この記事でわかること
- 3月に銀行からの提案が急増する裏事情
- 追加融資や定期預金の要請を断る際の判断基準
- 銀行の「お願い」に対する角を立てない具体的な切り返しフレーズ
- 「お付き合い」で引き受けてしまった後に生じるリスク
- 銀行と対等なパートナーシップを築くための財務管理
はじめに
3月が近づくと、メインバンクの担当者から
「追加で融資を受けてほしい」
「定期預金を作成してほしい」
といった打診を受ける機会が増えます。
融資を受けている立場からすると、
「断ったら今後の審査に響くのではないか」
「担当者の顔を潰してしまわないか」
と不安を感じる経営者の方も少なくありません。
しかし、銀行からの提案すべてに応じる必要はありません。
大切なのは、銀行側の事情を理解した上で、自社の財務状況に基づいた冷静な判断を下すことです。
無理なお願いを整理し、自社の財務戦略を優先することは、決して銀行との関係を悪化させるものではありません。
3月は銀行の「営業が強まる」時期
3月は多くの銀行にとって年度末にあたります。
各支店や担当者には、融資残高、預金残高、投資信託の販売件数など、厳しい目標が課されており、
3月はその最終的な追い込みの時期です。
この時期、銀行内では「あと数千万円の実行で目標達成」といった進捗確認が日々行われています。
そのため、以下のような「お願い営業」が活発になります。
- 資金使途が決まっていない追加融資(押し貸しに近い提案)
- キャンペーンを理由にした定期預金の作成
- 投資信託や保険商品、関連リース会社との契約
- 既存の融資に対する担保や保証人の追加要請
これらの提案の多くは、企業の成長を支援するためというよりも、
銀行側の「数字の帳尻合わせ」という側面が強くなりがちです。
追加融資の要請を判断する基準
銀行にとって、業績が安定しており返済リスクの低い企業は、効率よく融資実績を積める絶好の営業対象です。
「借りられるうちに借りておく」という考え方は一理あります。
将来の不測の事態に備え、手元資金を厚くしておく(キャッシュ・イズ・キング)ことは経営の安定に寄与するからです。
しかし、以下の条件に当てはまる場合は、慎重になるべきです。
- 具体的な資金使途がない:
ただ通帳に眠らせるだけの資金に利息を払うのは非効率です。
- 金利条件が悪い:
年度末の目標達成のために高い金利を提示されるケースが稀にあります。
- 返済負担が重すぎる:
元金返済が始まることで、将来のキャッシュフローを圧迫する懸念がある。
判断の軸は、銀行のノルマではなく、あくまで自社の「資金繰り計画」にあるべきです。
断る際に使える「具体的な切り返しフレーズ集」
「断ると関係が悪くなる」と心配な場合は、感情的な「拒絶」ではなく、理路整然とした「見送り」を伝えましょう。
担当者が上司に報告しやすい「理由」を添えるのがコツです。
- 追加融資を断る場合
「お声がけは大変ありがたいのですが、現在は無駄な金利負担を抑え、自己資本比率を高めるステージと位置づけています。
次回の設備投資計画の際には、真っ先に御行にご相談させていただきます」
- 定期預金を断る場合
「現在、支払利息と預金利息のバランスを精査しており、資金効率の観点から新たな拘束性預金は作成しない方針です。
運転資金として機動的に動かせる状態を維持したいため、今回は見送らせてください」
- 投資信託・保険を断る場合
「弊社では現在、本業への再投資を最優先としており、リスク資産への運用は社内規定で制限しています。
方針が変わる際にはこちらからお声がけします」
このように「会社の経営方針として決まっている」という形にすれば、担当者個人のメンツを潰さずに済みます。
「お付き合い」で引き受けてしまった場合のリスク
「一度くらいなら」と無理なお願いに応じてしまうと、短期的には担当者に感謝されますが、
長期的には以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- 「お願いすれば通る先」というラベルを貼られる
一度応じると、翌期以降も「困った時のターゲット」として真っ先に名前が挙がるようになります。
結果として、本業に集中したい時期に不要な営業対応を強いられることになります。
- 実質金利の上昇
追加融資を受けつつ、その資金を定期預金に回す(歩積預金のような状態)と、実際に自由に使えるお金に対する利息負担、つまり「実質金利」が跳ね上がります。
これは財務諸表の数値を悪化させる原因となります。
- 財務体質の硬直化
不要な借入は貸借対照表を膨らませ、自己資本比率を低下させます。
本当に資金が必要になった際に、借入枠が埋まっていて審査が通りにくくなるという本末転倒な事態を招きかねません。
銀行員が「無理なお願いはできない」と思う経営者とは
銀行員が無理なお願いを控える経営者には共通点があります。それは「自社の数字を正確に把握し、根拠を持って対話している」という点です。
具体的には、以下の資料を日常的に提示できている経営者です。
- 精度の高い資金繰り予定表
- 月次の試算表(早期提出)
- 主要な財務指標(DSCRや自己資本比率など)の推移
「今はキャッシュフロー上、このラインを下回るわけにはいかない」と具体的な数値で語る経営者に対し、銀行員は無理な押し売りができません。
むしろ「この社長は財務をしっかり管理している」という信頼につながり、本当に必要な融資の際の好条件を引き出しやすくなります。
銀行との関係は「対等」であるべき
銀行も営利を目的とした企業であり、融資は「助けてもらっている」のではなく「資金という商品を仕入れている」という対等な取引です。
健全なパートナーシップとは、銀行が困っている時に助けることではなく、双方が持続可能な形で利益を出し合える関係です。
必要な融資は受ける、不要なものは断る。このシンプルな線引きができる経営者こそが、銀行から長く信頼される存在となります。
まとめ
3月の銀行からの提案は、多くの場合、銀行側の年度末事情が背景にあります。
これらをすべて受け入れることが「良い関係」ではありません。
自社の資金繰り計画と財務戦略に基づき、必要なものと不要なものを明確に選別してください。
その際、数値に基づいた客観的な判断基準を持つことが、銀行との建設的な交渉を可能にします。
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