貸借対照表が重要
銀行にとっては、単年度の経営成績である損益計算書よりも、これまでの経営の蓄積である貸借対照表がより重要です。貸借対照表は、会社が今後事業を継続していくだけの資産があるのか、負債の返済余力はあるのか、これまでの利益の蓄積がどの程度なのかなど、銀行にとっての「安全性」を確認することが出来る最も重要な財務諸表です。
以下では、貸借対照表の見方を中心にご説明いたします。

貸借対照表の左側はお金の使い道
貸借対照表の左側(「借方」と言います)には「流動資産」「固定資産」を記載します。「資産の運用形態」(どのようにお金を使ったか)を表しており、無駄な資産を持たず、効率的に利益を生み出せるかか、という見方をします。

【流動資産】現金預金
左側「借方」は現金化しやすい順番に表記されています。会社は資金繰りが回らないと、いくら損益計算書で利益が出ていても倒産してしまいます。「借方」で最も重要なのは「現金・預金」です。資金繰りが回るかどうかは、十分な現預金があるかどうかにかかっています。
月商(年商を12で割った値)の3か月分以上あれば余裕が持てます。月商の2か月以下ですと、やや資金繰りが苦しくなる傾向にあります。月商の1か月分しかない場合は資金繰りが回らず、倒産の可能性が出てきます。
【流動資産】受取手形、売掛金
「現金・預金」の次に表記される「受取手形」「売掛金」等の売上債権は、回収に何か月かかるのか、月商に対し多すぎないかという見方をします。回収期間が短ければ、資金が早く手元に入るため、資金繰りが楽になります。
月末締め・翌月払いであれば、月商の1~1.5か月の残高が適正範囲ですが、3~4か月分あるなど、多すぎると、回収不能の「不良債権」が含まれているか、利益操作で水増ししているのではないかと見られてしまいます。
同業他社との比較や、前期比なども重要です。業界平均よりも回収期間が長ければ資金繰りが悪い会社と見られますし、前期比で売上が伸びていないのに、売上債権が極端に増えていたりすると、おかしいと思われてしまいます。
【流動資産】棚卸資産(在庫)
在庫が適正量かどうかをチェックします。
在庫を買ったキャッシュは、在庫が売れるまでの間回収出来ません。そのため在庫が多いと資金繰りが悪化します。「棚卸資産回転期間」は、企業の棚卸資産が、何日分の売上高に相当するかを「期間」(日数、月数)で表したものです。この期間は短い方が基本的には良いということになりますが、短すぎると欠品になるため、ビジネスモデルや業界平均を考慮し、適正量になっているかを確認します。
また、ボリュームが業界平均と比べて多い場合や、前期比で増えている場合などは粉飾の疑いを持たれる可能性があります。
【固定資産】有形固定資産
機械装置や建物、備品等を整理しますが、減価償却がされているのかをチェックします。利益が思うように出ない会社では減価償却費を計上しない場合がありますが、銀行は固定資産台帳(明細)などで計算しなおすため、会社側が計上するかしないかは意味を持ちません。
貸借対照表の右側はお金の調達元
貸借対照表の右側(「貸方」と言います)には「流動負債」「固定負債」「自己資本」を記載します。「資産の調達源泉」(どのようにお金を集めたか)を表しており、お金の集め方に無理はないか、他人依存(負債)は多すぎないか、を見ます。

【自己資本】
自己資本(純資産)は銀行が最初に見るところです。資産よりも負債が大きければ自己資本がマイナスになり、「債務超過」となります。この状態は、会社を清算して負債を返しても、全ての負債を返済出来ないことを意味します。貸したお金を返せない会社には、銀行はお金を貸してくれるはずがありません。
【流動負債】支払手形、買掛金
受取手形、売掛金と同様、仕入債務である支払手形、買掛金も適正水準で回転しているかという見方をします。仕入債務回転期間という指標で評価しますが、これは、商品を仕入れてから買掛金や支払手形が決済されるまでの期間のことを指します。
仕入債務回転期間= 仕入債務/ 1ヵ月あたりの売上原価
仕入高仕入債務回転期間の目安は一般的に40日以下とされていますが、業種によっても異なります。期間が長いほど、支払い期日まで余裕が持てるため、資金繰りが楽になります。
【固定負債】長期借入金、長期未払金
銀行融資の一次評価で「安全性」を評価する指標の一つとして、固定長期適合率(%)が用いられます。
固定長期適合率(%)=固定資産/(固定負債+自己資本)×100
固定資産が安定した資金(借入金のうちすぐに返さなくてもよいものや、返済不要な自己資本)で賄われているかを評価します。小さい方がよく、100%以内が望ましい。80%以内が一定の目安です。
この指標から分かるのは、固定資産を取得する場合には、同じ借入金でも「短期借入金」より「長期借入金」の方が指標が良くなる(安定する)、ということです。
理想的な貸借対照表は▽△
左側(借方)は▽
短期の資金繰りは、流動資産>流動負債 となっていれば、1年以内で現金化が可能な資産(流動資産)で1年以内に返済が必要な負債(流動負債)を返済出来るため、問題ないという判断になります。左側(流動資産)がより大きく、右側(流動負債)がより小さい方が望ましいということを意味します。
流動比率=(流動資産/流動負債)×100
が大きい方が資金繰りが安定します。(200%超が望ましく、140%以上が一定の目安)
一方、左側(借方)における固定資産は、長期間使って売上や利益に貢献していくため、資金の回収面では流動資産に比べれば遅れる(資金繰り的にはその分厳しい)ということが言えます。
以上から、「左側(借方)は▽」が望ましい形です。
右側(貸方)は△
長期の資金繰りの観点からは、流動負債はすぐに返さなければならない一方、固定負債は返済まで期間的な余裕が持てること、自己資本はそもそも返さなくてもよいということから、安定した調達資金です。
以上から、「右側(貸方)は△」が望ましい形です。
まとめ
理想的な貸借対照表の形は▽△です。
右側(貸方)の「自己資本(純資産)」がマイナス(債務超過)でなくプラス(資産超過)になっているかが最も重要です。
そのうえで、左側(借方)の「現金・預金」が潤沢(キャッシュリッチ)であるかという点が、黒字倒産しないために必要な要素となります。無借金経営が必ずしも良いというわけではなく、借りられるときに融資を受けて、資金繰りに余裕を持つことが、経営の安定や安心感につながります。
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