中小企業のDXは本当に遅れているのか?
「中小企業はデジタル化に遅れている」
こんな言葉を、新聞やセミナーで何度も耳にしてきた社長も多いのではないでしょうか。
ところが、実際の現場を数字で見てみると、そのイメージは少し違うようです。
この記事では、日本政策金融公庫が2024年3月に全国の中小企業4,350社以上を対象に行った「中小企業のデジタル化に関する調査」をもとに、
中小企業のDXの“本当の姿”を、経営者目線で読み解いていきます。
意外な事実①
DXは進んでいる。でも主役はAIではなかった
まず驚かされるのが、次の数字です。
「5年前と比べてデジタル化が進んだ」と回答した企業は69.6%
約7割の中小企業が、確実に変化を実感している。
これは決して小さな数字ではありません。
ただし、その中身を見てみると、世間で騒がれる「AIブーム」とは、少し距離があります。
導入率が高いのは、
- ホームページ・SNS:88.5%
- 会計システム:86.9%
といった、事業の土台となるデジタル化。
一方で、
- AI(人工知能):5.0%
- RPA(業務自動化):8.0%
と、先端技術の導入はまだ少数派です。
これは「遅れている」のではなく、
限られた経営資源をどう使うかを冷静に判断している結果とも言えます。
すぐに効果が見えにくいAIよりも、
まずは会計・業務管理・情報発信といった「足腰」を固める。
まさに、中小企業らしい現実的なDXです。
意外な事実②
最大の壁は「コスト」だけではない
DXの課題として最も多かったのは、
- 導入コストが高い:56.2%
ここまでは、多くの社長が「そのとおりだ」と思うところでしょう。
しかし、見逃せないのは次の数字です。
- 費用対効果が分かりにくい:50.0%
- 従業員がツールを使いこなせない:33.1%
- 推進できる人材がいない:30.2%
つまり、問題は
お金 × 効果測定 × 人 の三重苦。
調査には、こんな現場の声も載っています。
既存従業員のデジタルツールへの耐性が低く、うまく導入が進まない
DXは「ツールを買えば終わり」ではありません。
経営戦略・人材育成・社内の進め方まで含めた、立派な経営テーマなのです。
意外な事実③
小さな会社でも、DXの“優等生”は生まれる
今回の調査で、少し希望を感じさせるデータもありました。
調査対象16項目※すべてのデジタルツールを導入している
「全方位型DX企業」が6社存在。
※ ホームページ・SNS、会計システム、受発注・在庫管理、勤怠管理、クラウドサービス、電子契約など、業務全般に関わる主要なデジタルツールの導入状況を指す。
そして、そのうち 2社は従業員49人以下。
規模が小さいからDXができない、というわけではありません。
トップの意思と方向性次第で、
小さな会社でも先進的な取り組みは可能だという証拠です。
意外な事実④
DXの成果は「変革」より「効率化」
では、実際にどんな成果が出ているのでしょうか。
最も多かったのは、
- 業務効率化:67.6%
- 業務の標準化:58.2%
一方で、
- ビジネスモデルの変革:17.2%
- 新事業の創出:16.1%
は、まだ少数派。
多くの中小企業は、
「攻めのDX」より「守りのDX」を着実に進めている段階です。
これは決して消極的ではありません。
まずはムダを減らし、ミスを減らし、数字を見える化する。
そこから次の一手を考える、極めて堅実な戦略です。
まとめ
中小企業DXは、静かに、しかし確実に進んでいる
今回の調査から見えてきたのは、
- 中小企業のDXは「遅れている」のではなく
- 地味だが、現実的に前進している
という姿でした。
さらに注目すべきは今後5年間の意欲です。
- 現在「積極的に取り組んでいる」:47.6%
- 今後「積極的に取り組む予定」:57.2%
DXへの前向きな空気は、確実に高まっています。
最後に、社長であるあなたに問いかけたいと思います。
あなたの会社では、DXを「コスト」として見ていますか?
それとも、将来の選択肢を増やす「投資」として見ていますか?
数字をどう使い、どう整えるか。
その一歩が、DXの第一歩かもしれません。
※本記事は、日本政策金融公庫総合研究所の公表資料を参考に、筆者の視点で整理・解説したものです。
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- 補助金の対象になるのか
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