換金価値で返済能力を評価
金融機関(ノンバンクを除く)の収益構造は、預金として預かったお金を融資先に貸出し、利息をとって儲けることで成り立っています。
つまり融資で貸出しに回しているお金は、預金として預かったものであり、確実に回収しなければなりません。
貸し出した元本は、基本的には分割もしくは一括で返済を受けますが、返済が不能になれば、融資先の財産から弁済を受ける(債権回収する)ことになります。
決算書の貸借対照表(Balance Sheet)は、企業の財政状況を表していますが、取得したときの価額のまま表示されているものや、換金価値のない科目の計上もあり、そのままでは金融機関のニーズを満たすことが出来ません。
貸借対照表を換金価値で再評価
そのため、金融機関は融資の一次評価(定量評価)において、貸借対照表をそのまま使うのではなく、資産・負債を時価評価して修正します。
これを「実質貸借対照表(実態貸借対照表)」と言います。
評価する時価は、換金価値や回収可能性、正味売却価額を表し、返済能力の有無をこれにより査定することになります。
勘定科目別の再評価の考え方
<現金>
粉飾をしても、お金のプロである金融機関にはすぐに分かります。
例えば売上の水増しを行って、実際には存在しない多額の現金を計上している場合、当該企業の現金残高の妥当性を勘案のうえ、「現金」勘定の金額が多すぎる場合は控除します。
<預金>
定期預金のうち融資の担保となっているものは、返済がなくなった時には当然に弁済に充てられるため、換金価値には含まれず、控除します。
<受取手形>
「受取手形管理表」を作成し、不渡手形や回収不能額を控除します。相手方の信用力に応じて、部分的に控除する場合もあります。回収出来ない額は換金価値がないからです。

<売掛金>
長期未回収売掛金回収予定表を作成し、回収不能額を控除します。勘定科目内訳明細表の「売掛金(未収入金)の内訳書」に複数年同じ値で計上されていれば、回収可能性がないと判断され、控除の対象とされます。
なお、売掛金を控除したら、貸倒引当金もその影響額の計上を無くします。

<貸付金>
回収可能性が不明確なものは契約書を確認のうえ、返済されていなければ全額控除します。
また、貸付先の財務状況を調査し、回収見込みがない金額を控除します。
<仮払金・前払費用>
資産を購入する際に仮払いしたお金はそのままとしますが、費用(消耗品等の購入費やサービスの対価等)として支払った仮払金や前払費用は、換金価値がないとして、全額控除します。
ただし払戻しが可能な場合は換金価値として残します。
<商品・製品・棚卸資産>
評価損(破損、陳腐化、不良在庫等)が決算書に未反映の場合は、換金価値がないものとして控除します。
現金の場合と同様、架空売上に伴う粉飾が疑われる(前期に比べて著しく残高が増えている等)場合も、実在が疑われる水増し相当分を控除します。
<建物>
鑑定書がある場合は鑑定額で、売却予定の場合は売却見込み額で評価します。(控除だけでなく、プラスになる場合もあります。)
簿価(取得原価)でしか評価出来ない場合でも、取得年度からの減価償却計算をしていない場合は、そこまでの減価償却分を控除します。
<土地>
本社や店舗、工場などの事業用土地は、帳簿価額(取得原価)のままとしますが、遊休土地(使っていない土地)は、不動産鑑定評価額もしくは路線価等で評価します。(控除だけでなく、プラスになる場合もあります。)
<無形固定資産>
借地権は借地権割合を考慮して評価します。電話加入権や特許権、商標権、ソフトウェアなどのうち、換金価値が認められないものは控除します。
<有価証券>
市場取引があるものは時価評価、ないものは、当該会社の純資産と発行済株式数から割り出した単価により評価します。
<敷金・保証金>
退去時に返還されないものは換金価値がないため控除します。
<繰延資産>
「繰延資産」は企業や個人事業主が支出した費用のうち、支出したサービスや品物の効果が1年以上に及ぶもの(長期間収益を生み出し続ける可能性があるもの)で、資産として処理したものです。
開業費や開発費などが該当しますが、換金価値がないため、全額控除します。
<借入金>
社長や経営者の家族からの借入金は、会社として長期にわたり返済を求められないものもあり、その場合は「負債の部」ではなく「純資産の部」に移し替えます。
以上のような調整(「修正」欄に増減を記載)を踏まえて、実質貸借対照表が出来上がります。

計算例
決算書では資産超過になっているのに、金融機関が上記のように貸借対照表を引き直すと、債務超過になってしまう場合があります。その状態で一次評価(定量評価)が行われるため、「決算書が良いのに、なぜか融資が通らなかった」ということもあり得ます。


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