コロナ禍において、多くの中小企業が利用した「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」。
当時は「とにかく資金をつなぐこと」が最優先であり、制度の細かな構造まで理解する余裕がなかった、という方も多いのではないでしょうか。
しかし今、令和8年(2026年)を前にして、このゼロゼロ融資が別の意味で経営に影響を与え始めています。
その背景を理解するために、まずは制度そのものから整理しておきます。
そもそも「コロナ融資(ゼロゼロ融資)」とは何だったのか
ゼロゼロ融資は、コロナ禍における資金繰り支援策として、国(政府)が制度設計した全国共通の融資スキームです。
そのため、基本的なルールは、日本政策金融公庫であっても、地方銀行や信用金庫であっても、大枠は同じでした。
ただし、
「どの金融機関を窓口にしたか」
「どの保証の仕組みを使ったか」
によって、実務上の性質にはわずかな違いが生じています。
大きく分けると、
・政府系(日本政策金融公庫)
・民間金融機関(地方銀行・信用金庫など)
という2つのルートがありました。
どこの金融機関でも共通だったこと
以下の点は、金融機関を問わず共通していた制度の根幹部分です。
・実質無利子(当初3年間)
利子補給制度により、当初3年間は国が利息相当額を負担する仕組みでした。
・無担保
原則として担保を求められずに借り入れが可能でした。
・据置期間の設定
元金の返済を一定期間待ってもらえる設計となっていました。
・令和8年に向けた返済の山
据置期間が明けると返済が本格化する点は、どこで借りていても共通です。
制度は同じであるにもかかわらず、
令和8年前後に「同時多発的に」資金繰りの問題が表面化しやすいのは、この構造が理由です。
金融機関によるわずかな違い
◆ 日本政策金融公庫(政府系)
日本政策金融公庫は、国の政策を直接実行する機関です。
比較的、据置期間を長く(最大5年など)設定しやすい傾向がありました。
その結果、公庫からの借入がある企業ほど、2026年(令和8年)前後に返済負担が一気に重くなる可能性があります。
◆ 民間金融機関(地方銀行・信用金庫など)
いわゆる「民間ゼロゼロ融資」です。
信用保証協会が100%保証する仕組みのため、銀行が直接リスクを負う形ではありません。
銀行によっては、据置期間を2〜3年と短めに設定するよう促したケースもあり、
その場合、すでに令和6年〜7年に返済が始まっている企業も少なくありません。
注意が必要な「銀行の姿勢」の違い
制度は同じでも、返済が苦しくなった際の対応には差が出ます。
メガバンクや地方銀行では、収益性や将来性をよりシビアに見られる傾向があります。
一方、信用金庫や信用組合は地域密着型で、経営改善の相談に比較的親身に応じてくれるケースもありますが、金融機関自身の体力には限りがあるため、早めの相談が重要になります。
令和8年に何が起きるのか
――ゼロゼロ融資の「据置終了」が意味するもの
ゼロゼロ融資には、据置期間(元金返済を猶予する期間)が設定されていました。
多くの融資で据置期間は最大5年とされ、
2020年から2021年前後に借り入れた企業が最大期間を選択していた場合、
その期限が切れるのが令和8年です。
「返済の断崖」と呼ばれる状態は、
利息のみを支払っていた状態から、元金返済が本格的に始まる構造的な変化を指しています。
返済額が急に重く感じられる理由
据置期間が長かった融資ほど、返済開始後の負担は相対的に重くなります。
残された返済期間が短くなるためです。
たとえば、1,000万円を10年返済で借り、5年間を据置にした場合、
残り5年間で元金1,000万円を返済する必要があり、据置なしの場合と比べると、
毎月の元金返済額は単純計算で約2倍になります。
これは制度上の欠陥というより、当時「時間を買った」ことの裏返しと捉える方が現実的でしょう。
利息と元金は、猶予期間が異なる
ゼロゼロ融資の仕組みを整理する上で重要なポイントとして、
利息と元金の扱いが異なるという点があります。
利息については、当初3年間のみ、利子補給制度によって国が負担していました。
一方、元金については、最大5年間返済を猶予する仕組みでした。
つまり、
利息の免除は3年で終了し、元金の猶予はその後も続く
という構造になっています。
時系列で見る支払い負担の変化
2020年に融資を受けた一般的なケースでは、支払いは次のように変化します。
1〜3年目:
無利子+元金据置
実質的な支払い負担はありません。
4年目以降(据置期間中):
無利子終了+元金据置
利息のみの支払いが発生します。
据置期間終了後:
元金返済開始
利息と元金の両方を支払うフル返済に移行します。
このように、負担は段階的に増えていく構造になっています。
なぜ「令和8年」が怖いのか(利息の視点)
令和8年に元金返済が始まる企業は、すでに利息の支払いが始まっている状態です。
ただし、低金利環境のため、利息だけであれば月数千円〜数万円程度に収まっているケースも多く、
「まだ大丈夫」と感じやすい状況にあります。
しかし、元金返済が始まると、
そこに数十万円単位の元金返済が一気に上乗せされます。
利息数千円から、元金と利息を合わせた数十万円へ。
この急激なキャッシュアウトの変化が、「返済の断崖」と呼ばれる状態の実態です。
利子補給の仕組みについての補足
当初3年間の無利子も、実務上は
一度銀行に利息を支払い、後から国から補填される
という形をとっていたケースが多くありました。
そのため、通帳上は利息が引き落とされていても、実質的な負担はゼロだった企業もあります。
この補給はすでに終了しています。
「今は利息だけなら払えている」という感覚のままいると、
元金返済が始まった途端に資金繰りが急変する可能性があります。
「延命」から抜け出すために考えたい視点
◆ キャッシュフローを月次で見通す
重要なのは、返済開始後も通帳残高が維持できるかを、月単位で確認することです。
営業利益は毎月の返済額を上回っているか。
上回っていない場合、現預金は何か月もつのか。
この見通しを持つことが、すべての対策の出発点になります。
◆ 資本性劣後ローンという選択肢
一部のケースでは、既存借入を資本性劣後ローンへ組み替える選択肢が検討されることもあります。
ただし、実現性の高い経営改善計画が求められます。
◆ 前向きな条件変更という考え方
返済条件の変更も、単なる先送りでは意味を持ちません。
不採算事業の整理や収益構造の改善を前提に、「立て直すための時間」を交渉することが重要になります。
まとめ:令和8年は「答え合わせ」の年になる可能性
ゼロゼロ融資によって得られた時間は、事業の構造を見直すための猶予期間でした。
令和8年は、その期間をどう使ったかが、返済開始という形で問われる年になる可能性があります。
不安を感じる場合は、
借入一覧表(返済開始日・利息補給終了時期・月額返済額)
を整理することから始めてみてください。
ご相談はこちら
コロナ融資について、
・利息補給がいつ終わったのか
・元金返済がいつ、いくら始まるのか
・返済開始後のキャッシュフローは耐えられるのか
こうした点を整理するだけでも、今後の選択肢は明確になります。
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