この記事でわかること
- 借入は「長期」と「短期」どちらが有利なのか
- 銀行が長期借入を勧める理由
- 資金繰りを安定させる借入期間の考え方
「借入はなるべく早く返した方が良い」
そう考えている経営者の方は多いと思います。
確かに、短期間で返済すれば利息は少なくて済みます。
一方で銀行からは、
「もう少し長めの返済期間にしましょう」
と提案されることも少なくありません。
では、借入は 長期が良いのでしょうか。それとも短期が良いのでしょうか。
結論から言うと、借入期間の良し悪しは一概には決まりません。
大切なのは 資金の性格に合わせて借入期間を決めることです。
借入期間の基本原則「期間対応」
金融実務では、
資金の使い道と返済期間を合わせる
という考え方があります。
これを「期間対応」と呼びます。
例えば次のようなケースです。
設備資金
- 建物
- 機械装置
- 構築物
- 太陽光設備
このような投資は、数年から十数年にわたって事業に貢献します。
そのため通常は
長期借入で返済していく形になります。
設備が生み出すキャッシュで、少しずつ返していくイメージです。
一方で、運転資金は性格が異なります。
運転資金
- 仕入資金
- 売掛金の回収までのつなぎ資金
- 季節資金
これらは、数か月から1年程度で回収される資金です。
そのため
短期借入で対応する
のが一般的です。
短期借入のメリット
短期借入には次のようなメリットがあります。
- 金利が低い
- 利息総額が少ない
- 財務規律が保たれる
また銀行から見ると、
短期借入を問題なく回せる会社=資金繰り管理ができる会社
という評価につながることもあります。
そのため、資金繰りに余裕がある会社では、短期借入を中心に運用しているケースもあります。
長期借入のメリット
一方で、多くの中小企業では 長期借入の方が資金繰りは安定します。
長期借入のメリットは次の通りです。
- 毎月の返済額が小さくなる
- 資金繰りに余裕が生まれる
- 景気変動に耐えやすくなる
経営において重要なのは、
「返済できるか」よりも「資金繰りが回るか」
です。
どんなに利益が出ていても、資金繰りが詰まれば会社は立ち行かなくなります。
そのため銀行も、実務的には
「少し長めの返済期間にしておきましょう」
と提案することが多いのです。
中小企業でよくある失敗
実務で見かける典型的な失敗は、
設備投資を短期借入で行うケースです。
例えば
設備投資:1,000万円
返済期間:3年
設備は10年以上使うのに、返済は3年。
この場合、利益が出ていても
資金繰りだけが苦しくなる
という状況が起きやすくなります。
設備投資は、できるだけ
設備の耐用年数に近い期間
で借りる方が資金繰りは安定します。
本当に見るべき指標は「DSCR」
借入の安全性を考えるとき、多くの経営者は
「借入はいくらあるか」「何年で返せるか」といった点に目が向きがちです。
もちろんそれも大切ですが、銀行が実務でより重視しているのは
DSCR(返済余裕率)
という指標です。
DSCRは、簡単に言うと
「借入の返済にどれくらい余裕があるか」
を示す数字です。
◆ DSCRの計算式
DSCRは次の式で計算されます。
DSCR = 事業で生み出したキャッシュ ÷ 年間返済額
ここでいう「事業で生み出したキャッシュ」は、実務では次のように考えます。
営業利益 + 減価償却費
例えば次のようなケースです。
営業利益 1,200万円
減価償却費 300万円
年間返済額 1,000万円
この場合、
DSCR = 1,500万円 ÷ 1,000万円 = 1.5
となります。
つまり、借入を返済しても 500万円の余裕がある 状態です。
◆ DSCRの目安
一般的な目安は次の通りです。
| DSCR | 評価 |
|---|---|
| 1.5以上 | かなり余裕がある |
| 1.2前後 | 銀行が安心する水準 |
| 1.0 | 余裕がない状態 |
| 1.0未満 | 返済能力に不安 |
銀行は、融資の審査をする際に
「この会社は毎年きちんと返済を続けられるか」
という視点で決算書を見ています。
その判断において、DSCRは非常に分かりやすい指標なのです。
【関連記事】👉
銀行融資の成否を分ける「DSCR」とは?返済余力を見える化して資金繰りを安定させる方法
借入の総額より「返済余裕」
借入の安全性を判断するとき、
「借入が多いかどうか」
だけで判断するのは適切ではありません。
借入が多くても、事業で十分なキャッシュを生み出していれば、返済に問題はありません。
逆に、借入がそれほど多くなくても、返済余裕が小さい場合には資金繰りが厳しくなることもあります。
その意味で、DSCRは
借入の総額ではなく、返済余裕を見る指標
と言えるでしょう。
借入は「安全寄り」で考える
実務では、次の考え方がバランスの良い方法です。
借入は少し長めに設定する
そのうえで、
余裕があるときに繰上返済する
この方法であれば
- 資金繰りの安全性を確保できる
- 利息も減らすことができる
という両方のメリットを得ることができます。
まとめ
借入期間の考え方を整理すると次の通りです。
◆ 基本原則
設備資金 → 長期借入
運転資金 → 短期借入
◆ 実務の考え方
借入は少し長めに設定する
余裕が出たら繰上返済する
そして本当に重要なのは、
借入期間よりも返済余裕(DSCR)です。
借入の期間設計は、資金繰りの安定性を大きく左右します。
銀行に言われるまま決めるのではなく、自社のキャッシュフローを踏まえて考えることが大切です。
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