのリスクを抱える原因となるのです。
前払費用 ― キャッシュは出ていくが、費用はまだ計上されない
保険料やリース料、家賃などを1年分まとめて支払うケースでは、支払時点でキャッシュが減りますが、損益計算書では月割りで費用化されます。
そのため、実際の資金は出ているのに、P/L上の利益はまだ減らないというズレが生じます。
例えば年間120万円の保険料を一括払いした場合、キャッシュはすぐに120万円減りますが、損益計算書には毎月10万円ずつしか計上されません。
この「見かけ上の黒字」に惑わされると、資金繰りの悪化に気づかず、気がつけば残高不足という事態になりかねません。
その他のズレ要因 ― 「利益はあるのにお金が無い」の正体
ここまで代表的な5つを挙げましたが、実際の会社の現場ではこれ以外にも様々な要因が存在します。
たとえば、仕入先への支払い条件の変更 によって資金繰りが圧迫されるケース。
また、法人税などの税金は損益計算書に計上されますが、実際の支払いは決算後にやってくるため、利益とキャッシュにタイムラグが生じます。
こうした要因が複雑に重なることで、「利益が出ているのにお金が無くなる」という現象が起こるのです。
だからこそ、決算書の利益に一喜一憂するのではなく、資金の流れそのものを見える化し、将来の動きを見通す キャッシュフロー経営 が求められます。
資金繰り管理の重要性
黒字倒産の多くは、「決算書で安心していたが、キャッシュの流れを見ていなかった」ことが背景にあります。
社長自身が資金繰りの見通しを数字で把握できるよう、最低限のツールとして 「資金繰り表」 を持つことが不可欠です。
これは難しい会計帳簿ではなく、入金と支出を月ごとに並べただけのシンプルなものでも十分です。
資金繰り表を用意すれば、今後3か月で資金が足りるのか、銀行返済に耐えられるのか、繁忙期の仕入に備えて運転資金が必要か、などが一目で分かります。
そして銀行に相談する際も、資金繰り表を示すことで、担当者からの信頼を得やすくなります。
まとめ ― 黒字でも油断は禁物
利益は「意見」に過ぎず、キャッシュこそが「真実」です。
黒字倒産を防ぐためには、損益計算書の数字だけではなく、資金の実際の動きを把握する習慣が欠かせません。
掛取引、在庫、前払費用、銀行返済、設備投資、そしてその他のさまざまな要因。
これらを正しく把握し、キャッシュフロー経営を実践することが、会社を守り、持続的な成長につなげる最大のカギとなります。
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