銀行融資というと、多くの経営者は
「決算書の数字が悪いと、もう無理だ」
そう感じてしまいがちです。
確かに、銀行は決算書を重視します。
しかし、決算書だけで融資の可否が最終決定されているわけではありません。
銀行の融資審査は、実務上
一次評価・二次評価・三次評価
という三段階で行われています。
このうち、経営者があまり知らない一方で、
実は融資の可能性を左右する重要なポイントとなるのが、
三次評価(潜在返済能力)です。
銀行融資の評価は「三段階」で行われている
◆ 一次評価:決算書を点数化する定量評価
一次評価は、決算書の数値をもとにした定量評価です。
銀行は、財務諸表の数字を一定の基準で点数化し、
企業を格付けランクに振り分けます。
簡易的には、次のような項目がチェックされます。
- 債務超過かどうか
- 営業利益が2期連続赤字か
- 繰越損失があるか
- 既存融資の返済に延滞がないか
この段階で評価が低いと、
「原則、新規融資は難しい」という判断が出ることもあります。
◆ 二次評価:定性評価だが、実務では限定的
二次評価では、
- 業界動向
- 事業内容の将来性
- 経営者の資質や経営姿勢
といった、数字に表れない要素が評価対象になります。
ただし実務上は、
「特段のプラス要因やマイナス要因がない限り、大きく点数は動かない」
というのが現実です。
◆ 三次評価:代表者個人まで含めて見る「潜在返済能力」
三次評価では、銀行は初めて
会社単体ではなく、代表者個人まで含めた返済能力を確認します。
具体的には、
- 代表者個人の収支状況
- 預貯金や不動産などの資産余力
- 実際の返済実績(条件変更なく返済できているか)
といった点が評価対象になります。
ここが重要なのは、
三次評価は主観ではなく、比較的客観的な事実で判断される点です。
そのため、
一次評価で厳しい判定が出ていたとしても、
三次評価によってランクアップし、
融資が可能になるケースも実務上、珍しくありません。
「赤字=即アウト」ではない理由
◆ 三次評価が効いた実務事例(金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕より)
【事例①:赤字の原因が代表者報酬だった会社】
2期連続赤字、繰越欠損金あり。
形式的には「要注意先」に区分されてもおかしくない企業です。
しかし、赤字の主因は
多額の代表者報酬にありました。
- 返済に延滞は一切なし
- 実質的には代表者個人の資産から返済が行われている
この点が確認できたため、
銀行は「正常先」として評価しています。
ここで見られているのは、
赤字かどうかではなく、
なぜ赤字なのか、どうやって返済しているのかという点です。
【事例②:実質債務超過でも、個人資産を含めて評価】
不動産業で毎期赤字、含み損も多く、
会社単体で見ると「破綻懸念先」とも考えられる状況。
しかし、
- 代表者が多額の個人資産を保有している
- 実際に個人預金から返済を行っている
- 有事には私財を提供する意思が確認できている
これらを踏まえ、
法人・個人一体で見れば返済能力はあると判断され、
評価は「要注意先」にとどまりました。
三次評価の正体は「法人・個人合体B/S」
三次評価を実務的に整理すると、
銀行が行っていることはシンプルです。
- 法人の貸借対照表
- 代表者個人の資産・負債
これを合算し、
実質的な自己資本と返済余力を確認しています。
法人と個人の間での貸付・借入は相殺し、
最終的に「法人・個人合算自己資本」を把握します。
なお、
個人資産を提示したからといって、
自動的に担保に取られるわけではありません。
あくまで、
「有事の際には資産を提供する意思がある」
という意思表示を行って初めて、
三次評価として反映されます。
個人資産は「隠す」のではなく「使い方が重要」
銀行に個人資産を出すことに、不安を感じる経営者は少なくありません。
しかし、三次評価の目的は
担保を取ることではなく、
返済能力の裏付けを確認することです。
何も提示しなければ、
評価は一次評価の低いまま動きません。
一方で、
- 代表者個人の収支
- 所有不動産
- 個人借入や保証債務
を整理して提示することで、
融資を前向きに検討できる材料が揃います。
銀行を動かすのは「お願い」ではなく「材料」
銀行融資を前に進めるために必要なのは、
感情的なお願いではありません。
- なぜ資金が必要なのか
- どうやって返済するのか
この2点を、
銀行が稟議書を書ける形で示すことが重要です。
三次評価を意識した資料が揃えば、
銀行側も合理的に判断でき、
融資の可能性は大きく変わります。
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まとめ
◆ 決算書がすべてではない。評価は「動かせる」。
銀行融資は、
決算書の点数だけで機械的に決まるものではありません。
- 一次評価が厳しくても
- 二次評価で大きく動かなくても
三次評価(潜在返済能力)という、
実務的な調整余地が残されています。
会社単体で難しい局面でも、
代表者個人の収支・資産・返済姿勢を整理し、
正しく伝えることで、
評価が変わる可能性は十分にあります。
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こうしたお悩みについて、
数字と銀行実務の両面から整理するサポートを行っています。
初回は、
- 決算書
- 借入状況
- 代表者個人の状況(可能な範囲)
をもとに、
融資の可能性と改善ポイントを一緒に確認します。
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